重ね合わせの原理

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本ページでは…

 本ページでは、系の状態と固有状態の定義をみて、系の状態を重ね合わせたものは系の状態になる(重ね合わせの原理)が、固有状態の1次結合で作ったものは一般的に固有状態にならないことを確かめる。

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前ページまで⋯

前ページでは、エネルギー\(E\)とハミルトニアン\(H\)に関する固有値方程式

\begin{align*}i\hbar\frac{\partial }{\partial t}\varPsi=E\varPsi\tag{1}\\\hat H\varPsi=H\varPsi\tag{2}\end{align*}

から、時間に依存するシュレーディンガー方程式

\begin{align*}i\hbar\frac{\partial}{\partial t} \varPsi=\hat H\varPsi\tag{3}\end{align*}

を導いた。

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内容

系の状態

 時間に依存するシュレーディンガー方程式

\begin{align*}i\hbar\frac{\partial}{\partial t} \varPsi=\hat H\varPsi\tag{3}\end{align*}

を満たす波動関数\(\varPsi\)を系の状態と呼ぶ。

 時間に依存するシュレーディンガー方程式(3)は固有値方程式ではないため、系の状態を表す波動関数\(\varPsi\)は固有関数とは呼ばない。

重ね合わせの原理

 波動関数\(\varPsi_1\),\(\varPsi_2\),⋯,\(\varPsi_n\)が時間に依存するシュレーディンガー方程式(3)を満たす系の状態のとき、その1次結合

\begin{align*}\varPsi=\sum_{i}c_i\varPsi_i\tag{4}\end{align*}

も時間に依存するシュレーディンガー方程式(3)を満たす系の状態であるという原理を重ね合わせの原理という。

 重ね合わせの原理が成り立つことを、系の状態が2つのとき\(\varPsi_1\),\(\varPsi_2\)で確認してみる。まず、\(\varPsi_1\)と\(\varPsi_2\)が系の状態であるから、時間に依存するシュレーディンガー方程式(3)を満たし、

\begin{align*}i\hbar\frac{\partial }{\partial t}\varPsi_1&=\hat H\varPsi_1\tag{5}\\i\hbar\frac{\partial }{\partial t}\varPsi_2&=\hat H\varPsi_2\tag{6}\end{align*}

が成り立つ。次に、系の状態を重ね合わせた

\begin{align*}\varPsi=c_1\varPsi_1+v_2\varPsi_2\tag{7}\end{align*}

にエネルギー演算子\(i\hbar\frac{\partial }{\partial t}\)を作用させると

\begin{align*}i\hbar\frac{\partial }{\partial t}\varPsi&=i\hbar\frac{\partial }{\partial t}(c_1\varPsi_1+v_2\varPsi_2)\\&=i\hbar c_1\frac{\partial }{\partial t}\varPsi_1+i\hbar c_2\frac{\partial }{\partial t}\varPsi_2\\&=c_1\hat H\varPsi_1+c_2\hat H\varPsi_2\\&=\hat H\left(c_1\varPsi_1+c_2\varPsi_2\right)\\&=\hat H\varPsi\tag{8}\end{align*}

となり、時間に依存するシュレーディンガー方程式(3)を式(7)が満たすことから、式(7)も系の状態であることがわかる。

固有状態

 古典物理量の固有値方程式

\begin{align*}\hat F\varPsi=f\varPsi\tag{9}\end{align*}

を満たす固有関数\(\varPsi\)(または波動関数)の状態を固有状態と呼び、系の状態と区別する。

 固有状態の一次結合は系の状態になることができる。この関係については、後のページで確認する。

固有状態の1次結合

 系の状態の重ね合わせが系の状態になることに対して、固有状態の1次結合は一般的に固有状態にならない。

 固有状態の1次結合が一般的に固有状態にならないことは次のように確かめられる。ある古典物理量の固有値方程式

\begin{align*}\hat F\varPsi=f\varPsi\tag{9}\end{align*}

を満たす固有状態として\(\varPsi_1\)と\(\varPsi_2\)が与えられ、次の2つの固有値方程式が成り立つと仮定する。

\begin{align*}\hat F\varPsi_1&=f_1\varPsi_1\tag{10}\\\hat F\varPsi_2&=f_2\varPsi_2\tag{11}\end{align*}

このとき、2つの固有状態を1次結合で作った

\begin{align*}\varPsi=c_1\varPsi_1+c_2\varPsi_2\tag{12}\end{align*}

に、古典物理量の演算子\(\hat F\)を作用させると

\begin{align*}\hat F\varPsi&=\hat F(c_1\varPsi_1+c_2\varPsi_2)\\&=c_1\hat F\varPsi_1+c_2\hat F\varPsi_2\\&=c_1f_1\varPsi_1+c_2f_2\varPsi\tag{13}\end{align*}

となる。この式より、\(f_1=f_2\)ならば

\begin{align*}\hat F\varPsi&=f_1(c_1\varPsi_1+c_2\varPsi_2)\\&=f_1\varPsi\tag{14}\end{align*}

となり、固有状態の1次結合で作っものも固有状態となるが、\(f_1\neq f_2\)ならば

\begin{align*}\hat F\varPsi&\neq f_1(c_1\varPsi_1+c_2\varPsi_2)\\&=f_1\varPsi\tag{15}\end{align*}

となり、固有状態の1次結合で作ったものは固有状態にならない。

 量子力学の基本方程式を固有値方程式ではなく式(3)のシュレーディンガー方程式としたが、もし固有値方程式が基本方程式なら、解の重ね合わせがかならずしも解にならなくなってしまう。そのため、解の重ね合わせも解になるようにシュレーディンガー方程式を基本方程式に定める方が妥当である。

縮重状態

 同じ固有値に複数の異なった固有関数が対応している状態を、縮重(縮退)と呼ぶ。

 さきほど、式(14)で\(f_1=f_2\)の時があったが、この状態が縮重であり、縮重している固有関数から1次結合で作ったものも固有関数になる。縮重しているとき、一次結合をとることで無数の固有関数を作ることができるが、\(n\)重縮重のとき、無数の固有関数のうち\(n\)個だけが一次独立である(詳細はリンク先のページ)。

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次ページから⋯

次ページでは、量子力学において複素数を用いるのは単なる計算上のテクニックではなく、実数波では説明できない現象があり、複素波でなければならない理由を見ていく。


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