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本ページでは、ネーターの定理を用いることにより空間回転不変性から全角運動量保存則が導かれることを確認する。
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前ページでは、ネーターの定理を用いることにより時間並進不変性から全エネルギー保存則が導かれることを確認する。
内容
空間回転不変性
ここでは、3次元空間内の\(N\)個の粒子の運動を考え、それぞれの粒子の座標を\(\boldsymbol{q_a}(a=1,2,\cdots,N)\)としておく。
空間回転不変性は「空間座標を回転させても物理法則は変わらない」ことを意味する。
このことをグラフで考えてみよう。横軸を時間\(t\)、縦軸を一般化座標\(\boldsymbol{q_a}\)として運動方程式を描くと、この運動方程式の各点はラグランジアン\(L\)の値を持ち、その値は時間\(t\)と一般化座標\(\boldsymbol{q_a}\)、そして一般化速度\(\dot{\boldsymbol{q_a}}\)によって決まる。そして、\(\boldsymbol{\epsilon}\)を回転軸方向として一般化座標\(\boldsymbol{q}_a\)を無限小定数\(\vert\boldsymbol\epsilon\vert\)だけ(無限小)回転させる。このとき、回転方向は回転軸方向\(\boldsymbol{\epsilon}\)にも座標ベクトル\(\boldsymbol{q_a}\)にも垂直となるため、外積を用いると、一般化座標\(\boldsymbol q_a(t)\)の無限小変換は
\begin{align}\boldsymbol{x}_a(t)&\rightarrow\boldsymbol q’_a(t)=\boldsymbol q_a(t)+\boldsymbol\epsilon×\boldsymbol q_a(t)=\boldsymbol q_a(t)+\delta_L\boldsymbol q_a\tag{1}\end{align}
となり、空間回転不変性はこの時に作用積分\(S\)が変わらないことに対応する。このとき、一般化座標\(\boldsymbol q_a\)の無限小変化量は
\begin{align*}\delta_L\boldsymbol q_a&=\boldsymbol\epsilon×\boldsymbol q_a(t)\tag{2}\end{align*}
となる。
今回、ポテンシャルエネルギー\(V\)は回転軸周りに対称性を持つとする(もし、そうでなければ空間回転不変性は成り立たない)。このとき、ラグランジアン\(L\)
\begin{align*}L=\sum_{a=1}^N\frac{\dot {\boldsymbol q}_i}{2m}-V\tag{3}\end{align*}
は空間回転において変化せず(\(\delta[LL\))、次の関係(前ページを参照)
\begin{align*}\delta_LL=\frac{\text d}{\text dt}K\tag{4}\end{align*}
を満たす関数\(K\)は
\begin{align*}K=0\tag{5}\end{align*}
となる(厳密には、関数\(K\)はゼロ以外の定数でもよいが、どのような定数を選んでも保存則は導かれるため計算を簡単にするためゼロを選んでいる)。
空間回転不変性と全角運動量保存則
それでは、空間回転不変性が全角運動量保存則と関係していることをネーターの定理から導く。
式(2)と式(5)をネーター電荷の式(以前のページを参照)
\begin{align*}N=\sum_{a=1}^N\delta_L \boldsymbol q_a\cdot\frac{\partial L}{\partial \dot{\boldsymbol q}_a}-K\tag{6}\end{align*}
に代入すると
\begin{align}N&=\boldsymbol\epsilon\cdot\boldsymbol L\tag{7}\end{align}
\begin{align}N&=\sum_{a=1}^N\delta_L \boldsymbol q_a\cdot\frac{\partial L}{\partial \dot{\boldsymbol q}_a}+\delta_L t\left\{L-\left(\sum_{a=1}^N\dot {\boldsymbol q}_a\cdot\frac{\partial L}{\partial \dot {\boldsymbol q}_a}\right)\right\}\\&=\sum_{a=1}^N(\boldsymbol\epsilon×\boldsymbol q_a)\cdot\boldsymbol p_a\\&=\boldsymbol\epsilon\cdot\left(\sum_{a=1}^N\boldsymbol q_a×\boldsymbol p_a\right)\\&=\boldsymbol\epsilon\cdot\sum_{a=1}^N\boldsymbol l_a\\&=\boldsymbol\epsilon\cdot\boldsymbol L\end{align}
2行目への変形では一般化運動量の定義式
\begin{align*}\boldsymbol p_a&=\frac{\partial L}{\partial \dot{\boldsymbol q_a}}\end{align*}
を用い、3行目への変形ではベクトルの公式
\begin{align*}\boldsymbol a\cdot\left(\boldsymbol b×\boldsymbol c\right)=\boldsymbol b\cdot\left(\boldsymbol c×\boldsymbol a\right)\end{align*}
を用いた。
となる。式(7)より、ネーター電荷\(N\)として全角運動量\(\boldsymbol L\)が保存することがわかる。したがって、全角運動量保存則の背景には空間回転不変性があり、ラグランジアン\(L\)の具体的な表式は必要なく、必要なことは無限小変換で作用積分が不変であることだけである。
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次ページでは、ある保存量\(N\)(ネーター電荷)が存在するとき、物理量\(A\)が次の無限小変化量
\begin{align*}\delta_NA(q,p)&=-\{N,A(q,p)\}\end{align*}
だけ変化する無限小変換で不変性が存在することを表すハミルトン力学におけるネーターの定理を導く。また、量子力学において、無限小変化量は
\begin{align*}\delta_NA(q,p)&=\frac{i}{\hbar}[\hat N,\hat A(\hat q,\hat p)]\end{align*}
と表されることも確認する。
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