磁気力線と磁場(E-H対応)

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本ページでは…

 本ページでは、磁荷から磁気力線が生じ、次の式を満たす磁場\(\boldsymbol H\)が磁気力線から生じると定義する。

\begin{align*}\boldsymbol F=q_{\text m}\boldsymbol H\end{align*}

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前ページでは、真磁荷から磁束が生じ、次のガウスの法則を満たす磁束密度\(\boldsymbol B\)が磁束から生じると定義した。

\begin{align*}\int_S\boldsymbol B\cdot d\boldsymbol S=0\end{align*}

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内容

源場と力場

 E-H対応(以前のページを参照)において、離れた2つの磁荷の間に力が働くとき、電磁気学では直接的に力が働くと考えるのではなく、「①磁荷が源場を作る」、「②源場から力場が生じる」、「③力場が磁荷に力を与える」という3ステップで力が働くと考える。

前ページでは「①磁荷が源場を作る」ステップについて「真磁荷が源場である磁束密度を作る」ことを見たが、本ページでは「③力場が磁荷に力を与える」ステップについて考え、「②源場から力場が生じる」ステップについては次ページで述べる。

 磁荷に力を与える力場を磁場\(\boldsymbol H\)といい、磁荷量\(q_{\text m}\)の磁荷が受ける力\(\boldsymbol F\)を用いて次式

\begin{align*}\boldsymbol F=q_{\text m}\boldsymbol H\tag{1}\end{align*}

を満たすように定義する。また、真磁荷と分極磁荷からは磁気力線という仮想的な線が出て、力場である磁場を作ると考える。式(1)より、磁場の単位は\(\text N\cdot\text {Wb}^{-1}\)である。

 最も注意すべきことは、磁束密度\(\boldsymbol B\)は真磁荷のみを考えるが、磁場\(\boldsymbol H\)は真磁荷と分極磁荷の両方を考えることである。磁束密度\(\boldsymbol B\)と磁場\(\boldsymbol H\)で対象とする磁荷が異なっているため、一見、磁束密度\(\boldsymbol B\)と磁場\(\boldsymbol H\)は無関係と思うかもしれないが、次ページでは透磁率\(\mu\)でこの2つの物理量が結びつくことを見る。

磁気力線

 磁束のルールと似た以下のルールを磁気力線は満たす。

ルール①

正の磁荷(またはN極)から磁気力線が出て、負の磁荷(またはS極)へ磁気力線が入る。

ルール②

磁気力線は磁荷のない所で途切れたり、別の磁気力線と交わったりしない。

ルール③

磁荷量\(Q_{\text{mf}}\)の真磁荷から出る磁気力線の量は\(Q_{\text{mf}}/\mu_0\)である。

 ※このことは、磁荷量\(Q_{\text{mf}}\)の真磁荷から出る磁束の量が\(Q_{\text{mf}}\)であり、真空状態で磁気力線および磁束それぞれの密度である磁場\(\boldsymbol H_0\)と磁束密度\(\boldsymbol B\)とが次の関係

\begin{align*}\boldsymbol H_0=\frac{1}{\mu_0}\boldsymbol B\tag{2}\end{align*}

を満たすこと(次ページを参照)から分かる。

 ※磁気力線の量が正であれば磁荷から磁気力線が出ることを表し、磁気力線の量が負であれば磁荷へ磁気力線が入ることを表す。

ルール④

真磁荷は双極子として存在するため、真磁荷から出る磁気力線はループする。

ルール⑤

磁荷量\(Q_{\text{mb}}\)の分極磁荷から出る磁気力線の量は\(Q_{\text{mb}}/\mu_0\)である。

 ※これはルール③を分極磁荷に拡張したものである。

ルール⑥

分極磁荷は双極子として存在せず、磁性体表面に正磁荷のみまたは負磁荷のみとして存在するため、分極磁荷から出る磁気力線はループしない。

ルール⑦

磁気力線の量に透磁率\(\mu\)を掛けると磁束の量となる。

 ※このことは、磁気力線および磁束それぞれの密度である磁場\(\boldsymbol H\)と磁束密度\(\boldsymbol B\)とが次の関係

\begin{align*}\boldsymbol H=\frac{1}{\mu}\boldsymbol B\tag{3}\end{align*}

を満たすこと(次ページを参照)から分かる。

ルール⑧

磁気力線の単位は\(\text N\text m^2\cdot\text {Wb}^{-1}\)である。

 ※磁場のルール①および⑤から導出できる。

磁場

 磁束密度のルールと似た以下のルールを磁場は満たす。

ルール①

向きが磁気力線の向きであり、大きさが単位面積当たりの磁気力線である「磁場\(\boldsymbol H\)」を定義できる。

ルール②

磁荷に弱い力が働く場所では磁気力線の密度は疎に、磁荷に強い力が働く場所では密となる。つまり、磁気力線の密度である磁場\(\boldsymbol H\)は磁荷に作用する場の強さを表す。

ルール③

磁荷量\(q_\text{m}\)の磁荷が受ける力\(\boldsymbol F\)を用いて、磁場\(\boldsymbol H\)は次の式を満たすように定義される。

\begin{align*}\boldsymbol F=q_\text{m}\boldsymbol H\tag{1}\end{align*}

ルール④

真磁荷が作る磁場\(\boldsymbol H_0\)・分極磁荷が作る磁場\(\boldsymbol H_p\)・全磁荷が作る磁場\(\boldsymbol H\)と面積素\(d\boldsymbol S\)との内積を閉曲面\(S\)上で足し合わせたものは、ゼロ・閉曲面\(S\)内に存在する分極磁荷の総和\(Q_{\text{mb}}\)を透磁率\(\mu_0\)で割った値・全磁荷の総和(真磁化は双極子として存在するため、分極磁荷の総和に等しい)\(Q_m\)を透磁率\(\mu_0\)で割った値となる。

\begin{align*}\int_S\boldsymbol H_0\cdot d\boldsymbol S&=0\tag{4}\\\int_S\boldsymbol H_\text{p}\cdot d\boldsymbol S&=\frac{Q_{\text{mb}}}{\mu_0}\tag{5}\\\int_S\boldsymbol H\cdot d\boldsymbol S&=\frac{Q_{\text{mb}}}{\mu_0}\tag{6}\end{align*}

 ※これはガウスの法則であり、磁気力線のルール②とルール④とルール⑤を数式で表したものである。

 ※面積素\(d\boldsymbol S\)はベクトルであり、大きさは微小面積\(dS\)の値に等しく、向きは微小面積\(dS\)の法線の向きに等しい。

 ※磁場\(\boldsymbol H\)と面積素\(d\boldsymbol S\)の内積をとる理由は、面積素\(d\boldsymbol S\)の向きが磁場\(\boldsymbol H\)の向きから傾けば傾くほど微小面積\(dS\)を貫く磁気力線の量が減るからである。

 ※閉曲面をただ貫くような磁気力線は閉曲面内の磁荷とは無関係である。

ルール⑤

磁場の単位は\(\text N\cdot\text {Wb}^{-1}\)である。

 ※磁場のルール③より導出できる。

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次ページから…

次ページでは、源場である電束密度\(\boldsymbol D\)と力場である電場\(\boldsymbol E\)が誘電率\(\epsilon\)を用いて次の関係

\begin{align*}\boldsymbol E=\frac{1}{\epsilon}\boldsymbol D\end{align*}

があり、特に真空状態では真空の誘電率\(\epsilon_0\)を用いて

\begin{align*}\boldsymbol E_0=\frac{1}{\epsilon_0}\boldsymbol D\end{align*}

となることを見る。


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