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ハミルトンの正準方程式

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本ページでは…

 本ページでは、ラグランジアン\(L\)とハミルトニアン\(H\)の関係を、ルジャンドル変換から求め、ハミルトンの正準方程式を求める。また、保存力を受けているハミルトニアン\(H\)は全エネルギーの総和になることを確認する。

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前ページでは、ラグランジュの運動方程式

\begin{align}\frac{\text{d}}{\text{d}t}\frac{\partial L}{\partial \dot{q}_{\scriptsize i}}-\frac{\partial L}{\partial q_{\scriptsize i}}=0\tag{1}\end{align}

の不満点として、

①二つの変数の一般化座標\(q_{\scriptsize i}\)と一般化速度\(\dot{q_{\scriptsize i}}\)の式が対称的ではないこと、

②座標変換を拡張して「一般化座標\(q_{\scriptsize i}\)+一般化速度\(\dot q_{\scriptsize i}\)」や「一般化座標\(q_{\scriptsize i}\)+一般化運動量\(q_{\scriptsize i}\)」といった新しい変数を作るとラグランジュの運動方程式が複雑になること、

③変数の一つの一般化速度\(\dot{q_i}\)は時間微分されており、式全体で解きにくい二階微分方程式であること、

を挙げた。

 また、これらの不満点を解決するために、ラグランジアン\(L\)の代わりとして、 時間\(t\)と一般化座標\(q_{\scriptsize i}\)、そして一般化運動量\(p_{\scriptsize i}\)の関数であるハミルトニアン\(H\)を考えてみた。

\begin{align}H(q,p,t)\tag{2}\end{align}

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内容

ハミルトニアンの定義

 初めに、ハミルトニアン\(H(q,p,t)\)とラグランジアン\(L(q,\dot q,t)\)の関係を見ていく。ラグランジアン\(L\)の微小変化は

\begin{align}\text{d}L=\frac{\partial L}{\partial t}\text{d}t+\sum_{i=1}^n\frac{\partial L}{\partial q_i}\text{d}q_i+\sum_{i=1}^n\frac{\partial L}{\partial \dot{q_i}}\text{d}\dot{q_i}\tag{3}\end{align}

であり、ラグランジアン\(L\)と一般化速度\(\dot{q_i}\)または一般化運動量\(p_i\)の関係(以前のページ参照)

\begin{align}\frac{\partial L}{\partial q_i}&=\dot{p_i}\tag{4}\\\frac{\partial L}{\partial \dot{q_i}}&=p_i\tag{5}\end{align}

を用いると

\begin{align}\text{d}L=\frac{\partial L}{\partial t}\text{d}t+\sum_{i=1}^n\dot{p_i}\text{d}q_i+\sum_{i=1}^np_i\text{d}\dot{q_i}\tag{6}\end{align}

となる。次に、ハミルトニアン\(H\)の微小変化は、時間\(t\)と一般化座標\(q_i\)、そして一般化運動量 \(p_i\) の微小変化を用いて

\begin{align}\text{d}H=\bigcirc\text{d}t+\sum_{i=1}^n\bigcirc\text{d}q_i+\sum_{i=1}^n\bigcirc\text{d}p_i\tag{7}\end{align}

と表される。ここで、式(6)を式(7)に変換できるハミルトニアン\(H\)とラグランジアン\(L\)の関係を見つければよい。そのような関係としては

\begin{align}\text{d}H=\sum_{i=1}^n\dot{q_i}\text{d}p_i+\sum_{i=1}^np_i\text{d}\dot{q_i}-\text{d}L\tag{8}\end{align}

が考えられる(他の形も考えられるが、この形だとハミルトニアンが全エネルギーの総和に等しくなる。このことは後ほど確かめる)。実際にこの式(8)に式(6)を代入すると

\begin{align}\text{d}H=-\frac{\partial L}{\partial t}\text{d}t-\sum_{i=1}^n\dot{p_i}\text{d}q_i+\sum_{i=1}^n\dot{q_i}\text{d}p_i\tag{9}\end{align}

となって、上式(7)の形にすることができた。上式(8)の関係式は次の式

\begin{align}H=\sum_{i=1}^n\dot{q_i}p_i-L\tag{10}\end{align}

の微小変化である。このように変形できたのは、ラグランジア \(L\)の変数である一般化速度\(\dot{q_i}\)でラグランジアン\(L\)を偏微分した\(\frac{\partial L}{\partial \dot{q_i}}\)が、ハミルトニアン\(H\)の変数である一般化運動量\(p_i\)に等しいからだ。これが、ハミルトニアンの変数に一般化運動量\(p_i\)を選んだ理由であり、式(10)をハミルトニアンの定義とする。

