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定常波

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本ページでは…

 本ページでは、定常波の定義を確認し、実数平面波から構成される定常波と複素平面波から構成される定常波を導出する。

また、座標依存部分と時間依存部分との積で波動の式が与えられたとき、その式が定常波を表すかを確認する方法を紹介する。

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前ページでは、時間に依存するシュレーディンガー方程式

\begin{align*}i\hbar\frac{\partial}{\partial t} \varPsi( q,t)=\hat H\varPsi( q,t)\tag{1}\end{align*}

を変数分離することにより、時間に依存しないシュレーディンガー方程式

\begin{align*}\hat H\psi( q)=E\psi( q)\tag{2}\end{align*}

を求めた。この時、波動関数\(\varPsi\)は

\begin{align*}\varPsi( q,t)=\psi( q)e^{-i\frac{E}{\hbar}t}\tag{3}\end{align*}

と表せる。

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内容

定常波とは

 定常波(定在波ともいう)は、「振幅\(a\)と角振動数\(\omega\)が等しく、波数ベクトル\(\boldsymbol k\)の符号が逆」である進行方向が互いに逆向きの2つの波が重なり合うとできる波動であり、波形が進行せず、その場に止まって振動しているように見える。

実数定常波

 例として、「振幅\(a\)と角振動数\(\omega\)が等しく、波数ベクトル\(\boldsymbol k\)の符号が逆」である進行方向が互いに逆向きの2つの実数平面波を用意する。

\begin{align*}\varPsi_1&=a\cos(\boldsymbol k\cdot \boldsymbol q-\omega t)\\&=a\cos\boldsymbol k\cdot\boldsymbol q\cos\omega t+a\sin\boldsymbol k\cdot\boldsymbol q\sin\omega t\tag{4}\\\varPsi_2&=a\cos(-\boldsymbol k\cdot \boldsymbol q-\omega t)\\&=a\cos\boldsymbol k\cdot\boldsymbol q\cos\omega t-a\sin\boldsymbol k\cdot\boldsymbol q\sin\omega t\tag{5}\end{align*}

これらの式を足し合わせて定常波\(\varPsi\)を作ると、

\begin{align*}\varPsi&=\varPsi_1+\varPsi_2\\&=2a\cos\boldsymbol k\cdot\boldsymbol q\cos\omega t\tag{6}\end{align*}

となり、全ての点の変位が\(0\)になる時刻(\(\cos\omega t=0\)のとき)と全ての点の変位が最大になる時刻(\(\cos\omega t=\pm1\)のとき)が存在し、全く振動せず振幅が\(0\)になる点(節といい、\(\cos\boldsymbol k\cdot\boldsymbol q=0\)のとき)と振幅が最大になる点(腹といい、\(\cos\boldsymbol k\cdot\boldsymbol q=\pm1\)のとき)が現れることがわかる。これらは、定常波の特徴であり、この定常波の各点での振幅は\(2a\vert\cos\boldsymbol k\cdot\boldsymbol q\vert\)となる。

複素定常波

 次の例として、「振幅\(a\)と角振動数\(\omega\)が等しく、波数ベクトル\(\boldsymbol k\)の符号が逆」である進行方向が互いに逆向きの2つの複素平面波を用意する。

\begin{align*}\varPsi_1&=ae^{i(\boldsymbol k\cdot \boldsymbol q-\omega t)}\\&=ae^{i\boldsymbol k\cdot \boldsymbol q}e^{-\omega t}\\&=a(\cos\boldsymbol k\cdot\boldsymbol q+i\sin\boldsymbol k\cdot\boldsymbol q)e^{-i\omega t}\tag{7}\\\varPsi_2&=ae^{i(-\boldsymbol k\cdot \boldsymbol q-\omega t)}\\&=ae^{-i\boldsymbol k\cdot \boldsymbol q}e^{-\omega t}\\&=a(\cos\boldsymbol k\cdot\boldsymbol q-i\sin\boldsymbol k\cdot\boldsymbol q)e^{-i\omega t}\tag{8}\end{align*}

これらの式を足し合わせて定常波\(\varPsi\)を作ると、

\begin{align*}\varPsi&=\varPsi_1+\varPsi_2\\&=2a\cos\boldsymbol k\cdot\boldsymbol q e^{-i\omega t}\tag{9}\end{align*}

