ラゲールの微分方程式

HOME物理数学微分方程式ラゲールの微分方程式

前ページ】           【次ページ


スポンサーリンク

本ページでは…

 本ページでは、ラゲールの微分方程式

\begin{align*}x\frac{d^{2}}{dx^{2}}L_{n}(x)+(1-x)\frac{{d}}{{d}x}L_{n}(x)+ nL_{n}( x)=0\end{align*}

において、\(n\)\(0\)以上の整数\(\{l\in\mathbb{Z}\mid l≧0\}\)のときの解であるラゲール多項式

\begin{align*}L_{n}( x )=\sum ^{n }_{k=0}\frac{(-1)^{k}(n!)^{2}}{(k!)^{2}(n-k)!}x^{k}\end{align*}

をフロベニウス法で求める。

スポンサーリンク

前ページまで…

 以前のページでは、線形微分方程式

\begin{align*}\frac{d^{n}}{dx^{n}}y+p_{1}(x)\frac{d^{n-1}}{dx^{n-1}}y+p_{2}(x)\frac{d^{n-2}}{dx^{n-2}}y+\cdots+p_{n}(x)y=0\end{align*}

の解が次のような級数

\begin{align*}y&=x^{r}(c_{0}+c_{1}x+c_{2}x^{2}+c_{3}x^{3}+\cdots)\\&=\sum ^{\infty }_{k=0}c_{k}x^{k+r}\end{align*}

になると仮定して代入・係数比較を駆使して解き進めるフロベニウス法を調べた。ただし、\(r\)は実数\(\{r\in\mathbb{R}\}\)である。

スポンサーリンク

内容

ラゲールの微分方程式とは

 ラゲールの微分方程式とは二階の線形常微分方程式である

\begin{align*}x\frac{d^{2}}{dx^{2}}L_{n}(x)+(1-x)\frac{{d}}{{d}x}L_{n}(x)+ nL_{n}( x)=0\tag{1}\end{align*}

のことを指し、この微分方程式の解をラゲール関数という。\(n\)\(0\)以上の整数\(\{n\in\mathbb{Z}\mid n≧0\}\)のときのラゲール関数は多項式

\begin{align*}L_{n}( x )=\sum ^{n }_{k=0}\frac{(-1)^{k}(n!)^{2}}{(k!)^{2}(n-k)!}x^{k}\tag{2}\end{align*}

となりラゲール多項式と呼ばれている。

 量子力学において「水素原子におけるシュレーディンガー方程式」を変数分離した際に現れる動径座標\(r\)に関する微分方程式は、実はラゲールの微分方程式ではなくラゲールの陪微分方程式である。しかし、陪微分方程式は微分方程式と切っても切れない関係にあるため、はじめにラゲールの微分方程式を調べる必要がある。

フロベニウス法

 ラゲールの微分方程式(1)の最高階導関数の係数関数は\(x=0\)のときに\(0\)となり、解が\(x=0\)の周りでテイラー展開できると仮定して解き進めるべき級数解法は使えない(「べき級数解法」のページを参照)。しかし、最高階導関数以外の係数は\(x=0\)の周りでテイラー展開できるため、フロベニウス法が使える可能性がある(「フロベニウス法」のページを参照)。フロベニウス法では、解が

\begin{align*}L_{n}( x )&=x^{r}(c_{0}+c_{1}x+c_{2}x^{2}+c_{3}x^{3}+\cdots)\\&=\sum ^{\infty }_{k=0}c_{k}x^{k+r}\tag{3}\end{align*}

と表せると仮定して解いていく(\(r\)は実数\(\{r\in\mathbb{R}\}\)であり、初項は\(c_0\neq0\)である)。

ラゲール多項式の導出

 フロベニウス法を用いて\(n\)\(0\)以上の整数\(\{n\in\mathbb{Z}\mid n≧0\}\)のときのラゲールの微分方程式を解き、ラゲール多項式を導出してみる。フロベニウス法として、仮定式(3)をラゲールの微分方程式に代入すると

\begin{align*}x\frac{d}{dx}\left(x^r\sum ^{\infty }_{k=0}c_{k}x^{k}\right)+(1-x)\frac{{d}}{{d}x}\left(x^r\sum ^{\infty }_{k=0}c_{k}x^{k}\right)+ n\left(x^r\sum ^{\infty }_{k=0}c_{k}x^{k}\right)=0 \tag{4}\end{align*}

