アインシュタインの縮約記法

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 本ページでは、ひとつの項にペアで同じ下付き添え字と上付き添え字が現れたとき、総和記号が省かれていても添え字に関して総和をとるアインシュタインの縮約記法について学ぶ。

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内容

特殊相対性理論の要請

 相対性理論の要請から、時空座標上の二点\((ct, x, y, z)\)と\((ct+cdt, x+dx, y+dy, z+dz)\)間の距離の二乗\(ds^2\)

\begin{align*}ds^2=c^2dt^2-(dx^2+dy^2+dz^2)\tag{1}\end{align*}

は、時空座標の並進およびローレンツ変換の下で不変量でなければならず、すべての慣性系から見て微小距離\(ds^2\)は不変量でなければならない。ここで、時空座標の並進とローレンツ変換を合わせてポアンカレ変換という(教科書によってはマイナス符号が空間座標項ではなく時間項についていることもあるが、どちらにつけるかは好みの問題である)。

 相対性理論ではローレンツ変換だけではなく、時空座標の並進も含めたポアンカレ変換の下で不変でなければならない。例えば、原点から時空座標上の\((ct, x, y, z)\)までの距離の二乗

\begin{align*}s^2=c^2t^2-(x^2+y^2+z^2)\tag{2}\end{align*}

はローレンツ変換の下では不変量だが、時空座標の並進の下では不変量ではなくなってしまう。その点で、相対性理論を扱うときには式(2)ではなく式(1)を用いるべきである。

アインシュタインの縮約記法

 はじめに、次の二つの4次元時空座標系を用意する。

\begin{align}x_{\mu}&=(x_0,x_1,x_2,x_3)\\&=(ct,-x,-y,-z)\tag{3}\\x^{\mu}&=(x^0,x^1,x^2,x^3)\\&=(ct,x,y,z)\tag{4}\end{align}

ここでは、二つの座標系を区別するために、片方の座標系成分に下付き添え字\({}_\mu\)、もう片方の座標系成分に上付き添え字\({}^\mu\)を付けている。これら二つの座標系において、時間方向の成分は等しいが、空間方向の成分は符号が逆になっている。

\begin{align}x^{0}&=x_{0}\\x^{1}&=-x_{1}\\x^{2}&=-x_{2}\\x^{3}&=-x_{3}\tag{5}\end{align}

つまり、あるベクトルが与えられたときに、どちらの座標系でも時間方向は同じ成分で表されるが、空間方向の成分の符号は逆で表される。

 これらの記号を使うと、特殊相対性理論の要請の式(1)は

\begin{align*}ds^2&=\sum_{\mu=0}^{3}dx_\mu dx^\mu\\&=dx_0dx^0+dx_1dx^1+dx_2dx^2+dx_3dx^3\\&=c^2dt^2-(dx^2+dy^2+dz^2)\tag{6}\end{align*}

と表すことができる。先ほど、空間方向の成分が逆になっている変な座標の取り方をしたが、相対性理論の要請を満たすためにそのような座標の取り方をしたのである。

 次に、表記をシンプルにするために、「ひとつの項にペアで同じ下付き添え字と上付き添え字が現れたとき、総和記号が省かれていても添え字に関して総和をとること」にする。例えば式(5)では

\begin{align*}ds^2&=dx_\mu dx^\mu\end{align*}

とシンプルに表記でき、この表記方法をアインシュタインの縮約記法と呼ぶ。

次ページから…

次ページでは、ローレンツ変換の下では反変ベクトルと共変ベクトルと呼ばれる異なる変換性を持つ2つのベクトル

\begin{align*}A’^\mu&=\varLambda^\mu{}_\nu A^\nu\\B’_\mu&= B_\nu(\varLambda^{-1})^\nu{}_\mu\end{align*}

が存在することをみる。また、反変ベクトルと共変ベクトルの積はローレンツ変換の下で不変となることをみる。


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