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時間に依存しないシュレーディンガー方程式

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本ページでは…

 本ページでは、ハミルトニアン\(H\)が時間に依存しないとき、エネルギー\(E\)及びハミルトニアン\(H\)に関する固有値方程式から、時間に依存しないシュレーディンガー方程式

\begin{align*}\hat H\psi( q)=E\psi( q)\end{align*}

を求める。

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以前のページで、エネルギー\(E\)とハミルトニアン\(H\)に関する固有値方程式

\begin{align*}i\hbar\frac{\partial }{\partial t}\varPsi=E\varPsi\tag{1}\\\hat H\varPsi=H\varPsi\tag{2}\end{align*}

から、時間に依存するシュレーディンガー方程式

\begin{align*}i\hbar\frac{\partial}{\partial t} \varPsi&=\hat H\varPsi\\&=\left[-\frac{\hbar^2}{2m}\Delta+V( q)\right]\varPsi\tag{3}\end{align*}

を導いた。

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内容

時間に依存しないシュレーディンガー方程式

 エネルギー\(E\)とハミルトニアン\(H\)は等しいため、エネルギーに関する固有値方程式(1)を満たす固有関数\(\varPsi\)とハミルトニアンに関する固有値方程式(2)を満たす固有関数\(\varPsi\)は共通していると考えられる。

 ハミルトニアン\(H\)が時間に依存しないとき、エネルギー\(E\)及びハミルトニアン\(H\)に関する固有値方程式を満たす固有関数\(\varPsi\)は、次のように「座標に依存する部分\(\psi( q\))」と「時間に依存する部分\(\psi(t)\)」とに分けられる場合を考えてみる。

\begin{align*}\varPsi( q,t)&=\psi( q)\psi(t)\tag{4}\end{align*}

この形の波動関数は特殊なものだが、多くの現象で見られる形である。

 この式(4)をエネルギーに関する固有値方程式(1)に代入すると、

\begin{align*}i\hbar\frac{\partial }{\partial t}\left(\psi( q)\psi(t)\right)&=E\psi( q)\psi(t)\\\rightarrow\psi(q)i\hbar\frac{\partial }{\partial t}\psi(t)&=E\psi( q)\psi(t)\\\rightarrow i\hbar\frac{\partial }{\partial t}\psi(t)&=E\psi(t)\tag{5}\end{align*}

となり、変数が時間\(t\)だけで表すことができる。一方、式(4)をハミルトニアンに関する固有値方程式(2)に代入すると、

\begin{align*}\hat H\left(\psi( q)\psi(t)\right)&=H\psi( q)\psi(t)\\\rightarrow\psi(t)\hat H\psi(q)&=H\psi( t)\psi(q)\\\rightarrow \hat H\psi(q)&=H\psi(q)\tag{6}\end{align*}

となり、変数が座標\(q\)だけで表すことができる。式(6)において、ハミルトニアン\(H\)とエネルギー\(E\)は等しいため

\begin{align*}\hat H\psi(q)&=E\psi(q)\tag{7}\end{align*}

と表すことができ、この式を時間に依存しないシュレーディンガー方程式と呼ぶ。

 通常、ハミルトニアン\(\hat H\)には具体的な形を入れるため、例えばハミルトニアンの形が

\begin{align*}\hat H =\left[-\frac{\hbar^2}{2m}\Delta+V( q)\right]\tag{8}\end{align*}

の場合、時間に依存しないシュレーディンガー方程式に代入すると

\begin{align*}\left[-\frac{\hbar^2}{2m}\Delta+V( q)\right]\psi( q)=E\psi( q)\tag{9}\end{align*}

となる。

導出の際の注意点

 時間に依存しないシュレーディンガー方程式を導く際に、時間に依存するシュレーディンガー方程式の解\(\varPsi\)が「座標に依存する部分\(\psi( q\))」と「時間に依存する部分\(\psi(t)\)」とに分けられると仮定して変数分離から導出する記述がよく見かけられる。

 しかし、その導出方法は幾つかの誤解を招く。例えば、時間に依存するシュレーディンガー方程式の解は系の状態を表すが、時間に依存しないシュレーディンガー方程式の解は固有状態を表すため、時間に依存しないシュレーディンガー方程式を導くときは固有値方程式から導く方が妥当である。

 また、後のページで述べるが、時間に依存するシュレーディンガーの解である系の状態は固有関数(固有状態)の一次結合で表されるため、通常、系の状態は1つの固有関数(固有状態)だけから構成されるのではなく、複数の固有関数(固有状態)から構成される。

エネルギーの固有関数

 変数が時間\(t\)だけで表される式(5)はすぐに解くことができ、\(\psi(t)\)は

\begin{align*}\psi(t)=e^{-i\frac{E}{\hbar}t}\tag{10}\end{align*}

と求まるから、エネルギー(またはハミルトニアン)が時間に依存せず、固有関数\(\varPsi\)が「座標に依存する部分\(\psi( q\))」と「時間に依存する部分\(\psi(t)\)」に分けられるとき、固有関数\(\varPsi\)は

\begin{align*}\varPsi( q,t)=\psi( q)e^{-i\frac{E}{\hbar}t}\tag{11}\end{align*}

となる。\(e^{-i\frac{E}{\hbar}t}\)は周期関数であるため、波動関数\(\psi(q)\)の絶対値\(\vert\psi( q)\vert\)は固有関数\(\Psi( q,t)\)の振幅に相当する。

解は定常波になるか

 式(11)の時間依存の部分は

\begin{align*}e^{-i \frac{E}{\hbar}t}&=\cos\left(-\frac{E}{\hbar}t\right)+i\sin\left(-\frac{E}{\hbar}t\right)\\&=\cos\left(\frac{E}{\hbar}t\right)+i\cos\left(\frac{E}{\hbar}t+\frac{\pi}{2}\right)\tag{12}\end{align*}

となるため、固有関数\(\varPsi\)は

\begin{align*}\varPsi&=\psi( q)\cos\left(\frac{E}{\hbar}t\right)+i\psi( q)\cos\left(\frac{E}{\hbar}t+\frac{\pi}{2}\right)\tag{13}\end{align*}

となる。式(13)の1項目と2項目はそれぞれ定常波の式の形

\begin{align*}A( q)\cos \omega t\tag{14}\end{align*}

をしているため、それらを足し合わせた固有関数\(\varPsi( q,t)\)も、定常波になると思いたくなる。しかし、必ず定常波になる訳ではなく、例えば波動関数\(\psi( q)\)が

\begin{align*}\psi( q)=e^{i\frac{\boldsymbol p\cdot\boldsymbol q}{\hbar}}\tag{15}\end{align*}

のときは、固有関数\(\varPsi( q,t)\)は

\begin{align*}\varPsi( q,t)=e^{i\left(\frac{\boldsymbol p\cdot\boldsymbol q}{\hbar}-\frac{E}{\hbar}t\right)}\tag{16}\end{align*}

となり、一方向に進む複素平面波の式となる。ポテンシャルが一定の空間を運動する粒子のシュレーディンガー方程式を解くと固有関数\(\varPsi\)が複素平面波となり、もちろん、複素平面波は定常波ではない。

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次ページから⋯

次ページでは、定常波の定義を確認し、実数平面波から構成される定常波と複素平面波から構成される定常波を導出する。

また、座標依存部分と時間依存部分との積で波動の式が与えられたとき、その式が定常波を表すかを確認する方法を紹介する。


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