となり、仮定した式(3)を一階微分・二階微分した項が表れる。まず、式(3)の一階微分を計算すると

\begin{align*}&\frac{{d}}{{d}x}\left(\sum ^{\infty }_{k=0}c_{k}x^{k+r}\right)\\&=\sum ^{\infty }_{{k=0}}(k+r)c_{k}x^{k+r-1}\tag{5}\end{align*}

が得られる(この式は\(r=0\)のときでも成り立つ)。式(3)の二階微分も同様に行うと、

\begin{align*}&\frac{{d}^{2}}{{d}x^{2}}\left(\sum ^{\infty }_{k=0}c_{k}x^{k+r}\right)\\&=\sum ^{\infty }_{k=0}(k+r)(k+r-1)c_{k}x^{k+r-2}\tag{6}\end{align*}

となる(この式は\(r=0\)または\(r=1\)のときでも成り立つ)。

 式(5)と式(6)をラゲールの微分方程式(4)に代入すると

\begin{align*}x&\left(\sum ^{\infty }_{k=0}(k+r)(k+r-1)c_{k}x^{k+r-2}\right)+(1-x)\left(\sum ^{\infty }_{{k=0}}(k+r)c_{k}x^{k+r-1}\right)+ n\left(\sum ^{\infty }_{k=0}c_{k}x^{k+r}\right)=0 \tag{7}\end{align*}

となり、かっこを外して展開すると

\begin{align*}\sum ^{\infty }_{k=0}(k+r)(k+r-1)c_{k}x^{k+r-1}+\sum ^{\infty }_{{k=0}}(k+r)c_{k}x^{k+r-1} -\sum ^{\infty }_{{k=0}}(k+r)c_{k}x^{k+r}+n\sum ^{\infty }_{k=0}c_{k}x^{k+r}=0 \tag{8}\end{align*}

が得られ、少し整理してみると

\begin{align*}\sum ^{\infty }_{k=0}(k+r)^2c_{k}x^{k+r-1}+\sum ^{\infty }_{{k=0}}(n-k-r)c_{k}x^{k+r}=0 \tag{9}\end{align*}

となる。次に、和記号内の\(x\)の指数を\(k+r\)に揃える。式(9)の左辺第1項を変形してみると

\begin{align*}\sum ^{\infty }_{k=0}(k+r)^2c_{k}x^{k+r-1}&=r^2c_0x^{r-1}+\sum ^{\infty }_{k=1}(k+r)^2c_{k}x^{k+r-1}\\&=r^2c_0x^{r-1}+\sum ^{\infty }_{k=0}(k+r+1)^2c_{k+1}x^{k+r}\tag{10}\end{align*}

となるが、一行目から二行目への変換において、\(k\Rightarrow k+1\)への置換えを行なった。そして、式(10)を式(9)に代入すると

\begin{align*}r^2c_0x^{r-1}+\sum ^{\infty }_{k=0}(k+r+1)^2c_{k+1}x^{k+r}+\sum ^{\infty }_{{k=0}}(n-k-r)c_{k}x^{k+r}=0 \tag{11}\end{align*}

となって和記号内の\(x\)の指数が\(k+r\)に揃う。そして、和記号をまとめると

\begin{align*}r^2c_0x^{r-1}+\sum ^{\infty }_{k=0}\left[(k+r+1)^2c_{k+1}+(n-k-r)c_{k}\right]x^{k+r}=0 \tag{12}\end{align*}

が得られる。この関係式(12)がどのような\(x\)でも恒等的に成立するためには各項の係数が\(0\)でなければならない。式(12)の第1項の係数が\(0\)になるためには、フロベニウス法の仮定である\(c_0\neq0\)を考慮すると、\(r=0\)でなければならない。そして、式(12)の第2項から次の漸化式

\begin{align*}c_{k+1}=-\frac{n-k}{\left(k+1\right)^{2}}c_{k} \tag{13}\end{align*}

