マクスウェル方程式のポアンカレ変換

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 本ページでは、マクスウェル方程式がポアンカレ変換(ローレンツ変換と時空座標の並進)の下で共変であることをみる。

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前ページでは、ゲージ場における電磁波の波動方程式

\begin{align*}\partial_\mu\partial^\mu F^{\rho\nu}=0\end{align*}

をマクスウェル方程式から導いた。

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内容

ポアンカレ変換の下での不変性

 ゲージ場で表したマクスウェル方程式

\begin{align*}\partial_\mu (\partial^\mu A^\nu (x)-\partial^\nu A^\mu (x))=\mu_0j^\nu (x)\tag{1}\end{align*}

は相対性理論の要請を満たすため、ローレンツ変換と時空座標の並進(合わせてポアンカレ変換である)において不変である。言い換えると、時空座標が\(x\)である慣性系\(S\)から時空座標が\(x’\)の別の慣性系\(S’\)への変換が次の式(以前のページを参照)

\begin{align*}x’^\mu=\varLambda^\mu{}_\nu x^\nu+a^\mu\tag{2}\end{align*}

で表されるとき、変換後のマクスウェル方程式の形

\begin{align*}\partial’_\mu (\partial’^\mu A’^\nu (x’)-\partial’^\nu A’^\mu (x’))=\mu_0j’^\nu (x’)\tag{3}\end{align*}

が元のマクスウェル方程式と変わらないということである。

 このことは、次のように確かめられる。ローレンツ変換と時空座標の並進によって時空座標が式(2)のように変換されるとき、微分ベクトルは

\begin{align*}\partial’^\mu&=\varLambda^\mu{}_\nu\partial^\nu\tag{4}\\\partial’_\mu&=\partial_\nu(\varLambda^{-1})^\nu{}_\mu\tag{5}\end{align*}

と変換する(以前のページ参照)。また、ゲージ場\(A^\mu\)と4元電流密度\(j^\mu\)はベクトルであり、次のベクトルの変換性を持つ。

\begin{align*}A’^\mu(x’)&=\varLambda^\mu{}_\nu A^\nu(x)\tag{6}\\j’^\mu(x’)&=\varLambda^\mu{}_\nu j^\nu(x)\tag{7}\end{align*}

これらをマクスウェル方程式(3)に代入すると

\begin{align*}\partial_\nu(\varLambda^{-1})^\nu{}_\mu (\varLambda^\mu{}_\rho\partial^\rho \varLambda^\nu{}_\gamma A^\gamma(x)-\varLambda^\nu{}_\gamma \partial^\gamma \varLambda^\mu{}_\rho A^\rho(x))&=\mu_0\varLambda^\nu{}_\gamma j^\gamma(x)\\\rightarrow\partial_\nu(\delta^\nu{}_\rho\partial^\rho \varLambda^\nu{}_\gamma A^\gamma(x)-\varLambda^\nu{}_\gamma \partial^\gamma \delta^\nu{}_\rho A^\rho(x))&=\mu_0\varLambda^\nu{}_\gamma j^\gamma(x)\\\rightarrow\varLambda^\nu{}_\gamma\{\partial_\nu(\partial^\nu A^\gamma(x)-\partial^\gamma A^\nu(x))\}&=\varLambda^\nu{}_\gamma(\mu_0 j^\gamma(x))\tag{8}\end{align*}

となる。マクスウェル方程式はベクトル(1階のテンソル)のため、式(8)のようにポアンカレ変換の下で元の方程式の値から変化し(方程式全体に\(\varLambda^\nu{}_\gamma\)が掛かっている)、相対論的不変性は持たない。しかし、ポアンカレ変換の下で方程式の形は変わっておらず、相対論的共変性を持つという。

相対論的不変性と相対論的共変性

 相対論的不変性の相対論的共変性の違いについて述べる。

 スカラー値はポアンカレ変換によって変化しない。クライン-ゴルドン方程式のようにスカラーとローレンツ不変な演算子から表されている方程式は、ポアンカレ変換の下で方程式の形も波動関数の値も変換せず、そのような性質を相対論的不変性という。

 テンソル(ベクトルも含む)成分はポアンカレ変換によって変化する。マクスウェル方程式やディラック方程式のようにテンソルとローレンツ不変な演算子から表されている方程式は、ポアンカレ変換の下で方程式の形は変わらないが、波動関数の成分は変化し、そのような性質を相対論的共変性という。

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次ページでは、マクスウェル方程式がゲージ変換の下で不変であることをみる。


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