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超ハミルトニアンのグラスマン数表示

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本ページでは…

 本ページでは、グラスマン数を用いると正準量子化前の超ハミルトニアンが

\begin{align*}H&=\frac{1}{2m}p^2+\frac{1}{2m}(W'(q))^2+\frac{1}{2m}W^{”}(q)(\eta\eta^\dagger-\eta^\dagger\eta)\end{align*}

となり、グラスマン数の正準共役運動量は

\begin{align*}\pi_{\scriptsize\eta}=i\eta^\dagger\end{align*}

となることを見る。

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前ページでは…

 前ページでは、フェルミ粒子数演算子\(\hat F\)の固有値は\(0\)と\(1\)のみで、対角化された行列表示では

\begin{align*}\hat{\boldsymbol F}=\left(\begin{array}{c}0&0\\0&1\end{array}\right)\tag{1}\end{align*}

となることを見た。また、対角化されたフェルミ粒子数演算子を導く行列表示のグラスマン数\(\boldsymbol\eta\)は

\begin{align*}\boldsymbol\eta&=\sqrt{\hbar}\left(\begin{array}{c}0&0\\e^{+i\alpha}&0\end{array}\right)\tag{2}\\\boldsymbol\eta^\dagger&=\sqrt{\hbar}\left(\begin{array}{c}0&e^{-i\alpha}\\0&0\end{array}\right)\tag{3}\end{align*}

となり、これをユニタリ行列\(\boldsymbol U\)で挟んだものもグラスマン数になることを見た。

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内容

 超ハミルトニアン\(\hat{\boldsymbol H}\)は

\begin{align*}\hat{\boldsymbol H}&=\left(\begin{array}{c}\hat H_{\scriptsize +}&0\\0&\hat H_{\scriptsize -}\end{array}\right)\tag{4}\end{align*}

の形であり、超対称パートナーであるハミルトニアン\(\hat H_{\scriptsize +}\),\(\hat H_{\scriptsize -}\)は

\begin{align*}\hat H_{\scriptsize +}&=-\frac{\hbar^2}{2m}\frac{d^2}{dx^2}+\frac{1}{2m}(W'(x))^2-\frac{\hbar}{2m}W^{”}(x)\tag{5}\\\hat H_{\scriptsize -}&=-\frac{\hbar^2}{2m}\frac{d^2}{dx^2}+\frac{1}{2m}(W'(x))^2+\frac{\hbar}{2m}W^{”}(x)\tag{6}\end{align*}

であるから、超ハミルトニアン\(\hat{\boldsymbol H}\)を詳細に表すと

\begin{align*}\hat {\boldsymbol H }&=-\frac{\hbar^2}{2m}\frac{d^2}{dx^2}\boldsymbol I+\frac{1}{2m}(W'(x))^2\boldsymbol I+\frac{\hbar}{2m}W^{”}(x)\left(\begin{array}{c}-1&0\\0&1\end{array}\right)\tag{7}\end{align*}

となる。ここで、行列

\begin{align*}\left(\begin{array}{c}-1&0\\0&1\end{array}\right)\tag{8}\end{align*}

は、対角化されたフェルミ粒子数演算子\(\hat{\boldsymbol F}\)を導くグラスマン数\(\boldsymbol \eta\)を用いて

\begin{align*}\left(\begin{array}{c}-1&0\\0&1\end{array}\right)=\frac{1}{\hbar}(\boldsymbol\eta\boldsymbol\eta^\dagger-\boldsymbol\eta^\dagger\boldsymbol\eta)\tag{9}\end{align*}

と表せるため、超ハミルトニアン\(\hat{\boldsymbol H}\)はグラスマン数\(\boldsymbol\eta\)を用いて

\begin{align*}\hat {\boldsymbol H }&=-\frac{\hbar^2}{2m}\frac{d^2}{dx^2}\boldsymbol I+\frac{1}{2m}(W'(x))^2\boldsymbol I+\frac{1}{2m}W^{”}(x)(\boldsymbol\eta\boldsymbol\eta^\dagger-\boldsymbol\eta^\dagger\boldsymbol\eta)\tag{10}\end{align*}

