同時固有関数

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本ページでは…

 本ページでは、ある系の状態\(\varPsi\)において、古典物理量\(F\),\(G\)の演算子\(\hat F\),\(\hat G\)が可換で、縮重状態ではないとき、演算子\(\hat F\),\(\hat G\)に共通の固有関数である同時固有関数が存在すること、またその逆が成り立つことを確認する。

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前ページまで⋯

前ページでは、ある系の状態\(\varPsi\)において、古典物理量\(F\)の測定を何度も行なって得られる測定値の平均値を期待値\(〈F〉\)といい、波動関数と演算子\(\hat F\)を用いて

\begin{align*}〈F〉=\int dv\ \varPsi^*\hat F\varPsi \end{align*}

と表されることを確認した。

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内容

同時固有関数について

 ある系の状態\(\varPsi\)において、古典物理量\(F\),\(G\)の演算子\(\hat F\),\(\hat G\)が可換

\begin{align*}[\hat F,\hat G]&=\hat F\hat G-\hat G\hat F\\&=0\tag{1}\end{align*}

であるとき、\(\hat F\),\(\hat G\)に共通な固有関数系が存在する、つまり、古典物理量\(F\)と\(G\)は同時に確定値をとることができる。\(\hat F\),\(\hat G\)に共通な固有関数を同時固有関数という。

 また、逆に古典物理量\(F\)と\(G\)が同時に確定値をとるとき、古典物理量\(F\),\(G\)の演算子\(\hat F\),\(\hat G\)は可換である。

同時固有関数が存在することの証明

 今回は、演算子\(\hat F\),\(\hat G\)の固有値が縮重していないときを考える(縮重しているときは次ページで考える)。

 初めに、波動関数\(\psi_i^f\)を演算子\(\hat F\)の固有値\(f_i\)に対応する固有関数とすると、次の固有値方程式

\begin{align*}\hat F\psi_i^f=f_i\psi_i^f\tag{2}\end{align*}

が成り立つ。式(2)の両辺に左から\(\hat G\)を作用させると

\begin{align*}\hat G\hat F\psi_i^f=\hat Gf_i\psi_i^f\tag{3}\end{align*}

となり、演算子\(\hat F\)と\(\hat G\)は可換であるから

\begin{align*}\hat F(\hat G\psi_i^f)=f_i(\hat G\psi_i^f)\tag{4}\end{align*}

と書ける。この式(4)より、関数\(\hat G\psi_i^f\)は固有値\(f_i\)に対応する固有関数であることが分かる。そして、今回は固有値\(f_i\)が縮重していないため、固有値\(f_i\)に対応する固有関数はひとつ\(\psi_i\)しかなく、\(\hat G\psi_i^f\)と\(\psi_i\)は定数倍だけしか変わらないはずである。定数を\(g_i\)とすると、次の関係式

\begin{align*}\hat G\psi_i^f=g_i\psi_i^f\tag{5}\end{align*}

が成り立ち、関数\(\psi_i^f\)が演算子\(\hat G\)の固有値\(g_i\)に対応する固有関数でもあることが分かる。

 以上より、演算子\(\hat F\)と\(\hat G\)が可換なとき、状態\(\psi_i^f\)は演算子\(\hat F\),\(\hat G\)に共通の固有関数、つまり、同時固有関数であり、測定\(\hat F\)または\(\hat G\)を行なうと、確定値として\(f_i\)および\(g_i\)が得られる。

可換であることの証明

 ここでも、演算子\(\hat F\),\(\hat G\)の固有値が縮重していないときを考える(縮重しているときは次ページで考える)。

 初めに、固有関数\(\psi_i\)が演算子\(\hat F\),\(\hat G\)に共通な固有関数、つまり、同時固有関数であるとき

\begin{align*}\hat F\psi_i&=f_i\psi_i\tag{6}\\\hat G\psi_i&=g_i\psi_i\tag{7}\end{align*}

が成立する。次に、式(6),(7)の両辺に左からそれぞれ\(\hat G\),\(\hat F\)を掛けて差をとると

\begin{align*}\hat G\hat F\psi_i-\hat F\hat G\psi_i&=\hat Gf_i\psi_i-\hat Fg_i\psi_i\\(\hat G\hat F-\hat F\hat G)\psi_i&=f_ig_i\psi_i-g_if_i\psi_i\\&=0\tag{8}\end{align*}

となる。よって

\begin{align*}\hat G\hat F-\hat F\hat G=0\tag{9}\end{align*}

が成り立ち、測定\(\hat F\)または\(\hat G\)を行なって確定値として\(f_i\)および\(g_i\)が得られるとき、演算子\(\hat F\)と\(\hat G\)は可換であることが分かる。


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