ルジャンドル変換

 ある関数\(A(a,\cdots)\)の変数\(a\)を「関数\(A(a,\cdots)\)を変数\(a\)で偏微分した\(\frac{\partial A}{\partial a}\)」に変数を変える変換がルジャンドル変換であるため、関係式(10)はルジャンドル変換に相当する。

ハミルトニアンの具体的な形

 デカルト座標でこの関係式(10)を考えてみよう。

\begin{align}H=\sum_{i=1}^n\dot{x_i}p_i-L\tag{11}\end{align}

この式(11)に、保存力を受けているデカルト座標でのラグランジアン\(L\)

\begin{align}L=T-V= \frac{1}{2}\sum_{i=1}^nm_i\dot{x_i}^2 -V=\frac{1}{2}\sum_{i=1}^n\dot{x_i}p_i -V\tag{12}\end{align}

を代入すると

\begin{align}H=\sum_{i=1}^n\dot{q_i}p_i-L=\frac{1}{2}\sum_{i=1}^n\dot{x_i}p_i+V=T+V\tag{13}\end{align}

となり、保存力を受けているデカルト座標でのハミルトニアン\(H\)は全エネルギーの総和であることがわかる。ハミルトニアンもスカラーであり座標によらないことから、どのような座標においても保存力を受けているハミルトニアンは全エネルギーの総和を表す。

ハミルトンの正準方程式

 式(10)より、ハミルトニアン\(H\)の微小変化は

\begin{align}\text{d}H=\frac{\partial H}{\partial t}\text{d}t+\sum_{i=1}^n\frac{\partial H}{\partial q_i}\text{d}q_i+\sum_{i=1}^n\frac{\partial H}{\partial p_i}\text{d}p_i\tag{14}\end{align}

であるから、次の関係

\begin{align}\frac{\partial L}{\partial t}&=-\frac{\partial H}{\partial t}\tag{15}\\\dot{p_i}&=-\frac{\partial H}{\partial q_i}\tag{16}\\\dot{q_i}&=\frac{\partial H}{\partial p_i}\tag{17}\end{align}

が導かれる。下の対称性の高い二つの式をハミルトンの正準方程式、またはハミルトンの運動方程式と呼び、この正準方程式を満たす2つの変数である一般化座標\(q_i\)と一般化分運動量\(p_i\)を正準変数と呼ぶ。どうやら不満点①は解決したようだ。この式も、座標系の取り方によらないラグランジュ方程式から何の制限もなく移行したので、ハミルトンの正準方程式も座標系の取り方によらない。

 このように、ラグランジュの運動方程式は二階の微分方程式であったが、ハミルトンの正準方程式は一階の微分方程式になった。ただし、式の数は二倍である。

ハミルトニアンの導出(別法)

 最後に、別の方法からもハミルトニアンを求めてみる。ここでは、ハミルトニアンを次のように定義する。

\begin{align}L=-H+a\tag{18}\end{align}

\(a\)は一般化座標\(q_i\)と一般化運動量\(p_i\)、そして 一般化速度\(\dot{q_i}\)からなり、ハミルトニアン\(H\)が全エネルギーに等しくなるようにハミルトニアン\(H\)にはマイナスをつけてある。上式(18)を式(5)に代入すると

\begin{align}-\frac{\partial H}{\partial \dot{q_i}}+\frac{\partial a}{\partial \dot{q_i}}=p_i\tag{19}\end{align}

となり、ハミルトニアン\(H\)は一般化速度\(\dot{q_i}\)の関数ではないため

\begin{align}\frac{\partial H}{\partial \dot{q_i}}=0\tag{20}\end{align}

より

\begin{align}\frac{\partial a}{\partial \dot q_i}=p_i\tag{21}\end{align}

となる。この式を解くと

\begin{align}a=\sum_{i=1}^n\dot{q_i}p_i\tag{22}\end{align}

が得られ、式(18)に代入すると

\begin{align}H=\sum_{i=1}^n\dot{q_i}p_i-L\tag{10}\end{align}

と、ラグランジアン\(L\)とハミルトニアン\(H\)の関係式が得られる。

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次ページから⋯

次ページでは、一般化座標\(q_i\)と一般化運動量\(p_i\)そして時間\(t\)の関数である物理量を時間微分すると、ポアソン括弧\(\{\}\)と呼ばれる対称性の高い構造が現れることを見てみる。


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