と表すことができる。

 今回、グラスマン数として、対角化されたフェルミ粒子数演算子を導くもの\(\boldsymbol\eta\)を用いたが、その理由は超ハミルトニアン\(\hat{\boldsymbol H}\)やその1項目・2項目の\(\boldsymbol I\)が対角化されているからである。もし、対角化されたフェルミ粒子数演算子を導かない一般的なグラスマン数を用いた際は、超ハミルトニアンやその1項目・2項目は対角化される保証はないが、適切なユニタリ行列\(\boldsymbol U\)で挟めばいつでも対角化できる。よって、式(10)を参考に、対角化表示にこだわらなくても良い。さらに、今後は行列表示にもこだわる必要は無いため、一般化して

\begin{align*}\hat H&=\frac{1}{2m}\hat p^2+\frac{1}{2m}(W'(\hat q))^2+\frac{1}{2m}W^{”}(\hat q)(\eta\eta^\dagger-\eta^\dagger\eta)\tag{11}\end{align*}

と記す(\(i\hbar\frac{d}{dx}\rightarrow\hat p\),\(x\rightarrow\hat q\)を用いた)。これが、グラスマン数を用いた超ハミルトニアンである。式(11)は正準量子化後の超ハミルトニアンのため、正準量子化前の古典的超ハミルトニアンは演算子を単なる数に置き換えればよく、

\begin{align*}H&=\frac{1}{2m}p^2+\frac{1}{2m}(W'(q))^2+\frac{1}{2m}W^{”}(q)(\eta\eta^\dagger-\eta^\dagger\eta)\tag{12}\end{align*}

となる。ここで、\(q\)の正準共役運動量は\(p\)であり、\(\eta\)の正準共役運動量は\(\pi_{\scriptsize{\eta}}\)と定義する。位置演算子\(\hat q\)と正準共役運動量\(\hat p\)の正準交換関係は

\begin{align*}[\hat q,\hat p]=i\hbar\tag{13}\end{align*}

であるため、グラスマン数\(\eta\)と正準共役運動量\(\pi_{\scriptsize\eta}\)の正準交換関係も反交換関係を用いて

\begin{align*}\{\eta,\pi_{\scriptsize\eta}\}=i\hbar\tag{14}\end{align*}

となることを期待する。\(\eta\)がグラスマン数であるため、正準交換関係を満たすためには右辺がグラスマン数にならないように、正準共役運動量\(\pi_{\scriptsize{\eta}}\)もグラスマン数でなければならない。式(12)を眺めるとグラスマン数は\(\eta\)と\(\eta^\dagger\)しかないため、\(a\eta\)と\(a\eta^\dagger\)のどちらかが正準共役運動量\(\pi_{\scriptsize\eta}\)となる。ここで、\(a\)は正準共役運動量の係数である。しかし、もし\(a\eta\)自身が正準共役運動量であるなら正準交換関係(14)を満たせないため、\(a\eta^\dagger\)が正準共役運動量として妥当である。

もし、\(\eta\)の正準共役運動量が\(\eta^\dagger\)であると仮定すると、正準交換関係は

\begin{align*}\{\eta,\eta^\dagger\}=i\hbar\tag{15}\end{align*}

となり、左辺はエルミートだが右辺はエルミートではないため、仮定は正しくないことが分かる。よって、左辺もエルミートにならないように、正準共役運動量の係数\(a\)は\(i\)でなければならない。

\begin{align*}\pi_{\scriptsize\eta}=i\eta^\dagger\tag{16}\end{align*}

グラスマン数の量子化条件として次の式

\begin{align*}\{\eta,\eta^\dagger\}=\hbar\tag{17}\end{align*}

を用いてたが、この正準交換関係から導かれたものである。

 以上より、超ハミルトニアンの変数は\(\{q,p,\eta,\pi_{\scriptsize \eta}\}\)であり、\(\pi_{\scriptsize \eta}=i\eta^\dagger\)であることが分かる。


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