ゲージ場の自由度

HOME電磁気学 マクスウェル方程式(ゲージ場) ゲージ場の自由度

前ページ】           【次ページ】


スポンサーリンク

本ページでは…

 本ページでは、マクスウェル方程式に従うゲージ場の自由度は2(縦波成分…0、横波成分…2)であり、プロカ方程式に従うゲージ場の自由度が3(縦波成分…1、横波成分…2)であることを確かめる。また、ゲージ不変性は縦波成分を取り除くことを確認する。

スポンサーリンク

前ページまで…

前ページでは、質量を持つゲージ場\(A^\nu\が従うプロカ方程式

\begin{align*}\partial_\mu (\partial^\mu A^\nu -\partial^\nu A^\mu )+\frac{m^2c^2}{\hbar^2}A^\nu=0\end{align*}

を導き、プロカ方程式はゲージ変換の下で不変でないことを確かめた。また、ゲージ不変性を式に課すとゲージ場\(A^\nu\)は質量\(m\)を持つことが許されないことを調べた。

スポンサーリンク

内容

ゲージ場の自由度

 ゲージ場\(A^\nu=(A^0,A^1,A^2,A^3)\)は4成分から構成されているため、見かけ上は4つの自由度が存在しているように思える。しかし、正確には自由度とは「初期条件として独立に指定できる関数の個数」であり、成分数とは無関係である。そして、実際にゲージ場の自由度は、通常、4より小さい値をとる。以下で、マクスウェル方程式とプロカ方程式におけるゲージ場\(A^\nu\)の自由度を求める。

マクスウェル方程式におけるゲージ場の自由度

 真空中のマクスウェル方程式

\begin{align*}\partial_\mu (\partial^\mu A^\nu -\partial^\nu A^\mu )=0\tag{1}\end{align*}

におけるゲージ場\(A^\nu\)の自由度は2であり、このことを次のように確認してみる。

 初めに、マクスウェル方程式を時間発展方程式の観点から眺めてみる。マクスウェル方程式の\(A^i(i=1,2,3)\)成分を調べると、

\begin{align*}\partial_\mu (\partial^\mu A^i -\partial^i A^\mu )&=0\\\rightarrow \partial_0 (\partial^0 A^i -\partial^i A^0 )+\partial_k (\partial^k A^i -\partial^i A^k)&=0\tag{2}\end{align*}

となって、式(2)の中に\(A^i\)の2階の時間微分\(\partial_0\partial^0\) が含まれている(ここで、\(k=1,2,3\)である)。したがって、式(2)は \(A^i\)の時間発展方程式であり、初期時刻における \(A^i\)とその時間微分を自由に決めることができる。この意味で \(A^i\) は独立な初期条件を持ち、力学的自由度として数えられる。一方、マクスウェル方程式の\(A^0\)成分を調べると、

\begin{align*}\partial_\mu (\partial^\mu A^0 -\partial^0 A^\mu )&=0\\\rightarrow \partial_0 (\partial^0 A^0 -\partial^0 A^0 )+\partial_k (\partial^k A^0 -\partial^0 A^k )&=0\\\rightarrow\partial_k (\partial^k A^0 -\partial^0 A^k )&=0\tag{3}\end{align*}

となって、式(3)の中に\(A^0\)の2階の時間微分\(\partial_0\partial^0\) が含まれていない(ここで、\(k=1,2,3\)である)。したがって、式(3)は \(A^0\)の時間発展方程式ではなく、他の成分や外部因子によって\(A^0\)を決定する拘束方程式となる。この意味で、\(A^0\) は独立な初期条件を持つことができず、力学的自由度として数えられない。以上より、時間発展方程式の観点から自由度が4から1つ減る。

 時間発展方程式とは、「ある時刻における状態」から「次の瞬間の状態」を決定する方程式である。そのためには、「今の値」とその「今の変化率(今の値の時間微分)」が与えられたときに、「次の変化率(今の値の 2 階の時間微分)」が計算できなければならない。「今の値」と「今の変化率」は初期条件として与えられる量であり、「次の変化率」は時間発展方程式そのものによって決定される必要がある。したがって、時間発展方程式には対象とする変数の 2 階の時間微分が含まれていなければならない。

 次に、ゲージ変換の観点から考えてみる。同一の物理状態は、ゲージ変換

\begin{align*}A^\nu\rightarrow A’^\nu=A^\nu+\partial^\nu\varLambda\tag{4}\end{align*}

によって互いに結び付けられた無限個のゲージ場\(A’^\nu\)によって表現される。したがって、一見するとゲージ場\(A^\nu\)を自由に選んでいるように見えても、実際にはゲージ変換を通して同一の物理状態を選んでいる可能性がある。ゲージ変換は任意関数\(\varLambda\)によって定義されるため、この関数\(\varLambda\)の選び方に対応して、なお 1 つの関数分の冗長な自由度が残っている。以上より、ゲージ変換の観点からも自由度を1つ減らす必要があり、この冗長性を取り除く操作がローレンツゲージ固定やクーロンゲージ固定などのゲージ固定に相当する。

