縮重状態の分離

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 本ページでは、ある系の状態\(\varPsi\)において、古典物理量\(F\),\(G\)の演算子\(\hat F\),\(\hat G\)が可換で、\(\hat F\)の固有値\(f_i\)が縮重しているとき、固有値\(f_i\)に対応する固有関数\(\psi_{ij}^f\)の適当な1次結合をとることによって、演算子\(\hat F\)および\(\hat G\)に共通な固有関数系\(\psi_{ij}^{f’}\)を作ることができることを確認する。

 また、このように、演算子\(\hat F\)の固有値\(f_i\)では縮重した状態であっても、\(\hat F\)と可換な演算子\(\hat G\)を用いることによって縮重状態を分離することができることを見る。

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前ページでは、ある系の状態\(\varPsi\)において、古典物理量\(F\),\(G\)の演算子\(\hat F\),\(\hat G\)が可換で、縮重状態ではないとき、演算子\(\hat F\),\(\hat G\)に共通の固有関数である同時固有関数が存在すること、またその逆が成り立つことを確認した。

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内容

縮重状態の分離

 ある系の状態\(\varPsi\)において、古典物理量の演算子\(\hat F\),\(\hat G\)が可換であっても、\(\hat F\)の固有値\(f_i\)が縮重しているときは、固有値\(f_i\)に対応する固有関数\(\psi_{ij}^f\)が演算子\(\hat G\)の固有関数とは限らない。

 ただし、固有関数\(\psi_{ij}^f\)の適当な1次結合をとることによって、演算子\(\hat F\)および\(\hat G\)に共通な固有関数系\(\psi_{ij}^{f’}\)を作ることができる。このように、演算子\(\hat F\)の固有値\(f_i\)では縮重した状態であっても、\(\hat F\)と可換な演算子\(\hat G\)を用いることによって縮重状態を分離することができる。

\begin{align*}f_i\leftrightarrow\left\{\begin{array}{c}\psi_{i1}^{f’}\leftrightarrow g_{i1}\\\psi_{i2}^{f’}\leftrightarrow g_{i2}\\\vdots\\\psi_{in}^{f’}\leftrightarrow g_{in}\end{array}\right.\end{align*}

分離できることの証明

 固有値\(f_i\)が\(n\)重に縮重しているとき、固有値\(f_i\)に対応する固有関数\(\psi_{i1}^f\),\(\psi_{i2}^f\),\(\cdots\),\(\psi_{in}^f\)が存在し、固有値方程式は

\begin{align*}\hat F\psi_{ij}^f=f_i\psi_{ij}^f\ \ \ j=1,2,\cdots,n\tag{1}\end{align*}

となる。式(1)の両辺に左から\(\hat G\)を作用させると

\begin{align*}\hat G\hat F\psi_{ij}^f=\hat Gf_i\psi_{ij}^f\ \ \ j=1,2,\cdots,n\tag{2}\end{align*}

となり、演算子\(\hat F\)と\(\hat G\)は可換であるから

\begin{align*}\hat F(\hat G\psi_{ij}^f)=f_i(\hat G\psi_{ij}^f)\ \ \ j=1,2,\cdots,n\tag{3}\end{align*}

と書ける。この式(3)より、関数\(\hat G\psi_{ij}^f\)は固有値\(f_i\)に対応する固有関数であることが分かる。そして、固有値\(f_i\)が縮重しているとき、固有値\(f_i\)に対応する固有関数は\(\psi_{ij}^f\)の1次結合で表されるため

\begin{align*}\hat G\psi_{ij}^f=\sum_{k=1}^nc_{jk}\psi_{ik}^f\tag{4}\end{align*}

となる。\(j=1,2,\cdots,n\)における式(4)を行列で表すと、

\begin{align*}\boldsymbol C=\left(\begin{array}{c}c_{11}&c_{12}&\cdots&c_{1n}\\c_{21}&c_{22}&\cdots&c_{2n}\\\vdots&\vdots&\ddots&\\c_{n1}&c_{n2}&&c_{nn}\end{array}\right)\tag{5}\end{align*}

を用いて

\begin{align*}\left(\begin{array}{c}\hat G\psi_{i1}^f\\\hat G\psi_{i2}^f\\\vdots\\\hat G\psi_{in}^f\end{array}\right)&=\boldsymbol C\left(\begin{array}{c}\psi_{i1}^f\\\psi_{i2}^f\\\vdots\\\psi_{in}^f\end{array}\right)\tag{6}\end{align*}

となる。行列\(\boldsymbol C\)を次のように対角化

\begin{align*}\boldsymbol A\boldsymbol C\boldsymbol A^{-1}=\left(\begin{array}{c}g_{i1}&0&\cdots&0\\0&g_{i2}&\cdots&0\\\vdots&\vdots&\ddots&\\0&0&&g_{in}\end{array}\right)\tag{7}\end{align*}

できる行列\(\boldsymbol A\)

\begin{align*}\boldsymbol A=\left(\begin{array}{c}a_{11}&a_{12}&\cdots&a_{1n}\\a_{21}&a_{22}&\cdots&a_{2n}\\\vdots&\vdots&\ddots&\\a_{n1}&a_{n2}&&a_{nn}\end{array}\right)\tag{8}\end{align*}

を式(6)の両辺の左から掛けると

\begin{align*}\boldsymbol A\left(\begin{array}{c}\hat G\psi_{i1}^f\\\hat G\psi_{i2}^f\\\vdots\\\hat G\psi_{in}^f\end{array}\right)&=\boldsymbol A\boldsymbol C\boldsymbol A^{-1}\boldsymbol A\left(\begin{array}{c}\psi_{i1}^f\\\psi_{i2}^f\\\vdots\\\psi_{in}^f\end{array}\right)\\&=\left(\begin{array}{c}g_{i1}&0&\cdots&0\\0&g_{i2}&\cdots&0\\\vdots&\vdots&\ddots&\\0&0&&g_{in}\end{array}\right)\boldsymbol A\left(\begin{array}{c}\psi_{i1}^f\\\psi_{i2}^f\\\vdots\\\psi_{in}^f\end{array}\right)\tag{9}\end{align*}

となり、行列で表されている式(9)の\(j\)行に注目すると

\begin{align*}\sum_{k=1}^na_{i,jk}\hat G\psi_{ik}^f&=g_{j}\sum_{k=1}^na_{jk}\psi_{ik}^f\\\rightarrow\hat G\sum_{k=1}^na_{jk}\psi_{ik}^f&=g_{ij}\sum_{k=1}^na_{jk}\psi_{ik}^f\tag{10}\end{align*}

と書ける。固有値\(f_i\)に対応する固有関数\(\psi_{ij}^{f’}\)を新たに、\(\psi_{ij}^f\)の1次結合

\begin{align*}\psi_{ij}^{f’}=\sum_{k=1}^na_{jk}\psi_{ik}^f\tag{11}\end{align*}

で作ると、式(10)は

\begin{align*}\hat G\psi_{ij}^{f’}=g_{ij}\psi_{ij}^{f’}\tag{12}\end{align*}

と書ける。この式より、固有関数\(\psi_{ij}^{f’}\)は演算子\(\hat F\)および\(\hat G\)に共通の固有関数であり、確定値として\(f_{i}\)および\(g_{ij}\)が得られることが分かる。


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