直交化

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 本ページでは、異なる固有値\(f_i\),\(f_j\)に対応する固有関数\(\psi_i\),\(\psi_j\)は直交

\begin{align*}\int dv\ \psi_i\psi_j=0\end{align*}

することを確認する。また、縮重している固有関数は一般的には直交しないが、シュミットの直交化法により、縮重している固有関数を含むすべての固有関数を直交化できることをみる。

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前ページでは、古典物理量の演算子\(\hat F\)がエルミート演算子の定義

\begin{align*}\int dv\ (\hat F\psi)^*\phi=\int dv\ \psi^*(\hat F\phi)\tag{1}\end{align*}

を満たすことをみて、エルミート演算子の固有値が実数になることを確かめる。

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内容

直交とは

 エルミート演算子\(\hat F\)において、異なる固有値\(f_i\),\(f_j\)に対応する固有関数\(\psi_i\),\(\psi_j\)は

\begin{align*}\int dv\ \psi_i\psi_j=0\tag{2}\end{align*}

の関係を満たし、この関係を直交しているという。

 異なる固有値に対応する固有関数が直交していることは、2つの固有値方程式

\begin{align*}\hat F\psi_i=f_i\psi_i\tag{3}\\\hat F\psi_j=f_j\psi_j\tag{4}\end{align*}

から確かめることができる。まず、式(3)の複素共役をとると

\begin{align*}(\hat F\psi_i)^*=f_i^*\psi_i^*\tag{5}\end{align*}

となり、式(5)の両辺の右から\(\psi\)を掛けて空間積分すると

\begin{align*}\int dv\ (\hat F \psi_i)^*\psi_j&=\int dv\ f_i^*\psi_i^*\psi_j\\&=f_i\int dv\ \psi_i^*\psi_j\tag{6}\end{align*}

が得られる。一方、式(4)の両辺の左から\(\psi^*\)を掛けて空間積分すると

\begin{align*}\int dv\ \psi_i^*(\hat F \psi_j)&=\int dv\ \psi_i^*f_j\psi_j\\&=f_j\int dv\ \psi_i^*\psi_j\tag{7}\end{align*}

が得られる。古典物理量の演算子はエルミート演算子であるため、式(6)と式(7)は等しく

\begin{align*}f_i\int dv\ \psi_i^*\psi_j&=f_j\int dv\ \psi_i^*\psi_j\\(f_i-f_j)\int dv\ \psi_i^*\psi_j&=0\tag{8}\end{align*}

となり、固有値\(f_i\)と\(f_j\)は異なるため両辺を\(f_i-f_j\)で割ることができ、直交の定義

\begin{align*}\int dv\ \psi_i^*\psi_j&=0\tag{9}\end{align*}

が得られる。

直交化

 異なる固有値\(f_i\),\(f_j\)に対応する固有関数は直交するが、同じ固有値\(f_i\)に幾つかの固有関数が対応している縮重状態のとき、それらの固有関数は必ずしも直交するとは限らない。

 しかし、縮合状態の固有関数の一次結合も固有関数になるため、それらの固有関数の一次結合を適切にとることで、それぞれの固有関数を直交させることができる。この操作を直交化という。

シュミットの直交化法

 同じ固有値\(f_i\)に\(n\)個の固有関数\(\psi_{i1}\),\(\cdots\),\(\psi_{in}\)が縮重している状態を考える。縮重している固有関数の一次結合をとることで無数に固有関数を作ることができるが、その中で一次独立な固有関数は\(n\)個しかない。一次結合で作られる\(n\)個の独立な関数を\(\psi_{ik}’\)とすると

\begin{align*}\psi_{ik}’=\sum_{j=1}^nc_{jk}\psi_{ij}\tag{10}\end{align*}

の形となる。ここで、係数\(c_{jk}\)を適当に選ぶことによって、一次結合で作った\(n\)個の独立な関数を直交

\begin{align*}\int dv\ \psi_{ik}’\psi_{il}’=\delta_{kl}\tag{11}\end{align*}

させることができる。この操作が直交化である。

 縮合している固有関数系\(\{\psi_{ik}\}\)の一次結合をとることで、それぞれが直交している固有関数系\(\{\psi_{ik}’\}\)を導く、直交化の手順を見ていく。初めに、縮合している固有関数\(\psi_{ik}\)のうち、ひとつの固有関数\(\psi_{1k}\)を、それぞれが直交している固有関数系\(\{\psi_{ik}’\}\)の1つ目の固有関数\(\psi_{i1}’\)として選択する。

\begin{align*}\psi_{i1}’=\psi_{i1}\tag{12}\end{align*}

 次に、\(\psi_{i2}\)がすでに\(\psi_{i1}\)に直交していれば、\(\psi_{i2}\)を固有関数系\(\{\psi_{ik}’\}\)の2つ目の固有関数\(\psi_{i2}’\)として採用する。

\begin{align*}\psi_{i2}’=\psi_{i2}\tag{13}\end{align*}

一方、直交していなければ固有関数\(\psi_{i2}’\)を、

\begin{align*}\psi_{i2}’=c_{12}\psi_{i1}+c_{22}\psi_{i2}\tag{13}\end{align*}

と置いて、規格化条件

\begin{align*}\int dv\ \psi_{i2}’^*\psi_{i2}’=1\end{align*}

と、直交化条件

\begin{align*}\int dv\ \psi_{i1}’^*\psi_{i2}’=0\end{align*}

の条件から係数\(c_{12}\),\(c_{22}\)を決めていく。

 そして、固有関数系\(\{\psi_{ik}’\}\)の3つ目の固有関数\(\psi_{i3}’\)

\begin{align*}\psi_{i3}’=c_{13}\psi_{i1}+c_{23}\psi_{i2}+c_{33}\psi_{i3}\end{align*}

の係数は、\(\psi_{i3}’\)が規格化され、\(\psi_{i1}’\)と\(\psi_{i2}’\)と直交するという条件から定める。

 同様に\(\psi_{in}’\)までの係数を定めることによって固有関数系\(\psi_{1n}’,\cdots\psi_{in}’\)は規格直交系となる。

 このような直交化させる方法をシュミットの直交化法という。

規格直交系

 以上より、古典物理量の演算子\(\hat F\)の固有関数はすべて直交させることができることが分かった。縮重がある場合も通し番号を付けて固有関数を\(\psi_i\)で表すことによって、

\begin{align*}\int dv\ \psi_i^*\psi_j=\delta_{ij}\end{align*}

となり、固有関数を規格化と直交化させることができる。このように規格化と直交化されている固有関数系は、規格直交系を成しているという。

次ページから⋯

次ページでは、完全性とはどのような関数でもある古典物理量の演算子\(\hat F\)に対応する固有関数系\(\{\psi_i\}\)の一次結合で表すことができる性質であり、固有関数系が完全性をもつことを証明する。


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