プロカ方程式

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本ページでは…

 本ページでは、質量を持つゲージ場\(A^\nu\が従うプロカ方程式

\begin{align*}\partial_\mu (\partial^\mu A^\nu -\partial^\nu A^\mu )+\frac{m^2c^2}{\hbar^2}A^\nu=0\end{align*}

を導き、プロカ方程式はゲージ変換の下で不変でないことを確かめる。また、ゲージ不変性を式に課すとゲージ場\(A^\nu\)は質量\(m\)を持つことが許されないことを調べる。

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前ページまで…

前ページでは、ゲージ不変性を持つ方程式を解析しやすくするためにゲージ場\(A^\mu\)に条件を課すゲージ固定について調べた。また、具体的なゲージ固定として、ローレンツゲージ固定とクーロンゲージ固定について述べた。

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内容

プロカ方程式とは

以前のページで、真空中のマクスウェル方程式

\begin{align*}\partial_\mu (\partial^\mu A^\nu -\partial^\nu A^\mu )=0\tag{1}\end{align*}

から電磁波の波動方程式

\begin{align*}\frac{1}{c^2}\frac{\partial^2 }{\partial t^2}F^{\mu\nu}-\boldsymbol \nabla^2F^{\mu\nu}&=0\tag{2}\end{align*}

を導いたが、この波動方程式に対応するアインシュタインの関係式は

\begin{align*}E^2=\boldsymbol p^2c^2\tag{3}\end{align*}

であり、電磁波の源である光子は質量\(m\)がゼロであることが分かった。つまり、マクスウェル方程式に従うゲージ場\(A^\nu\)は質量を持たない

 では、質量を持つゲージ場\(A^\nu\)が従う式を作ることはできるのだろうか。実は、真空中のマクスウェル方程式

\begin{align*}\partial_\mu (\partial^\mu A^\nu -\partial^\nu A^\mu )=0\tag{1}\end{align*}

に質量項\(\frac{m^2c^2}{\hbar^2}A^\nu\)を加えると、質量を持つゲージ場\(A^\nu\)が従う式

\begin{align*}\partial_\mu (\partial^\mu A^\nu -\partial^\nu A^\mu )+\frac{m^2c^2}{\hbar^2}A^\nu=0\tag{4}\end{align*}

が得られ、これをプロカ方程式という。

 プロカ方程式はもう少しシンプルにすることができる。プロカ方程式(4)の両辺に\(\partial_\nu\)を作用させると次の制約

\begin{align*}\partial_\nu A^\nu=0\tag{5}\end{align*}

\begin{align*}\partial_\nu\partial_\mu (\partial^\mu A^\nu-\partial^\nu A^\mu )+\frac{m^2c^2}{\hbar^2}\partial_\nu A^\nu&=0\\\rightarrow\partial_\mu\partial^\mu \partial_\nu A^\nu -\partial_\nu\partial^\nu\partial_\mu A^\mu +\frac{m^2c^2}{\hbar^2}\partial_\nu A^\nu&=0\\\rightarrow\frac{m^2c^2}{\hbar^2}\partial_\nu A^\nu&=0\\\rightarrow\partial_\nu A^\nu&=0\end{align*}

4行目への変形では式全体を\(m^2\)で割っているため、この変形は質量\(m\)がゼロだと成り立たない。

が得られ、これを用いるとシンプルになったプロカ方程式

\begin{align*}\left(\partial_\mu \partial^\mu +\frac{m^2c^2}{\hbar^2}\right)A^\nu=0\tag{6}\end{align*}

が得られる。このプロカ方程式はクライン-ゴルドン方程式(以前のページを参照)

\begin{align*}\left(\partial_\mu \partial^\mu +\frac{m^2c^2}{\hbar^2}\right)\phi=0\tag{7}\end{align*}

と等価であるため、プロカ方程式に従うゲージ場\(A^\nu\)は質量を持つ

 ここで、一点注意だが、プロカ方程式を満たすゲージ場\(A^\nu\)の各成分はクライン-ゴルドン方程式(7)を満たすが、式(5)の制約も同時に満たさなければならないため、プロカ方程式(6)の解とクライン-ゴルドン方程式(7)の解は等価ではない。

