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本ページでは…
本ページでは、素粒子論では粒子数の変化が起こり、1粒子が従う波動関数\(\phi\)から構成されているクライン-ゴルドン方程式
では粒子数の変化を表現できないことを見る。また、この問題は\(\phi\)を波動関数としてではなく場として解釈する場の量子論によって解決する可能性があることを見る。
前ページまで…
前ページでは、光速\(c\)とディラック定数\(\hbar\)を無次元の\(1\)と置く自然単位系について調べ、自然単位系では質量、時間の逆数、長さの逆数、エネルギー、運動量の次元は全て等しく、どのような物理量でも質量の次元で表せることを確認した。
内容
素粒子論と粒子数
素粒子論では粒子数が度々変化する。例えば、粒子は幾つかの別の粒子に崩壊したり、反粒子と対消滅して新たな光子が生成したりする。また、ある粒子\(A\)から別の粒子\(B\)への相互作用は、相対性理論の因果律を守る(力の伝達が高速を超えない)ために、力を伝達する粒子\(C\)が粒子\(A\)から生成して粒子\(B\)まで飛んで、粒子\(B\)に吸収されていると考えられている。
クライン-ゴルドン方程式の不満点
先ほど述べたような粒子数が変わる現象を以前のページで求めたクライン-ゴルドン方程式
で説明できるだろうか。\(\phi\)を波動関数と解釈している限り、答えは否である。なぜなら、波動関数\(\phi\)の絶対値2乗はその1粒子の確率密度を表し、そのような解釈ではクライン-ゴルドン方程式は1粒子が従う方程式となって、粒子数が変わることはないからである。
場の量子論の出番
上記の問題の解決策として、クライン-ゴルドン方程式に現れる\(\phi\)を1粒子が従う「波動関数」として解釈するのではなく、「場」として解釈すればよい。ここで、場とは時空の各点に物理量を対応させたものであり、波動関数のように1粒子の物理量と制限しないことによって、場では粒子数の変化を表現できるようになる。このように、物理現象を場として解釈する理論を場の量子論という。
場の量子論の懸念点
物理現象を場として解釈する場の量子論に関して、2つの懸念点が存在する。
1つ目は、正準量子化についてである。以前のページでクライン-ゴルドン方程式を正準量子化によって導いた際、次の正準交換関係
を満たす位置演算子\(\hat q_i\)と運動量演算子\(\hat p_i\)を定義して正準量子化を行なったが、これらの演算子は1粒子における演算子であり、粒子数の変化を含む場の理論ではこれらの演算子が使えず、正準量子化が行なえない。つまり、波動関数を場と捉えたクライン-ゴルドン方程式は量子論的な式ではなく古典論的な式である。この問題については、古典論的なクライン-ゴルドン方程式に現れる場を演算子と捉えることで解決することができ、詳細は次のページから述べる。
2つ目は、本当に場の量子論で粒子数の変化を表現できるかという点だが、こちらも問題なく表現することができる。後のページでわかるが、場を演算子と捉える場の量子論では粒子の生成演算子と消滅演算子が現れ、粒子数の変化を表現することができる。
次ページから…
次ページでは、場が従うクライン-ゴルドン方程式
を導くハミルトニアン\(H\)において、構成する場\(\phi\)と場に対する正準共役運動量\(\pi=\partial ^0\phi\)を次の同時刻正準交換関係
を満たす演算子に置き換えることによって行なえる量子化である第2量子化について調べる。