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本ページでは…
本ページでは、静磁場におけるクーロンの法則が
であることを確認し、磁気単極子の磁束密度\(\boldsymbol B\)と磁場\(\boldsymbol H\)の定義
から導かれることをみる。
前ページまで…
前ページでは、E-H対応において、静電場と静磁場の類似点も相違点について述べた。
内容
クーロンの法則(静磁場)
電荷と電荷の間にクーロンの法則が成り立っていた(以前のページを参照)ように、磁荷と磁荷の間にもクーロンの法則が成り立つ。詳しくは、真空中において\(r\)の距離に磁荷量\(q_{\text m}\)の磁荷と磁荷量\(Q_{\text m}\)の磁荷を置いたときに働く力が磁荷量\(q_{\text m}\)と\(Q_{\text m}\)の積に比例して距離\(r\)の2乗に反比例する。この法則を真空の透磁率\(\mu_0\)を用いて表すと
となり、これもクーロンの法則である。ここで、磁荷量\(q_{\text m}\)と\(Q_{\text m}\)の積が正の値なら力は斥力となり、負の値なら力は引力となる。
式(1)はベクトルで表すことができる。磁荷量\(q_{\text m}\)の磁荷が\(\boldsymbol r\)の位置にあり、磁荷量\(Q_{\text m}\)の磁荷が\(\boldsymbol r_0\)の位置にあるとき、磁荷間の距離\(r\)は\(\vert \boldsymbol r-\boldsymbol r_0\vert\)となる。また、力の向きは2つの磁荷を結んだ直線上\(\boldsymbol r-\boldsymbol r_0\)であるため、方向単位ベクトルは\(\frac{\boldsymbol r-\boldsymbol r_0}{\vert \boldsymbol r-\boldsymbol r_0\vert}\)となる。よって、磁荷量\(q_{\text m}\)の磁荷が受ける力は
となる。
磁束密度と磁場からの導出
磁気単極子がつくる磁束密度\(\boldsymbol B\)は
で定義され(以前のページを参照)、磁場\(\boldsymbol H\)は次式
で定義されていた(以前のページを参照)が、このように定義した理由は実験で確かめられていたクーロンの法則が導かれるようにするためである。
磁荷量\(q_{\text m}\)の磁荷が\(\boldsymbol r\)の位置にあり、磁荷量\(Q_{\text m}\)の磁荷(真磁荷であり、式(3)の\(Q_{\text {mf}}\)に相当する)が\(\boldsymbol r_0\)の位置にあるとき、磁荷量\(q_{\text m}\)の磁荷が受ける力を磁束密度\(\boldsymbol B\)の定義と磁場\(\boldsymbol H\)の定義から求めてみる。
源場と力場の考え(以前のページを参照)を用いると、「①\(\boldsymbol r_0\)の位置にある磁荷量\(Q_{\text m}\)の磁荷(真磁荷)が源場である磁束密度\(\boldsymbol B\)を作る」、「②源場から力場が生じる」、「③力場である磁場\(\boldsymbol H\)が\(\boldsymbol r\)の位置にある磁荷量\(q_{\text m}\)の磁荷に力を与える」という3ステップで力が働く。
ステップ①において、磁束密度\(\boldsymbol B\)の定義(以前のページを参照)から
が成り立つ。ここで、閉曲面\(S\)として、磁荷量\(Q_{\text m}\)の磁荷の位置\(\boldsymbol r_0\)が中心で磁荷量\(q_{\text m}\)の磁荷の位置\(\boldsymbol r\)を通る球表面を考える。磁荷から磁束は放射線状に出るため、閉曲面上の位置\(\boldsymbol r’\)において磁束密度\(\boldsymbol B\)の向きと面積素\(d\boldsymbol S\)の向き(微小面積\(dS\)の法線の向き)は同じ\(\frac{\boldsymbol r’-\boldsymbol r_0}{\vert \boldsymbol r’-\boldsymbol r_0\vert}\)であり、
が成り立ち、位置\(\boldsymbol r\)での磁束密度の大きさ\(B\)は
3行目への変形では、閉曲面\(S\)の総面積
を用いた。
となる。よって、磁荷量\(q_{\text m}\)の磁荷の位置\(\boldsymbol r\)における磁束密度\(\boldsymbol B\)は、式(6)に向き\(\frac{\boldsymbol r-\boldsymbol r_0}{\vert \boldsymbol r-\boldsymbol r_0\vert}\)を掛けて
と求められる。
ステップ②において、真空中での磁束密度\(\boldsymbol B\)と磁場\(\boldsymbol H\)の関係(以前のページを参照)は
であるため、磁荷量\(q_{\text m}\)の磁荷の位置における磁場\(\boldsymbol H\)は
と求められる。
ステップ③において、磁荷に働く力\(\boldsymbol F\)と磁場\(\boldsymbol H\)の関係(以前のページを参照)は
であるため、磁荷量\(q\)の磁荷に働く力\(\boldsymbol F\)は
となって、クーロンの法則が導かれる。
磁性体におけるクーロンの法則
前節のステップ②において、磁性体が存在するときの磁束密度\(\boldsymbol B\)と磁場\(\boldsymbol H\)の関係は
であるため、磁性体が存在するときのクーロンの法則は
となる。
次ページから…
次ページでは、磁気双極子モーメント\(\boldsymbol p_{\text m}\)が
であることをみて、磁気双極子のエネルギー\(U\)が
となり、磁気双極子がつくる磁場\(\boldsymbol H\)が
となることを求める。