HOME > 電磁気学 > 電磁気学の基本法則 > 電束と電束密度
本ページでは…
本ページでは、真電荷から電束が生じ、次のガウスの法則を満たす電束密度\(\boldsymbol D\)が電束から生じると定義する。
前ページまで…
前ページでは、真電荷は自由に移動したり外部に取り出したりできる電荷であるが、誘電分極で生じた分極電荷は自由に移動したり外部に取り出したりできない電荷であることを確認した。
内容
源場と力場
離れた2つの電荷の間に力が働くとき、電磁気学では直接的に力が働くと考えるのではなく、「①電荷が源場を作る」、「②源場から力場が生じる」、「③力場が電荷に力を与える」という3ステップで力が働くと考える。
本ページでは「①電荷が源場を作る」ステップについて考え、「③力場が電荷に力を与える」ステップについては次ページで、「②源場から力場が生じる」ステップについては次々ページで述べる。
電荷には真電荷と分極電荷があった(前ページを参照)が、分極電荷は真電荷がなければ発生しないため、場の源である源場は真電荷のみが作ると考えるのが妥当である(電磁気学の黎明期では原子構造が解明されていなく、分極電荷がどのようなものか分かっていなかったため、歴史的にも源場を作るものは真電荷のみと考えられていた)。
真電荷が作る源場を電束密度といい、ある閉曲面\(S\)内に存在する真電荷の総和\(Q_f\)が作る電束密度\(\boldsymbol D\)は、次のガウスの法則
を満たすように定義される(ガウスの定理の詳細は以下)。また、真電荷からは電束という仮想的な線が出て、電束が源場である電束密度を作ると考える。式(1)より、電束密度の単位は\(\text C\cdot\text m^{-2}\)である。
電束
電束は以下のルールを満たす。
ルール①
正の真電荷から電束が出て、負の真電荷へ電束が入る。
ルール②
電束は電荷のない所で途切れたり、別の電束と交わったりしない。
ルール③
電荷量\(Q_f\)の真電荷から出る電束の量は\(Q_f\)であり、電束の単位はクーロン\(\text C\)である。
※電束の量が正であれば真電荷から電束が出ることを表し、電束の量が負であれば真電荷へ電束が入ることを表す。
電束密度
電束密度は以下のルールを満たす。
ルール①
向きが電束の向きであり、大きさが単位面積当たりの電束である電束密度\(\boldsymbol D\)を定義できる。電束密度は源場であり、単位は\(\text C\cdot\text m^{-2}\)である。
ルール②
電束密度\(\boldsymbol D\)と面積素\(d\boldsymbol S\)との内積を閉曲面\(S\)上で足し合わせたものは、閉曲面\(S\)内に存在する真電荷の総和\(Q_f\)となる。
※これはガウスの法則であり、電束のルール②とルール③を数式で表したものである。
※面積素\(d\boldsymbol S\)はベクトルであり、大きさは微小面積\(dS\)の値に等しく、向きは微小面積\(dS\)の法線の向きに等しい。
※電束密度\(\boldsymbol D\)と面積素\(d\boldsymbol S\)の内積をとる理由は、面積素\(d\boldsymbol S\)の向きが電束密度\(\boldsymbol D\)の向きから傾けば傾くほど微小面積\(dS\)を貫く電束の量が減るからである。
※閉曲面をただ貫くような電束は閉曲面内の真電荷とは無関係である。
ルール③
電束は真電荷のみが作るため、真空状態でも誘電体が存在する状態でも電束密度\(\boldsymbol D\)は変わらない。
次ページから…
次ページでは、電荷から電気力線が生じ、次の式を満たす電場\(\boldsymbol E\)が電気力線から生じると定義する。