固有値方程式

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本ページでは…

 本ページでは、粒子性と波動性を持つ複素平面波の式

\begin{align*}\Psi&=ae^{i\left(\frac{\boldsymbol p\cdot\boldsymbol q}{\hbar}-\frac{E}{\hbar}t+\delta\right)}\\&=ae^{i\left(\frac{p_xx}{\hbar}+\frac{p_yy}{\hbar}+\frac{p_zz}{\hbar}-\frac{E}{\hbar}t+\delta\right)}\end{align*}

から、運動量\(\boldsymbol p\)、エネルギー\(E\)、座標\(\boldsymbol q\)、ハミルトニアン\(H\)に関する固有値方程式

\begin{align*}\hat {\boldsymbol q}\varPsi&=\boldsymbol q \varPsi\\\hat{\boldsymbol p}\varPsi&=\boldsymbol p\varPsi\\\hat E\varPsi&=E\varPsi\\\hat{H}\varPsi&=H\varPsi\end{align*}

を求める。

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前ページでは、古くから波動だと思われていた光が、粒子性と波動性を示すアインシュタインの式

\begin{align*}E=\hbar\omega\tag{1}\end{align*}

とド・ブロイの式

\begin{align*}\boldsymbol p&=\hbar\boldsymbol k\tag{2}\end{align*}

を満たし、光には粒子と波動の二重性があることを確認した。

 また、波動性のみを示す光の複素平面波の式

\begin{align*}\Psi&=ae^{i\left(\boldsymbol k\cdot\boldsymbol q-\omega t+\delta\right)}\tag{3}\end{align*}

に、光の粒子性と波動性を示す上記の二つの式(1)と(2)を代入し、粒子性と波動性をもつ光の複素平面波の式

\begin{align*}\Psi&=ae^{i\left(\frac{\boldsymbol p\cdot\boldsymbol q}{\hbar}-\frac{E}{\hbar}t+\delta\right)}\\&=ae^{i\left(\frac{p_xx}{\hbar}+\frac{p_yy}{\hbar}+\frac{p_zz}{\hbar}-\frac{E}{\hbar}t+\delta\right)}\tag{4}\end{align*}

を導出した。この式は光のみならず物質も満たし、粒子性と波動性を現象を物質波と呼んだ。

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内容

演算子と固有値方程式

演算子とは、ある関数・ベクトル\(A\)を別の関数・ベクトル\(B\)に移す写像(作用素や関数、変換も同義語)を表す記号\(\hat{\mathcal O}\)のことをいい、このような写像を次のように表す。

\begin{align*}B=\hat{\mathcal O}A\tag{5}\end{align*}

例えば、ある関数\(A\)を微分したり、あるベクトル\(A\)に行列を掛けたりすると、別の関数・ベクトル\(B\)に変わるため、微分記号や行列は演算子\(\hat{\mathcal O}\)である。

 様々な関数・ベクトル\(A\)の中で、演算子\(\hat{\mathcal O}\)を作用させて現れた新しい関数・ベクトル\(B\)が元の関数・ベクトル\(A\)のスカラー倍(\(C\)倍)になる場合があり、この写像を式で表すと

\begin{align*}\hat{\mathcal O}A=CA\tag{6}\end{align*}

となる。このような特殊の場合、関数・ベクトル\(A\)を固有関数固有ベクトル、スカラー\(C\)を固有値、方程式(6)を固有値方程式と呼ぶ。

運動量演算子の導出

 平面波において、波数ベクトル\(\boldsymbol k\)と角運動量\(\omega\)は座標によらず一定のため、運動量\(\boldsymbol p\)とエネルギー\(E\)は空間座標に依存していない。そのため、粒子性と波動性を持つ複素平面波の式(4)を空間座標で偏微分してみる。

\begin{align*}\left(\frac{\partial}{\partial x},\frac{\partial }{\partial y},\frac{\partial}{\partial z}\right)\varPsi&=\left(\frac{i}{\hbar}p_{\scriptsize x},\frac{i}{\hbar}p_{\scriptsize y},\frac{i}{\hbar}p_{\scriptsize z}\right)\varPsi\\\rightarrow\nabla \varPsi&=\frac{i}{\hbar}\boldsymbol p\varPsi\\\rightarrow-i\hbar\nabla \varPsi&=\boldsymbol p\varPsi\tag{7}\end{align*}

最後の行の等号より、複素平面波\(\varPsi\)に\(-i\hbar\nabla\)を作用させると運動量\(\boldsymbol p\)が現れることが分かる。\(-i\hbar\nabla\)は複素平面波\(\varPsi\)に作用すると運動量を固有値として生み出す演算子であるため、運動量演算子\(\hat{\boldsymbol p}\)と呼ぶ。

\begin{align*}-i\hbar\nabla =\hat {\boldsymbol p}\tag{8}\end{align*}

運動量演算子\(\hat {\boldsymbol p}\)を用いると、式(7)を次のようにシンプルな固有値方程式で書くことができる。

\begin{align*}\hat {\boldsymbol p} \varPsi=\boldsymbol p\varPsi\tag{9}\end{align*}

この固有値方程式より、複素平面波\(\varPsi\)に作用すれば、運動量\(\boldsymbol p\)と運動量演算子\(\hat{\boldsymbol p}\)は等価であることが分かる。この固有値方程式は複素平面波から導いたが、複素平面波以外の複素波(球面波など)でも満たす。