 以上より、マクスウェル方程式におけるゲージ場\(A^\nu\)の自由度は

\begin{align*}4-1-1=2\end{align*}

であることが分かる。

 マクスウェル方程式において、ゲージ変換の冗長性を取り除くためにクーロンゲージ固定(前ページを参照)

\begin{align*}\boldsymbol\nabla\cdot\boldsymbol A=0\tag{5}\end{align*}

を行なうと、フーリエ変換

\begin{align*}\boldsymbol \nabla\rightarrow i\boldsymbol k\end{align*}

によって

\begin{align*}\boldsymbol k\cdot\tilde{\boldsymbol A}=0\tag{6}\end{align*}

と表すことができ、ゲージ場\(\tilde{\boldsymbol A}\)は運動量\(\boldsymbol k\)方向に垂直であることが分かる。よって、ゲージ場\(A^\nu\)には運動量\(\boldsymbol k\)方向に平行な縦波成分を持たず、横波成分しか持たない。マクスウェル方程式に従う質量を持たないゲージ場\(A^\nu\)としての光子も横波成分しか持たず、その自由度は進行方向に垂直な平面内の2成分に限られる。これは、光子が物理的に2つの独立な自由度のみを持つことと一致している。

 ゲージ場\(\boldsymbol A\)もヘルムホルツの定理(以前のページを参照)によって、縦波成分の「回転なしの場\(\boldsymbol A_\parallel\)」と横波成分の「発散なしの場\(\boldsymbol A_\perp\)」に分解

\begin{align*}\boldsymbol A=\boldsymbol A_\parallel+\boldsymbol A_\perp\end{align*}

することができる。ゲージ場\(\boldsymbol A\)をクーロンゲージ固定

begin{align*}\boldsymbol\nabla\cdot\boldsymbol A=0\end{align*}

するとゲージ場には「発散なしの場\(\boldsymbol A_\perp\)」しか含まれないことになる。つまり、マクスウェル方程式に従うゲージ場\(\boldsymbol A\)は横波成分しか持たないことがわかる。

プロカ方程式におけるゲージ場の自由度

 プロカ方程式

\begin{align*}\left(\partial_\mu \partial^\mu +\frac{m^2c^2}{\hbar^2}\right)A^\nu=0\tag{5}\end{align*}

におけるゲージ場\(A^\nu\)の自由度は3であり、このことを次のように確認してみる。

 初めに、プロカ方程式には次の制約(前ページを参照)

\begin{align*}\partial_\nu A^\nu=0\tag{6}\end{align*}

が存在するためゲージ場\(A^\nu\)の自由度は1つ減る。

 上記のプロカ方程式

\begin{align*}\left(\partial_\mu \partial^\mu +\frac{m^2c^2}{\hbar^2}\right)A^\nu=0\tag{5}\end{align*}

ではなく次のプロカ方程式

\begin{align*}\partial_\mu (\partial^\mu A^\nu -\partial^\nu A^\mu )+\frac{m^2c^2}{\hbar^2}A^\nu=0\end{align*}

から考えたとき、マクスウェル方程式と同様に\(A^i\)成分と\(A^0\)成分を調べると

\begin{align*}\partial_\mu (\partial^\mu A^i -\partial^i A^\mu )+\frac{m^2c^2}{\hbar^2}A^\nu&=0\\\rightarrow \partial_0 (\partial^0 A^i -\partial^i A^0 )+\partial_k (\partial^k A^i -\partial^i A^k)+\frac{m^2c^2}{\hbar^2}A^\nu&=0\end{align*}

\begin{align*}\partial_\mu (\partial^\mu A^0 -\partial^0 A^\mu )+\frac{m^2c^2}{\hbar^2}A^\nu&=0\\\rightarrow \partial_0 (\partial^0 A^0 -\partial^0 A^0 )+\partial_k (\partial^k A^0 -\partial^0 A^k )+\frac{m^2c^2}{\hbar^2}A^\nu&=0\\\rightarrow\partial_k (\partial^k A^0 -\partial^0 A^k )+\frac{m^2c^2}{\hbar^2}A^\nu&=0\end{align*}

となって、\(A^i\)に関しては時間発展方程式だが、\(A^0\)に関しては拘束方程式のため、\(A^0\)に関する自由度が1つ減ることがわかる。

 マクスウェル方程式と異なってプロカ方程式はゲージ不変でないため、ゲージ変換に伴う自由度の減少はなく、プロカ方程式におけるゲージ場\(A^\nu\)の自由度は

\begin{align*}4-1=3\end{align*}

であることが分かる。プロカ方程式に従う質量を持つゲージ場\(A^\nu\)は、マクスウェル方程式のようにゲージ変換することができないため、マクスウェル方程式のときと異なり、横波の2成分と縦波の1成分を持つ。これは、物理的に3つの独立な自由度のみを持つことと一致している。

ゲージ場の自由度のまとめ

 マクスウェル方程式のゲージ場\(A^\nu\)の自由度は2であり、2つの横波成分しか持たなかった。一方、プロカ方程式のゲージ場\(A^\nu\)の自由度は3であり、2つの横波成分と1つの縦波成分を持っていた。プロカ方程式におけるゲージ場\(A^\nu\)の自由度がマクスウェル方程式におけるゲージ場\(A^\nu\)の自由度より1つ多いのはプロカ方程式がゲージ不変性を持たなかったからであり、「ゲージ不変性は縦波成分を取り除く」ことが分かる。

スポンサーリンク

次ページから…


前ページ】          【次ページ】

HOME電磁気学 マクスウェル方程式(ゲージ場) ゲージ場の自由度

未分類
スポンサーリンク
Taido-Kick