粒子と波動の二重性

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本ページでは…

 本ページでは、古くから波動だと思われていた光が、粒子性と波動性を示すアインシュタインの式

\begin{align*}E=\hbar\omega\tag{1}\end{align*}

とド・ブロイの式

\begin{align*}\boldsymbol p&=\hbar\boldsymbol k\tag{2}\end{align*}

を満たし、光には粒子と波動の二重性があることを確認する。

 また、波動性のみを示す光の複素平面波の式

\begin{align*}\Psi&=ae^{i\left(\boldsymbol k\cdot\boldsymbol q-\omega t+\delta\right)}\tag{3}\end{align*}

に、光の粒子性と波動性を示す上記の二つの式(1)と(2)を代入し、粒子性と波動性をもつ光の複素平面波の式

\begin{align*}\Psi&=ae^{i\left(\frac{\boldsymbol p\cdot\boldsymbol q}{\hbar}-\frac{E}{\hbar}t+\delta\right)}\\&=ae^{i\left(\frac{p_xx}{\hbar}+\frac{p_yy}{\hbar}+\frac{p_zz}{\hbar}-\frac{E}{\hbar}t+\delta\right)}\tag{4}\end{align*}

を導出する。この式は光のみならず物質も満たし、粒子性と波動性を現象を物質波と呼ぶ。

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前ページでは、振幅が\(a\)で、波数ベクトルが\(\boldsymbol k\)、角振動数が\(\omega\)、位相項が\(\delta\)の3次元複素平面波

\begin{align*}\Psi&=ae^{i\left(\boldsymbol k\cdot\boldsymbol q-\omega t+\delta\right)}\tag{3}\end{align*}

を導いた。そして、この複素平面波も次の波動方程式を満たした。

\begin{align*}\frac{\partial^2 \Psi}{\partial t^2}&=u^2\Delta\Psi\tag{5}\end{align*}

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内容

光は粒子か波動か?

 19世紀までに見つかった物理現象のうち、光の干渉、回折、偏光、電磁波の伝播などは光を波動としたときに説明できる現象である。一方、光の反射、屈折などは光を粒子としたときに説明できる。光が「波動であるか」「粒子であるか」の議論は古くから行われてきたが、19世紀になると光は波動であるとの考えが主流になったいた。

アインシュタインの式の発見

 しかし、20世紀になると光を粒子としたときに説明できるプランクの法則や光電効果が見つかった。光を波動であると考えると、光のエネルギー\(E\)は振幅\(a\)の二乗に比例し、振幅は連続的な値を取れるため、エネルギー\(E\)も連続的な値をとることができる。一方、これらの現象では違った。実際には、光は離散的なエネルギーを持ち、そのエネルギーは光の角振動数\(\omega\)にディラック定数\(\hbar\)を掛けた値\(\hbar\omega\)の整数倍であった。つまり、光は粒子のように数えることができ、一粒の光が持つエネルギー\(E\)は

\begin{align*}E=\hbar\omega\tag{1}\end{align*}

と考えられる。この式をアインシュタインの式と呼ぶ。

ド・ブロイの式の導出

 相対性理論におけるエネルギー\(E\)と運動量\(\boldsymbol p\)の関係式

\begin{align*}E^2=m^2c^4+\boldsymbol p^2c^2\tag{6}\end{align*}

を光について考えてみる。光の質量\(m\)はゼロであるから上式は

\begin{align*}E^2=\boldsymbol p^2c^2\tag{7}\end{align*}

となり、アインシュタインの式(1)を代入すると

\begin{align*}\hbar^2\omega^2&=\boldsymbol p^2c^2\\\rightarrow \boldsymbol p^2&=\frac{\hbar^2\omega^2}{c^2}=\hbar^2 \boldsymbol k^2\\\rightarrow \boldsymbol p&=\hbar\boldsymbol k\tag{2}\end{align*}

となり、ド・ブロイの式が得られる。

粒子と波動の二重性

 以上の式(1)と(2)より、波動と考えられた光にも、粒子のようにエネルギー\(E\)や運動量\(\boldsymbol p\)を持つことがわかる。そして、式(1)と式(2)の左辺は「粒子性を表すエネルギー\(E\)と運動量\(\boldsymbol p\)」から構成され、右辺は「波動性を表す角振動数\(\omega\)と波数ベクトル\(\boldsymbol k\)」から構成されていることから、式(1)と式(2)は粒子性と波動性を結びつけていることが分かる。

光のように粒子性と波動性を併せ持つ性質を、粒子と波動の二重性とよぶ。この言葉の解釈としては、「粒子でもあり波動でもある」は間違いであり、「粒子のような性質があり、波動のような性質もある」の方が正しい。「粒子と波動の二重性」という言葉は、人間が理解できない量子スケールの現象を、人間が理解できるマクロスケールの現象の単語である「粒子」や「波動」を用いて説明しただけである。そのため、量子論を議論するときはマクロスケールの現象の単語を用いて「実際の性質は波動であるか?粒子であるか?」と議論するのではなく、式(1)や式(2)そのものを見るべきである。

二重性を持つ複素平面波の導出

 複素平面波の式(3)は波動性のみを示すが、ここに光の粒子性と波動性を示すアインシュタインの式(1)とド-ブロイの式(2)を用いると、粒子性と波動性をもつ光の複素平面波の式が得られる。

\begin{align*}\varPsi&=ae^{i\left(\frac{\boldsymbol p\cdot\boldsymbol q}{\hbar}-\frac{E}{\hbar}t+\delta\right)}\\&=ae^{i\left(\frac{p_xx}{\hbar}+\frac{p_yy}{\hbar}+\frac{p_zz}{\hbar}-\frac{E}{\hbar}t+\delta\right)}\tag{4}\end{align*}

物質波とは

 波動だと思われていた光には粒子性と波動性があることが分かったが、そうすると、粒子である物質にも粒子性と波動性があると予想したくなる。実際に、電子線回折や中性子線回折などで、粒子と思われていた物質にも波動性があることが確認された。このような現象を物質波(またはド・ブロイ波)とよび、物質も複素平面波の式(4)を満たすと考えられる。

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次ページから⋯

次ページでは、粒子性と波動性をもつ複素平面波の式から座標\(q\)、運動量\(p\)、エネルギー\(E\)、ハミルトニアン\(H\)に関する固有値方程式を求める。


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