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本ページでは、テンソルとは2つ以上の添え字を持つ量であることをみる。
場合によっては、スカラー、ベクトル、テンソルを総称してテンソルと呼ぶこともあり、その際、スカラーを0階のテンソル、ベクトルを1階のテンソルと呼ぶ。
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前ページでは、反変ベクトルを共変ベクトルに、共変ベクトルを反変ベクトルに変換する計量テンソルについて調べた。
内容
テンソルとは
ある量が2つ以上の添え字を持つとき、その量をテンソルと呼ぶ。これまでに現れた計量テンソル\(\eta_{\mu\nu}\),\(\eta^{\mu\nu}\)やローレンツ変換を表すパラメーター\(\varLambda^\mu{}_\nu\)はそれぞれ添え字2つ持つためテンソルである。
場合によっては、スカラー、ベクトル、テンソルを総称してテンソルと呼ぶこともあり、その際、スカラーを0階のテンソル、ベクトルを1階のテンソルと呼ぶ。また、テンソルは添え字の数に応じて2階、3階、…のテンソルと呼ばれる。例えば、計量テンソル\(\eta_{\mu\nu}\),\(\eta^{\mu\nu}\)やローレンツ変換を表すパラメーター\(\varLambda^\mu{}_\nu\)は2階のテンソルである。
2階のテンソル
2階のテンソルは変換性の違いにより、共変テンソルと反変テンソル、混合テンソルの3つに分類できる。
2階のテンソルの変換性を調べるために、はじめに、次の二つの4次元時空座標系を用意する。
\begin{align}x_{\mu}&=(x_0,x_1,x_2,x_3)\\&=(ct,-x,-y,-z)\tag{1}\\x^{\mu}&=(x^0,x^1,x^2,x^3)\\&=(ct,x,y,z)\tag{2}\end{align}
ローレンツ変換と時空座標の並進によって慣性系\(x^\nu\)から別の慣性系\(x’^\mu\)に次のように
\begin{align*}x’^\mu=\varLambda^\mu{}_\nu x^\nu+a^\mu\tag{3}\end{align*}
変換されるとき、微小変化\(dx^\nu\),\(dx_\nu\)は次のように変換される。
\begin{align*}dx’^\mu&=\varLambda^\mu{}_\nu dx^\nu\tag{4}\\dx’_\mu&=dx_\nu(\varLambda^{-1})^\nu{}_\mu\tag{5}\end{align*}
また、逆に慣性系\(x’^\mu\)から慣性系\(x^\nu\)に変換されるとき、微小変化は
\begin{align*}dx^\nu&=(\varLambda^{-1})^\nu{}_\mu dx’^\mu\tag{6}\\dx_\nu&=dx’_\mu\varLambda^\mu{}_\nu\tag{7}\end{align*}
と変換される。
※※※式(6)と式(7)は、式(4)または式(5)の両辺に\((\varLambda^{-1})^\rho{}_\mu\)または\(\varLambda^\mu{}_\rho\)を掛けることで導くことができる。
\begin{align*}(\varLambda^{-1})^\rho{}_\mu dx’^\mu&=(\varLambda^{-1})^\rho{}_\mu\varLambda^\mu{}_\nu dx^\nu\\&=\delta^\rho{}_\nu dx^\nu\\&= dx^\rho\\\rightarrow dx^\nu&=(\varLambda^{-1})^\nu{}_\mu dx’^\mu\tag{8}\end{align*}
\begin{align*}\\dx’_\mu\varLambda^\mu{}_\rho&=dx_\nu(\varLambda^{-1})^\nu{}_\mu\varLambda^\mu{}_\rho\\&=dx_\nu\delta^\nu{}_\rho\\&=dx_\rho\\\rightarrow dx_\nu&=dx’_\mu\varLambda^\mu{}_\nu\tag{9}\end{align*}
式(8)および式(9)において、2つ目の等号ではクロネッカーのデルタの関係式
\begin{align*}\delta^{\rho}{}_\nu=(\varLambda^{-1})^{\rho}{}_{\mu}\varLambda^\mu{}_\nu\tag{10}\end{align*}
を用い、3つ目の等号ではクロネッカーのデルタの性質
\begin{align*}\delta^\rho{}_\nu=\left\{\begin{array}{c}1\ \ \ (\rho=\nu)\\0\ \ \ (\rho\neq\nu)\end{array}\right.\tag{11}\end{align*}
