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本ページでは…
本ページでは、電荷から出る電束という量を導入し、真電荷から出る電束の密度である電束密度\(\boldsymbol D\)と分極電荷から出る電束の密度である分極\(\boldsymbol P\)を定義する。
ただし、\(Q_f\)は閉曲面内の真電荷の総和であり、\(Q_b\)は閉曲面内の分極電荷の総和である。
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前ページでは、真電荷は自由に移動したり外部に取り出したりできる電荷であるが、誘電分極で生じた分極電荷は自由に移動したり外部に取り出したりできない電荷であることを確認した。
内容
電束
電荷間に働く力の様子を視覚的に表現するために描かれた仮想的な線を電束という。
電束は以下のルールを満たす。
ルール①
正電荷から電束が出て、負電荷へ電束が入る。
ルール②
電荷量\(Q\)の電荷から出る電束の量は\(Q\)であり、電束の単位はクーロン\(\text C\)である。
※電束の量が正であれば電荷から電束が出ることを表し、電束の量が負であれば電荷へ電束が入ることを表す。
ルール③
電束は電荷のない所で途切れたり、別の電束と交わったりしない。
ルール④
向きが電束の向きであり、大きさが単位面積当たりの電束である「電束の密度\(\boldsymbol A\)」を定義できる。単位は\(\text C\cdot\text m^{-2}\)である。
ルール⑤
電荷に弱い力が働く場所では電束の密度\(\boldsymbol A\)は疎に、電荷に強い力が働く場所では密となる。つまり、電束の密度\(\boldsymbol A\)は電荷に作用する場の強さを表す。
ルール⑥
電束の密度\(\boldsymbol A\)と面積素\(d\boldsymbol S\)との内積を閉曲面\(S\)上で足し合わせたものは、閉曲面\(S\)内に存在する電荷の総和\(Q\)となる。
※これはガウスの法則であり、ルール②とルール③を数式で表したものである。
※面積素\(d\boldsymbol S\)はベクトルであり、大きさは微小面積\(dS\)の値に等しく、向きは微小面積\(dS\)の法線の向きに等しい。
※電束の密度\(\boldsymbol A\)と面積素\(d\boldsymbol S\)の内積をとる理由は、同じ微小面積\(dS\)でも面積素\(d\boldsymbol S\)の向きが電束の密度\(\boldsymbol A\)の向きから傾けば傾くほど貫く電束の量が減るからである。
※閉曲面をただ貫くような電束は閉曲面内の電荷量とは無関係である。
電束密度
真電荷から出た電束の密度を電束密度\(\boldsymbol D\)といい、次のガウスの法則を満たす。ただし、\(Q_f\)は閉曲面内の真電荷の総和である。
分極
誘電分極で生じた分極電荷から出た電束の密度を分極\(\boldsymbol P\)といい、次のガウスの法則を満たす。ただし、\(Q_b\)は閉曲面内の分極電荷の総和である。
電束密度\(\boldsymbol D\)の定義と異なり分極\(\boldsymbol P\)の定義でマイナスが付いているのは、電束密度\(\boldsymbol D\)は正電荷から負電荷に向かう電束と同じ向きのベクトルだが、分極\(\boldsymbol P\)は負電荷から正電荷に向かうベクトルで定義され、電束と真逆の向きのベクトルになるからである(理由は後のページを参照)。この定義により、分極\(\boldsymbol ap\)を扱う際にはベクトルの向きに注意が必要である。
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