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アシロイン縮合とは
アシロイン縮合とは、2分子のエステルをナトリウムなどのアルカリ金属で処理してカルボニル基間に炭素-炭素結合が形成されたヒドロキシケトンを得るホモカップリング反応であり、1905年にL・ブーボーによって発見された(i)(ii)。
2R-COOR+ 2Na+2H+R-COH-CO-R + 2Na+
「アシロイン縮合の反応式」 「acyloin-condensation」 ←
反応名の由来は、本反応によって生成するa-ヒドロキシケトンの慣用名のアシロインである。
アルデヒドやケトンは反応性が高いため、マグネシウムなどでもホモカップリング (ピナコールカップリング)を起こすが、エステルは反応性が低いため金属ナトリウムを用いなければホモカップリングは進行しない。
反応機構
「アシロイン縮合の反応機構」 「acyloin-condensation-mechanism」
①1 電子移動(SET)
初めに、金属ナトリウムによってカルボニル基がラジカル開裂し、ラジカルが生成する。
②ホモカップリング
2分子のラジカルのホモカップリング反応が進行する。
③アルコキシ基の脱離
アルコキシ基OR’が脱離して1,2-ジケトンが生成する。
④1 電子移動(SET)
出発物のエステルより1,2-ジケトンの方が\(\pi^*\)軌道のエネルギー準位が低いため、1,2-ジケトンは還元されやすく、金属ナトリウムによってカルボニル基が還元され、エンジオラートとなる。
⑤中和反応
酸で中和することによって、エンジオールが生成する。
⑥互変異性化
エンジオールがアシロインに互変異性化する。
副反応
エンジオラートは不安定であるため分解反応が起きやすく、また、エンジオラートは求核性が高いため系内に存在する高い求電子性を持つ1,2-ジケトンと反応しやすい。また、反応によって生じた塩基 (アルコキシドなど)によってクライゼン縮合やディークマン縮合、脱離反応などが起きやすい。
適用範囲
エステル R-COOR’
アルカリ金属は多くの官能基と反応してしまうため、この反応で使用できる基質は限られる。
アルカリ金属
ほとんどの場合、金属ナトリウムかナトリウムカリウム合金が用いられる。
溶媒
プロトン性溶媒を用いるとブーボー・ブラン還元が起きるため、高沸点の非プロトン性溶媒としてベンゼン、トルエン、キシレンやナトリウムを溶媒和するエーテル系溶媒が用いられる。
反応条件
アルカリ金属が失活しないように、脱気・脱水条件で反応を行なう。通常は、ナトリウムの融点 98℃以上にして、ナトリウムのディスバージョン中で反応を行なう。
応用例
アシロイン環化反応
ジエステルを用いて反応を行なうと分子内でアシロイン縮合が起きて環状分子が得られる。アシロイン縮合では 3 員環の形成は難しいが、5および6員環は高収率(収率80~85%)で形成され、4、7、10、および 11 員環は中程度の収率で形成される(収率50~60%)。また、8員環および9 員環は低収率から中程度の収率 (30~40% 取率)で形成され、12員環以上は良好な収率 (>70%)で形成される(ii)。
「アシロイン環化反応」「acyloin-cyclization]
ルールマン法
エンジオラートは不安定であるため、クロロトリメチルシランを反応系に共存させてエンジオラートおよびアルコキシドを捕捉することによって、分解反応を抑えて収率を大幅に上げることができる(iii)。得られたシリルエーテルを酸で加水分解すればアシロインが得られる。
実験手順
N2 atmosphere-Na+solvent reflux-R-COOR’ +TMSCI workup filtered→purify 「アシロイン縮合の実験手順(i)」 「acyloin-condensation-procedure」 →
テフロンはナトリウムのディスバージョンに侵されるため使用してはならない。
反応例
コハク酸ジエチルを反応させると、1,2-ビス(トリメチルシリルオキシ)シクロブテンを経由して 2-ヒドロキシシクロ ブタノンが得られる(ii)。
「アシロイン縮合による2-ヒドロキシシクロブタノンの合成」 「acyloin-condensation-cyclobutanone」
関連反応
・ピナコールカップリング
・ブーボー・ブラン還元
参考文献
(1) Bouveault, L.; Locquin, R. Compt. Rend. 1905, 140, 1593-1595.
(ii) Bloomfield, J. J.; Nelke, J. M. Org. Synth. 1977, 57, 1
(iii) Rühlmann K. Synthesis 1971 5, 236-253.
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