波動関数の収縮

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 本ページでは、重ね合わせ状態の波動関数が測定することによって1つの固有関数に変化する現象である波動関数の収縮をみて、二重スリットの実験とサイコロを例のとり、解釈をしてみる。

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 前ページでは、ある系の状態\(\varPsi\)において、古典物理量の演算子\(\hat F\),\(\hat G\)が可換でないとき、古典物理量\(F\)と\(G\)を測定すると確定値は得られず、このときの不確定さ\(\Delta F\),\(\Delta G\)は次のロバートソンの不等式

\begin{align*}(\Delta F)^2(\Delta G)^2\geqq\frac{\vert〈[\hat F,\hat G]〉\vert^2}{4}\end{align*}

を満たすことを確認した。

 また、2つの演算子が次の交換関係

\begin{align*}[\hat F,\hat G]=i\hbar\end{align*}

を満たすとき、ハイゼンベルクの不確定性原理

\begin{align*}\Delta F\Delta G\geqq\frac{\hbar}{2}\end{align*}

の式が得られることも併せて確認した。

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内容

波動関数の復習

 二重スリットの実験で波動関数を得る場合には、一回だけ測定した結果から波動関数を得ていてのではなく、何度も何度も測定を行うことによって絶対値2乗が確率振幅を表す波動関数を得ていた(以前のページ参照)。

以前のページでも述べたが、波動関数は「測定を行なった結果」から得られるものであり、「測定を行なっていないとき」に関しては何も述べていないことに注意する。これは、我々は測定を行わなければ粒子分布が得られないからであり、測定を行なっていないときの粒子分布は知る由もない。そのため、測定を行なっていないときの粒子の分布をあたかも表していると誤解を与える「存在確率」という言葉は避けるべきである。

波動関数の収縮

 二重スリットの実験を考えてみる。例えば、ある条件\(A\)において、一回の測定によって粒子の位置の固有値が\(x=x’\)に決定されたとする。このことから、条件\(A\)において、この粒子の波動関数が \(\delta (x-x’)\)だと決定するのは時期尚早である。なぜなら、条件\(A\)において2回目に測定を行うと別のところ\(x=x^”\)に粒子が観測される可能性もあり、何度も測定を繰り返すと\(\delta(x-x’)\)と異なる波動関数になるかもしれないからである。そのため、条件\(A\)において粒子の波動関数が\(\delta (x-x’)\)であると決定していいのは、同条件で何度も測定しても粒子が\(x=x’\)にしか観測されないときだけである。実際に、二重スリットの実験では波動関数は\(\delta (x=x’)\)と異なり、幾つもの位置に関する固有関数の重ね合わせで表現される。

 波動関数が\(\delta (x-x’)\) となる粒子を得るためには次の方法がある。条件\(A\)において、位置\(x=x’\)である測定\(B\)を1回行なって粒子の位置が\(x-x’\)に決定されたとする。このとき、先ほども述べたように、条件\(A\)において粒子の波動関数が \(\delta(x-x’)\)であると決定してはならない。しかし、条件\(A\)において、位置\(x=x’\)での粒子の測定 \(B\)を行なった直後(この時の条件を条件 \(A+B\)とする)にもう一度粒子の測定\(B\)を行うと \(x=x’\)に検出されるはずであり、粒子の波動関数を\(\delta(x-x’)\) と決定してもよい。なぜなら、条件\(A+B\)において測定を何度も繰り返しても\(x=x’\)で測定されるからである。この測定は射影測定に相当する(参照ページ)。

 以上より、条件\(A\)で測定した重ね合わせ状態の波動関数は、条件\(A+B\)で測定することによって1つの固有関数に変化する。この現象を波動関数の収縮という。

波動関数の収縮の解釈

 重ね合わせの状態の波動関数がひとつの固有関数に変化することは不思議な現象に思えるかもしれない。実際に、この不思議な現象は長らく量子力学の解決すべき課題として扱われており、観測問題と呼ばれている。しかし、前節で見たように、条件が違う時の波動関数を比較していることがそもそも問題であり、本来は不思議では全くない。これはサイコロの確率と同じであり、サイコロを振る前はそれぞれの目が出る確率は\(\frac{1}{6}\)であるが、サイコロを振り終わればある目が出る確率が\(1\)となることと同じことである。

この後のページでは、この観測問題を間接測定の面から眺めてみる。


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