を用いた。※※※
2階の共変テンソル
2階の共変テンソルの変換性を調べるために、計量テンソル\(\eta_{\nu\rho}\)を用いた反変ベクトル\(dx^\rho\)と共変ベクトル\(dx_\nu\)の関係式
\begin{align*}dx_\nu=\eta_{\nu\rho}dx^\rho\tag{12}\end{align*}
に式(6)と式(7)を代入すると
\begin{align*}dx’_\mu\varLambda^\mu{}_\nu=\eta_{\nu\rho}(\varLambda^{-1})^\rho{}_\mu dx’^\mu\tag{13}\end{align*}
となり、両辺に\((\varLambda^{-1})^\nu{}_\gamma\)を掛けると
\begin{align*}dx’_\mu\varLambda^\mu{}_\nu(\varLambda^{-1})^\nu{}_\gamma&=\eta_{\nu\rho}(\varLambda^{-1})^\nu{}_\gamma(\varLambda^{-1})^\rho{}_\mu dx’^\mu\\\rightarrow dx’_\mu\delta^\mu{}_\gamma&=\eta_{\nu\rho}(\varLambda^{-1})^\nu{}_\gamma(\varLambda^{-1})^\rho{}_\mu dx’^\mu\\\rightarrow dx’_\gamma&=\eta_{\nu\rho}(\varLambda^{-1})^\nu{}_\gamma(\varLambda^{-1})^\rho{}_\mu dx’^\mu\tag{14}\end{align*}
となる。別の慣性系\(dx’^\mu\),\(dx’_\gamma\)において、計量テンソル\(\eta’_{\gamma\mu}\)を用いた反変ベクトル\(dx’^\mu\)と共変ベクトル\(dx’_\gamma\)の関係式は
\begin{align*}dx’_\gamma=\eta’_{\gamma\mu}dx’^\mu\tag{15}\end{align*}
であるため、式(14)と式(15)を見比べると
\begin{align*}\eta’_{\gamma\mu}=\eta_{\nu\rho}(\varLambda^{-1})^\nu{}_\gamma(\varLambda^{-1})^\rho{}_\mu\tag{16}\end{align*}
の関係があることが分かる。
式(5)より共変ベクトル\(dx_\nu\)はローレンツ変換のパラメーター\(\varLambda^{-1}\)一つによって変換されていたが、計量テンソル\(\eta_{\nu\rho}\)はローレンツ変換のパラメーター\(\varLambda^{-1}\)二つによって変換されている。つまり、2重の共変性が計量テンソル\(\eta_{\nu\rho}\)には備われており、このような2階のテンソルを2階の共変テンソルと呼ぶ。一般化すると、2階の共変テンソル\(T_{\rho\gamma}\)は次の関係
\begin{align*}T’_{\mu\nu}&=T_{\rho\gamma}(\varLambda^{-1})^\rho{}_\mu(\varLambda^{-1})^\gamma{}_\nu\tag{17}\end{align*}
を満たし、共変ベクトルでは下付き添え字を用いていたが、二階の共変テンソルでは下付き添え字を二つ用いることにする。
2階の反変テンソル
2階の反変テンソルの変換性を調べるために、計量テンソル\(\eta^{\nu\rho}\)を用いた共変ベクトル\(dx_\rho\)と反変ベクトル\(dx^\nu\)の関係式
\begin{align*}dx^\nu=\eta^{\nu\rho}dx_\rho\tag{18}\end{align*}
に式(6)と式(7)を代入すると
\begin{align*}(\varLambda^{-1})^\nu{}_\mu dx’^\mu=\eta^{\nu\rho}\varLambda^\mu{}_\rho dx’_\mu\tag{19}\end{align*}
となり、両辺に\(\varLambda^\gamma{}_\nu\)を掛けると
\begin{align*}\varLambda^\gamma{}_\nu(\varLambda^{-1})^\nu{}_\mu dx’^\mu&=\varLambda^\gamma{}_\nu\eta^{\nu\rho}\varLambda^\mu{}_\rho dx’_\mu\\\rightarrow\delta^\gamma{}_\mu dx’^\mu&=\varLambda^\gamma{}_\nu\varLambda^\mu{}_\rho\eta^{\nu\rho}dx’_\mu\\\rightarrow dx’^\gamma&=\varLambda^\gamma{}_\nu\varLambda^\mu{}_\rho\eta^{\nu\rho}dx’_\mu\tag{20}\end{align*}
