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本ページでは…
本ページでは、実スカラー場の正準共役運動量\(\pi\)
\begin{align}\pi=\frac{\partial\mathscr L}{\partial\partial_0\phi}=\partial^0\phi\end{align}
を求め、ルジャンドル変換
\begin{align*}H&=\int d\boldsymbol x^3\ (\partial^0\phi\pi-\mathscr L)\end{align*}
によって実スカラー場のハミルトニアン
\begin{align*}H&=\int d\boldsymbol x^3\ ((\partial^0\phi)\pi-\mathscr L)\\&=\int d\boldsymbol x^3\ \left(\frac{1}{2}\pi^2+\frac{1}{2}(\nabla\phi)^2+\frac{m^2}{2}\phi^2+\frac{\lambda}{4!}\phi^4\right)\end{align*}
を求める。
前ページまで…
前ページでは、クライン-ゴルドン方程式の知識を使わず、クライン-ゴルドン方程式を導くラグランジアン密度を実スカラー場の次元解析から求めた。
内容
実スカラー場の正準共役運動量
場の理論における正準共役運動量\(\pi\)は
\begin{align*}\pi=\frac{\partial\mathscr L}{\partial\partial_0\phi}\tag{1}\end{align*}
であった(以前のページを参照)ため、実スカラー場のラグランジアン密度\(\mathscr L\)
\begin{align}\mathscr{L}=\frac{1}{2}\partial_\mu\phi\partial^\mu\phi-\frac{m^2}{2}\phi^2-\frac{\lambda}{4!}\phi^4\tag{2}\end{align}
を代入すると
\begin{align}\pi=\frac{\partial\mathscr L}{\partial\partial_0\phi}=\partial^0\phi\tag{3}\end{align}
となり、実スカラー場\(\phi\)の正準共役運動量\(\pi\)が得られる。
ルジャンドル変換
場の理論におけるルジャンドル変換は
\begin{align*}H&=\int d\boldsymbol x^3\ ((\partial^0\phi)\pi-\mathscr L)\tag{4}\end{align*}
であった(以前のページを参照)ため、実スカラー場のラグランジアン密度\(\mathscr L\)を代入すると
\begin{align*}H&=\int d\boldsymbol x^3\ ((\partial^0\phi)\pi-\mathscr L)\\&=\int d\boldsymbol x^3\ \left(\frac{1}{2}\pi^2+\frac{1}{2}(\nabla\phi)^2+\frac{m^2}{2}\phi^2+\frac{\lambda}{4!}\phi^4\right)\tag{5}\end{align*}
となり、実スカラー場のハミルトニアン\(H\)が得られる。また、ハミルトニアン\(H\)とハミルトニアン密度\(\mathscr H\)の関係は
\begin{align*}H=\int dx^3\ \mathscr H\tag{6}\end{align*}
であったため、ハミルトニアン密度\(\mathscr H\)は
\begin{align*}\mathscr H=\frac{1}{2}\pi^2+\frac{1}{2}(\nabla\phi)^2+\frac{m^2}{2}\phi^2+\frac{\lambda}{4!}\phi^4\tag{7}\end{align*}
となることが分かる。
クライン-ゴルドン方程式の導出
場の理論における正準方程式は
\begin{align*}\frac{\partial \mathscr H}{\partial \phi(t,\boldsymbol y)}-\partial_i\frac{\partial \mathscr H}{\partial \partial_i\phi(t,\boldsymbol y)}&=-\partial^0\pi(t,\boldsymbol y)\tag{8}\\\frac{\partial \mathscr H}{\partial \pi(t,\boldsymbol y)}&=\partial^0\phi(t,\boldsymbol y)\tag{9}\end{align*}
であった(以前のページを参照、\(i=1,2,3\))ため、この2式にハミルトニアン密度\(\mathscr H\)を代入すると
\begin{align*}m^2\phi+\frac{\lambda}{3!}\phi^3-\nabla^2\phi&=-\partial^0\pi\tag{10}\\\pi&=\partial^0\phi\tag{11}\end{align*}
となり、式(10)に式(11)を大丈夫すると
\begin{align}\partial_\mu\partial^\mu\phi+m^2\phi+\frac{\lambda}{3!}\phi^3=0\tag{12}\end{align}
となって、クライン-ゴルドン方程式が得られる。
負のエネルギーについて
クライン-ゴルドン方程式の解\(\phi\)を1粒子波動関数と捉えていた以前のページでは負のエネルギー解が存在することを確認し、別のページでは負のエネルギー解の解釈が難しいことを見た。一方、場の理論におけるハミルトニアン\(H\)はラグランジアン密度\(\mathscr L\)から求めたが、ラグランジアン密度\(\mathscr L\)には不定性があって運動項とポテンシャル項が正になるように選んだ(以前のページを参照)ため、ハミルトニアン\(H\)は正となった。実際に、本ページで求めたハミルトニアン\(H\)
\begin{align*}H&=\int d\boldsymbol x^3\ \left(\frac{1}{2}\pi^2+\frac{1}{2}(\nabla\phi)^2+\frac{m^2}{2}\phi^2+\frac{\lambda}{4!}\phi^4\right)\tag{5}\end{align*}
は全ての項が偶数乗であるため、正となっている。
この違いについて考えてみる。\(\phi\)を1粒子波動関数と捉えたクライン-ゴルドン方程式で負のエネルギー解が現れた理由は、クライン-ゴルドン方程式の元となったアインシュタインの式
\begin{align*}E^2=m^2+\boldsymbol k^2\tag{13}\end{align*}
に負のエネルギー解が含まれているからであった。一方、場の理論ではクライン-ゴルドン方程式の元となった式はアインシュタインの式ではなくラグランジアン密度\(\mathscr L\)であり、ラグランジアン密度には不定性があったため、負のエネルギーを排除できた。
1つ気になる点について述べておく。ラグランジアン密度\(\mathscr L\)から求めたクライン-ゴルドン方程式は、アインシュタインの式から求めたクライン-ゴルドン方程式と同じである。そのため、以前のページで求めた負のエネルギー解における波動関数は、場の理論のクライン-ゴルドン方程式においても解となるはずだが、このことはどのように解釈すればいいのだろうか。この答えについては、第2量子化によって実スカラー場を生成消滅演算子で表した後のページで明らかになる。
次ページから…
次ページでは、クライン-ゴルドン方程式を導くハミルトニアン\(H\)
\begin{align*}H&=\int d\boldsymbol x^3\ \left(\frac{1}{2}\pi^2+\frac{1}{2}(\nabla\phi)^2+\frac{m^2}{2}\phi^2+\frac{\lambda}{4!}\phi^4\right)\end{align*}
を第2量子化することによって、演算子となったハミルトニアン\(\hat H\)
\begin{align*}\hat H&=\int d\boldsymbol x^3\ \left(\frac{1}{2}\hat\pi^2+\frac{1}{2}(\nabla\hat\phi)^2+\frac{m^2}{2}\hat\phi^2+\frac{\lambda}{4!}\hat\phi^4\right)\end{align*}
を求める。
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