となり、実数平面波の例と同様、実数成分または虚数成分全ての点の変位が\(0\)になる時刻(\(\cos\omega t=0\)または\(-i\sin\omega t=0\)のとき)と、実数成分または虚数成分全ての点の変位が最大になる時刻(\(\cos\omega t=\pm1\)または\(-i\sin\omega t=\pm1\)のとき)が存在する。また、全く振動せず振幅が\(0\)になる点(\(\cos\boldsymbol k\cdot\boldsymbol q=0\)のとき)と振幅が最大になる点(\(\cos\boldsymbol k\cdot\boldsymbol q=\pm1\)のとき)が現れることがわかる。そして、この定常波の振幅は\(2a\vert\cos\boldsymbol k\cdot\boldsymbol q\vert\)となる。

定常波にならないとき

 定常波の式(6)と式(9)は、座標依存部分と時間依存部分の積で表されているため、同様に、座標依存部分\(\psi(q)\)と時間依存部分\(e^{-i\frac{E}{\hbar}t}\)との積で表されている波動関数の式(3)も常に定常波になると思いたくなる。そのように記述されている本などもあるが厳密には正しくない。反例としては、\(\psi(q)\)が

\begin{align*}\psi(q)=e^{i\frac{\boldsymbol k\cdot\boldsymbol q}{\hbar}}\tag{10}\end{align*}

のときは、波動関数\(\varPsi(q,t)\)は

\begin{align*}\varPsi(q,t)&=e^{i\left(\frac{\boldsymbol p\cdot\boldsymbol q}{\hbar}-\frac{E}{\hbar}t\right)}\\&=e^{i\left(\boldsymbol k\cdot\boldsymbol q-\omega t\right)}\tag{11}\end{align*}

となり、一方向に進む複素平面波の式となる。ポテンシャルが一定の空間を運動する粒子のシュレーディンガー方程式を解くと波動関数\(\varPsi\)が複素平面波となり、もちろん、複素平面波は定常波ではない。

定常波の見分け方

 それでは、定常波になるか、ならないかは式のどこを見れば良いのだろうか。実は、実部または虚部のみを見たとき、座標依存部分と時間依存部分との積で表されていれば定常波となる。例えば、式(6)は実部のみから構成されており、その実部は座標依存部分と時間依存部分との積から構成されているから定常波である。また、式(9)を例にとると、実部は

\begin{align*}2a\cos\boldsymbol k\cdot\boldsymbol q \cos{\omega t}\tag{12}\end{align*}

で、虚部は

\begin{align*}-2ai\cos\boldsymbol k\cdot\boldsymbol q \sin{\omega t}\tag{13}\end{align*}

であり、どちらも座標依存部分と時間依存部分との積から構成されているからこちらも定常波である。

 一方、式(11)を例にとると、実部は

\begin{align*}\cos{\left(\boldsymbol k\cdot\boldsymbol q-\omega t\right)}\tag{14}\end{align*}

で虚部は

\begin{align*}i\sin{\left(\boldsymbol k\cdot\boldsymbol q-\omega t\right)}\tag{15}\end{align*}

であり、どちらも座標依存部分と時間依存部分との積から構成されていないため定常波ではない。

 注意点として、実部または虚部を見るとき、式全体で見なければならない。例えば、定常波ではない式(11)で、\(e^{i\left(\boldsymbol k\cdot\boldsymbol q-\omega t\right)}\)全体を\(e^{i\left(\boldsymbol k\cdot\boldsymbol q\right)}\)と\(e^{i\left(-\omega t\right)}\)とに分けて、それぞれの実部を掛け合わせると

\begin{align*}-\cos \boldsymbol k\cdot\boldsymbol q\sin \omega t\tag{16}\end{align*}

となって、式(11)の実部は座標依存部分と時間依存部分との積から構成されているように思えてしまう。このように、実部または虚部を見るときは、式全体で見なければ異なる計算結果となってしまう。もちろん、式全体で見たときの計算結果が正しい。

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次ページでは、座標演算子\(q_i\)と運度量演算子\(p_i\)とが満たす交換関係である正準交換関係

\begin{align} [\hat{q_i},\ \hat{p_j}]=i\hbar\delta_{ij}\end{align}

と、関連する交換関係

\begin{align}[\hat{q_i},\ \hat{q_j}]=[\hat{p_i},\ \hat{p_j}]=0\end{align}

を求める。


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