となる。別の慣性系\(dx’^\gamma\),\(dx’_\mu\)において、計量テンソル\(\eta’^{\gamma\mu}\)を用いた共変ベクトル\(dx’_\mu\)と反変ベクトル\(dx’^\gamma\)の関係式は
\begin{align*}dx’^\gamma=\eta’^{\gamma\mu}dx’_\mu\tag{21}\end{align*}
であるため、式(20)と式(21)を見比べると
\begin{align*}\eta’^{\gamma\mu}=\varLambda^\gamma{}_\nu\varLambda^\mu{}_\rho\eta^{\nu\rho}\tag{22}\end{align*}
の関係があることが分かる。
式(4)より共変ベクトル\(dx^\nu\)はローレンツ変換のパラメーター\(\varLambda\)一つによって変換されていたが、計量テンソル\(\eta^{\nu\rho}\)はローレンツ変換のパラメーター\(\varLambda\)二つによって変換されている。つまり、2重の反変性が計量テンソル\(\eta^{\nu\rho}\)には備われており、このような2階のテンソルを2階の反変テンソルと呼ぶ。一般化すると、2階の反変テンソル\(T^{\rho\gamma}\)は次の関係
\begin{align*}T’^{\mu\nu}&=\varLambda^\mu{}_\rho\varLambda^\nu{}_\gamma T^{\rho\gamma}\tag{23}\end{align*}
を満たし、反変ベクトルでは上付き添え字を用いていたが、二階の反変テンソルでは上付き添え字を二つ用いることにする。
2階の混合テンソル
式(4)と式(5)
\begin{align*}dx’^\mu&=\varLambda^\mu{}_\nu dx^\nu\tag{4}\\dx’_\mu&=dx_\nu(\varLambda^{-1})^\nu{}_\mu\tag{5}\end{align*}
を見ると、反変ベクトル\(dx^\nu\)を反変ベクトル\(dx’^\mu\)のままにしている2階のテンソル\({\varLambda}^\nu{}_\nu\)、または共変ベクトル\(dx_\nu\)を共変ベクトル\(dx’_\mu\)のままにしている2階のテンソル\(({\varLambda}^{-1})^\nu{}_\mu\)は、反変性1つと共変性1つを持っていて、1つの反変性と1つの共変性はお互い打ち消しあっていると解釈できる。このように、反変性と共変性を1つずつ持っている2階のテンソルを2階の混合テンソルという。2階の反変テンソルや2階の共変テンソルと異なり、2階の混合テンソルでは上付き添え字と下付き添え字を用いることにする。
ある慣性系から別の慣性系にローレンツ変換するとき、2階の反変テンソルはローレンツ変換のパラメーター\(\varLambda\)二つ、2階の共変テンソルはローレンツ変換のパラメーター\(\varLambda^{-1}\)二つによって変換されていたため、2階の混合テンソル\(T^\rho{}_{\gamma}\)は\(\varLambda\),\(\varLambda^{-1}\)一つずつによって変換されると予想でき、実際にそのように変換される。
\begin{align*}T’^\mu{}_{\nu}&=\varLambda^\mu{}_\rho T^\rho{}_{\gamma}(\varLambda^{-1})^\gamma{}_\nu\tag{24}\end{align*}
2階のテンソルまとめ
2階の反変テンソル\(T^{\rho\gamma}\)、2階の共変テンソル\(T_{\rho\gamma}\)、2階の混合テンソル\(T^\rho{}_{\gamma}\)の変換性をまとめると、次のようになる。
\begin{align*}T’^{\mu\nu}&=\varLambda^\mu{}_\rho\varLambda^\nu{}_\gamma T^{\rho\gamma}\tag{23}\\T’_{\mu\nu}&=T_{\rho\gamma}(\varLambda^{-1})^\rho{}_\mu(\varLambda^{-1})^\gamma{}_\nu\tag{17}\\T’^\mu{}_{\nu}&=\varLambda^\mu{}_\rho T^\rho{}_{\gamma}(\varLambda^{-1})^\gamma{}_\nu\tag{24}\end{align*}
次ページから…
次ページでは、あるテンソルがどの慣性系においても同じ値をとる定数であるとき、そのテンソルを不変テンソルと呼ぶことをみる。また、クロネッカーのデルタや計量テンソルが不変テンソルであることを確かめる。
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