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本ページでは…
本ページでは、非相対論的極限においても確率密度\(\rho\)が負の値をとって確率解釈ができないが、確率密度\(\rho\)に粒子の電荷\(q\)を掛けた電荷密度として解釈すれば負の値をとっても問題ないことを確認する。
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前ページでは、非相対論的極限において負のエネルギー解
\begin{align*}E=- c\sqrt{(\boldsymbol p-q\boldsymbol A)^2+m^2c^2}+qA^0\end{align*}
における電荷粒子のクライン-ゴルドン方程式
\begin{align*}\left\{\frac{1}{c^2}\left(\frac{\partial}{\partial t}+\frac{iqA^0}{\hbar}\right)^2-\left(\boldsymbol\nabla-\frac{iq\boldsymbol A}{\hbar}\right)^2+\frac{m^2c^2}{\hbar^2}\right\}\phi=0\end{align*}
は、反粒子が従うシュレーディンガー方程式の複素共役
\begin{align*}i\hbar\left(\frac{\partial}{\partial t}+\frac{iqA^0}{\hbar}\right)\varPsi=-\frac{\hbar^2}{2m}\left(\boldsymbol \nabla-\frac{iq\boldsymbol A}{\hbar}\right)^2\varPsi\end{align*}
となることを確かめた。
内容
非相対論的極限と確率密度
初めに、正のエネルギー解の非相対論的極限における確率密度\(\rho\)について考える。クライン-ゴルドン方程式を満たす波動関数\(\phi\)と、静止エネルギーを差し引いたエネルギーにおけるシュレーディンガー方程式を満たす波動関数\(\varPhi\)の関係は
\begin{align*}\phi=e^{-\frac{imc^2}{\hbar}t}\varPhi\tag{1}\end{align*}
であった(前々ページを参照)ため、確率密度\(\rho\)
\begin{align*}\rho&=\frac{i\hbar}{2mc^2}\left(\phi^*\frac{\partial \phi}{\partial t}-\frac{\partial \phi^*}{\partial t}\phi\right)\tag{2}\end{align*}
に代入すると
\begin{align*}\rho&=\frac{i\hbar}{2mc^2}\left(e^{\frac{imc^2}{\hbar}t}\varPhi^*\left(-\frac{imc^2}{\hbar}e^{-\frac{imc^2}{\hbar}t}\varPhi+e^{-\frac{imc^2}{\hbar}t}\frac{\partial \varPhi}{\partial t}\right)-\left(\frac{imc^2}{\hbar}e^{\frac{imc^2}{\hbar}t}\varPhi^*+e^{\frac{imc^2}{\hbar}t}\frac{\partial \varPhi^*}{\partial t}\right)e^{-\frac{imc^2}{\hbar}t}\varPhi\right)\\&\simeq\varPhi^*\varPhi\tag{3}\end{align*}
2行目への変形では、非相対論的極限では静止エネルギーと比べて運動エネルギーが十分小さいこと
\begin{align*}\vert mc^2\varPhi\vert\gg \left| i\hbar\frac{\partial \varPhi}{\partial t}\right|\end{align*}
を用いた。
となり、確率密度\(\rho\)の値は常に正となることが分かる。
次に、負のエネルギー解の非相対論的極限における確率密度\(\rho\)について考える。クライン-ゴルドン方程式を満たす波動関数\(\phi\)と、静止エネルギーを付け足したエネルギーにおけるシュレーディンガー方程式を満たす波動関数\(\chi\)の関係は
\begin{align*}\phi=e^{\frac{imc^2}{\hbar}t}\chi\tag{4}\end{align*}
であった(前ページを参照)ため、確率密度\(\rho\)
\begin{align*}\rho&=\frac{i\hbar}{2mc^2}\left(\phi^*\frac{\partial \phi}{\partial t}-\frac{\partial \phi^*}{\partial t}\phi\right)\tag{2}\end{align*}
に代入すると
\begin{align*}\rho&=\frac{i\hbar}{2mc^2}\left(e^{-\frac{imc^2}{\hbar}t}\chi^*\left(\frac{imc^2}{\hbar}e^{\frac{imc^2}{\hbar}t}\chi+e^{\frac{imc^2}{\hbar}t}\frac{\partial \chi}{\partial t}\right)-\left(-\frac{imc^2}{\hbar}e^{-\frac{imc^2}{\hbar}t}\chi^*+e^{-\frac{imc^2}{\hbar}t}\frac{\partial \chi^*}{\partial t}\right)e^{\frac{imc^2}{\hbar}t}\chi\right)\\&\simeq-\chi^*\chi\tag{5}\end{align*}
となり、確率密度\(\rho\)の値は常に負となることが分かる。
以上より、以前のページと同様、非相対論的極限からもクライン-ゴルドン方程式の確率密度\(\rho\)は正の値も負の値もとって確率解釈ができないことが分かる。
非相対論的極限と電荷密度
\(\rho\)は負の値もとるため確率密度として解釈することは困難であった。一方、正のエネルギー解に対応する粒子の電荷\(q\)を\(\rho\)に掛けて電荷密度\(q\rho\)
\begin{align*}q\rho&=\frac{i\hbar q}{2mc^2}\left(\phi^*\frac{\partial \phi}{\partial t}-\frac{\partial \phi^*}{\partial t}\phi\right)\tag{2}\end{align*}
として解釈すれば負の値をとっても問題なくなる。
実際に、正のエネルギー解における電荷密度は
\begin{align*}q\rho\simeq q\varPhi^*\varPhi\end{align*}
となって、電荷が\(q\)の粒子の電荷密度となる。また、負のエネルギー解における電荷密度は
\begin{align*}q\rho\simeq -q\chi^*\chi\end{align*}
となって、電荷が\(-q\)の粒子の電荷密度のなり、電荷の符号が粒子と逆である反粒子が負のエネルギー解に対応していると考えれば電荷密度が負の値をとっても問題はおきない。
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次ページでは、自由粒子のクライン-ゴルドン方程式
\begin{align*}\partial_\mu\partial^\mu f&=-\frac{m^2c^2}{\hbar^2}f\end{align*}
において、正エネルギーを持つ波動関数\(f_k^+\)と負エネルギーを持つ波動関数\(f_k^-\)が次の規格直交関係
\begin{align*}(f_k^\pm\vert f_{k’}^\pm)&=\pm\delta^3(\boldsymbol k-\boldsymbol k’)\\(f_k^\pm\vert f_{k’}^\mp)&=0\end{align*}
を満たすことを調べる。ここで直交記号\((\vert)\)は次のように定義される。
\begin{align*}(f\vert g)&=\int d^3\boldsymbol x\ f^*i(\partial_0 g)-i(\partial_0f^*)g\end{align*}
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