プロカ方程式の注意点

 プロカ方程式には注意すべき点が2つある。

 1つは、式(5)の制約

\begin{align*}\partial_\nu A^\nu=0\tag{5}\end{align*}

はローレンツゲージ条件(前ページ参照)と全く同じだが、これはローレンツゲージ条件そのものではない。なぜなら、ゲージ固定はゲージ不変な方程式に対してのみ行うことができるのに対し、後で確認するようにプロカ方程式はゲージ不変ではないからである。式(5)の制約はプロカ方程式そのものから導かれる制約であり、そのためプロカ方程式においてゲージ場\(A^\nu\)は常にこの条件を満たさなければならない。この点が、ゲージ場\(A^\nu\)に任意の条件を課すことができるゲージ固定とは本質的に異なる。

 2つ目は、式(5)の制約

\begin{align*}\partial_\nu A^\nu=0\tag{5}\end{align*}

を導く途中式で式の両辺を\(m^2\)で割っているため、式(5)の制約は質量\(m\)がゼロだと成り立たないことである。なぜなら、質量\(m\)がゼロだとプロカ方程式はマクスウェル方程式に帰結するが、元来のマクスウェル方程式には式(5)の制約がないからである。

プロカ方程式のゲージ変換

 プロカ方程式

\begin{align*}\partial_\mu (\partial^\mu A^\nu -\partial^\nu A^\mu )+\frac{m^2c^2}{\hbar^2}A^\nu=0\tag{4}\end{align*}

はゲージ変換において不変ではない。言い換えると、ゲージ場\(A^\mu\)から新たなゲージ場\(A’^\mu\)への変換が任意関数\(\varLambda\)の時空微分\(\partial^\mu\varLambda\)を用いて

\begin{align*}A^\mu\rightarrow A’^\mu=A^\mu+\partial^\mu\varLambda\tag{8}\end{align*}

と表されるとき、変換後のプロカ方程式の形

\begin{align*}\partial_\mu (\partial^\mu A’^\nu -\partial^\nu A’^\mu )+\frac{m^2c^2}{\hbar^2}A’^\nu=0\tag{9}\end{align*}

が元のプロカ方程式にならないということである。

 このことは、次のように確かめられる。式(8)をプロカ方程式(9)に代入すると

\begin{align*}\partial_\mu (\partial^\mu (A^\nu +\partial^\nu\varLambda)-\partial^\nu (A^\mu +\partial^\mu\varLambda)+\frac{m^2c^2}{\hbar^2}(A^\nu +\partial^\nu\varLambda)&=0 \\\rightarrow\partial_\mu (\partial^\mu A^\nu -\partial^\nu A^\mu )+\frac{m^2c^2}{\hbar^2}A^\nu +\frac{m^2c^2}{\hbar^2}\partial^\nu\varLambda&=0 \tag{10}\end{align*}

となり、次の関係式

\begin{align*}\frac{m^2c^2}{\hbar^2}\partial^\nu\varLambda&=0\tag{11}\end{align*}

が成り立たないと元のプロカ方程式にならないが、任意の関数\(\varLambda\)に対して一般的に\(\partial^\nu\varLambda\neq0\)であるためプロカ方程式はゲージ変換の下で不変ではない。

 式(11)が成り立ち、ゲージ変換によって元のプロカ方程式になる唯一の方法は質量\(m\)がゼロになることであるため、「ゲージ不変性を課すとゲージ場\(A^\nu\)は質量\(m\)を持つことが許されない」ことが分かる。

ゲージ場の自発的対称性の破れ

 以上をまとめると、マクスウェル方程式は質量を持たないゲージ場\(A^\nu\)が従う式でゲージ変換の下で不変だが、プロカ方程式は質量を持つゲージ場\(A^\nu\)が従う式でゲージ変換の下で不変ではない。そして、ゲージ不変性を課すとゲージ場\(A^\nu\)は質量\(m\)を持つことが許されない。

 しかし、自然界にはウィークボソンのようにゲージ不変性を保ちながら質量を持つゲージ場が存在しており、ウィークボソンはどのように質量を獲得しているのだろうか。ゲージ不変な式に質量項を加えるとプロカ方程式のようにゲージ不変性が破れてしまうため、実は、ゲージ不変な式で自発的対称性の破れが起きてゲージ不変性を保ちつつ質量を獲得している。このことについては後のページで述べる。

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次ページから…

次ページでは、マクスウェル方程式に従うゲージ場の自由度は2(縦波成分…0、横波成分…2)であり、プロカ方程式に従うゲージ場の自由度が3(縦波成分…1、横波成分…2)であることを確かめる。また、ゲージ不変性は縦波成分を取り除くことを確認する。


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