エネルギー演算子の導出

 平面波において、波数ベクトル\(\boldsymbol k\)と角運動量\(\omega\)は時間によらず一定のため、運動量\(\boldsymbol p\)とエネルギー\(E\)は時間に依存していない。そのため、次に複素平面波の式(4)を時間座標\(t\)で偏微分してみる。

\begin{align*}\frac{\partial}{\partial t}\varPsi&=-\frac{i}{\hbar}E\varPsi\\\rightarrow i\hbar\frac{\partial}{\partial t}\varPsi&=E\varPsi\tag{10}\end{align*}

最後の行の等号より、複素平面波\(\varPsi\)に\(i\hbar\frac{\partial}{\partial t}\)を作用させると今度はエネルギー\(E\)が現れることが分かる。\(i\hbar\frac{\partial}{\partial t}\)は複素平面波\(\varPsi\)に作用すると固有値としてエネルギーを生み出す演算子であるため、エネルギー演算子\(\hat{E}\)と呼ぶ。

\begin{align*}i\hbar\frac{\partial}{\partial t}&=\hat E\tag{11}\end{align*}

エネルギー演算子\(\hat E\)を用いると、式(10)を次のようにシンプルな固有値方程式で書くことができる。

\begin{align*}\hat {E} \varPsi=E\varPsi\tag{12}\end{align*}

この固有値方程式より、複素平面波\(\varPsi\)に作用すれば、エネルギー\(E\)とエネルギー演算子\(\hat{E}\)は等価であることが分かる。この固有値方程式は複素平面波から導いたが、複素平面波以外の複素波(球面波など)でも満たす。

位置演算子について

 式(9)のように運動量\(\boldsymbol p\)と運動量演算子 \(\hat {\boldsymbol p}\)には特別な関係が現れたが、座標\(\boldsymbol q\)には特別な関係は現れなかった。そこで、位置演算子と座標は等しいと考える。

\begin{align*}\hat {\boldsymbol q}=\boldsymbol q\tag{13}\end{align*}

すると、座標の固有値方程式は次の形になる。

\begin{align*}\hat {\boldsymbol q} \varPsi=\boldsymbol q\varPsi\tag{14}\end{align*}

ハミルトン演算子の導出

 今、運動量\(\boldsymbol p\)と座標\(\boldsymbol q\)、エネルギー\(E\)に関する演算子と固有値方程式を求めたが、もうひとつの物理量の演算子と固有値方程式も導出するすることができる。その物理量とは、ハミルトニアン\(H\)である。ハミルトニアンが演算子になったものをハミルトン演算子(または、単にハミルトニアン)といい、固有値方程式は

\begin{align*}\hat {H} \varPsi=H\varPsi\tag{15}\end{align*}

となる。

 ではなぜ、この固有値方程式(15)が成り立つのだろうか。それは、右辺のハミルトニアン\(H(q, p)\)は座標\(\boldsymbol q\)と運動量\( \boldsymbol p\)から表すことができるからである。複素平面波\(\varPsi\)にハミルトニアン\(H\)が掛かっているため、運動量\( \boldsymbol p\)と運動量演算子\(\hat {\boldsymbol p}\)の関係式(9)を用いると、ハミルトニアン\(H\)を構成している運動量\(\boldsymbol p\)を運動量演算子\(\hat {\boldsymbol p}\)に変換でき、ハミルトニアン\(H\)を表すハミルトン演算子\(\hat H\)が得られ、左辺が導かれる。

 具体的な例として、保存力を受けているハミルトニアン

\begin{align*}H=\frac{\boldsymbol p^2}{2m}+V( q)\tag{16}\end{align*}

を見てみる(\(\boldsymbol q\)は座標\(q\)から構成される位置ベクトルを表す)。固有値方程式(15)に代入して、関係式(9)を用いると、

\begin{align*}\hat {H} \varPsi&=\left[\frac{\boldsymbol p^2}{2m}+V( q)\right]\varPsi\\&=\frac{1}{2m}(\boldsymbol p\varPsi)\cdot\boldsymbol p+V( q)\varPsi\\&=\frac{1}{2m}(\hat{\boldsymbol p}\Psi)\cdot\boldsymbol p+V( q)\varPsi\\&=\frac{1}{2m}\hat{\boldsymbol p}\cdot(\boldsymbol p\varPsi)+V( q)\varPsi\\&=\frac{1}{2m}\hat{\boldsymbol p}\cdot(\hat{\boldsymbol p}\varPsi)+V( q)\varPsi\\&=\left[\frac{\hat{\boldsymbol p}^2}{2m}+V( q)\right]\varPsi\tag{17}\end{align*}

の関係が得られ、ハミルトニアン\(H\)を演算子\(\hat H\)にしたいときには、ハミルトニアン\(H(q, p)\)の運動量\(\boldsymbol p\)を単に運動量演算子\(\hat {\boldsymbol p}=-i\hbar\nabla\)に置き換えれば良いことが分かる。具体的なハミルトン演算子の形は、\(\hat{\boldsymbol p}=-i\hbar\boldsymbol\nabla\)を用いると、

\begin{align*}\hat {H} &=\left[\frac{\hat{\boldsymbol p}^2}{2m}+V( q)\right]\\&=\left[-\frac{\hbar^2}{2m}\nabla\cdot\nabla+V( q)\right]\\&=\left[-\frac{\hbar^2}{2m}\Delta+V( q)\right]\tag{18}\end{align*}

と得られる。

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次ページでは、古典物理量の演算子\(\hat f\)は対応する古典物理量\(f\)の運動量\(\boldsymbol p\)と座標\(\boldsymbol q\)を運動量演算子\(-ih\boldsymbol\nabla\)と位置演算子\(\boldsymbol q\)に置き換えることによって得ることができることを確認する。また、その演算子\(\hat f\)を波動関数\(\varPsi\)に作用させて固有値方程式を求める。


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