が求められる。この漸化式(13)があれば、\(c_{0}\)を決めるとラゲール多項式の展開係数\(c_{k}\)を順番に決めることができる。そして、\(k=n\)のとき\(c_{k+1}=c_{n+1}=0\)となって、それ以降の展開係数も\(0\)となるため、ラゲール多項式(3)は\(n\)次の多項式となる。漸化式を繰り返してみると、

\begin{align*}c_{k}&=-\frac{n-k+1}{k^{2}}c_{k-1}&\\&=\left(-1\right)^{2}\frac{\left(n-k+1\right)\left(n-k+2\right)}{k^{2}\left(k-1\right)^{2}}c_{k-2}\\&=\cdots&\\&=\left(-1\right)^{k}\frac{\left(n-k+1\right)\left(n-k+2\right)\cdots\left(n-1\right)n}{k^{2}\left(k-1\right)^{2}\cdots2^{2}\cdot1^{2}}c_{0}\\&=\frac{\left(-1\right)^{k}n!}{\left(k!\right)^{2}\left(n-k\right)!}c_{0}\tag{14}\end{align*}

となって、展開係数\(c_{k}\)\(k\)\(1\)以上のときの一般項が得られる。ただ、一般項(14)に\(k=0\)を代入しても成立するため、一般項(14)は常に成り立つ。一般項(14)を式(3)に代入して、ラゲール多項式が\(n\)次であることを考慮すると

\begin{align*}L_{n}(x)=\sum ^{n }_{k=0}\frac{\left(-1\right)^{k}n!}{\left(k!\right)^{2}\left(n-k\right)!}c_{0}x^{k}\tag{15}\end{align*}

が得られ、初項\(c_{0}=n!\)とおくと目的のラゲール多項式

\begin{align*}L_{n}( x )=\sum ^{n }_{k=0}\frac{(-1)^{k}(n!)^{2}}{(k!)^{2}(n-k)!}x^{k}\tag{2}\end{align*}

を求めることができた。初項は定数であるためどのような数でも良いが今回\(c_{0}=n!\)を選んだのは、ラゲール多項式(2)の最高次である\(n\)次項を\(1\)または\(-1\)に調整するためである。このことは\(k=n\)\(c_{0}=n!\)を式(14)に代入するとすぐわかる。

\begin{align*}c_{n}=\frac{(-1)^{n}(n!)^{2}}{\left(n!\right)^{2}\left(0\right)!}=(-1)^{n}\tag{16}\end{align*}

\(n\)が\(0\)以上の整数でないとき

 \(n\)\(0\)以上の整数でないとき、漸化式(13)より、解として項が無限に続く無限級数が得られる。ただし、そのような解は物理的に意味を持つ解ではない。漸化式(13)において極限\(k\rightarrow \infty\)をとると

\begin{align*}c_{k+1}&\simeq \frac{1}{k}c_{k}\tag{17}\end{align*}

となり、十分大きな項の係数は\(1/k\)倍ずつ小さくなることが分かる。このときの解は指数関数\(e^x\)と似たような振る舞いをし、一般的にこの解を用いて表した波動関数は無限遠で発散するため物理的に意味のある解とはならない。

 例えば、「水素原子におけるシュレーディンガー方程式」を変数分離した際に現れる動径座標\(r\)に関する関数

\begin{align*}e^{-\frac{x}{2}}x^{\frac{m-1}{2}} L_{n}^{m}( x )\tag{18}\end{align*}

を考える。ラゲール陪多項式\(L_n^m(x)\)はラゲール多項式\(L_n(x)\)を用いて

\begin{align*}L_{n}^{m}( x )=\dfrac{\text{d}^{m}}{\text{d}x^{m}}L_{n}(x)\tag{19}\end{align*}

と表されるため、ラゲール多項式\(L_n(x)\)が指数関数\(e^x\)と似たような振る舞いをするとき、ラゲール陪多項式\(L_n^m(x)\)も指数関数\(e^x\)と似たような振る舞いをし、関数(18)は無限遠で発散してしまう。

ラゲール多項式の具体例

 求めたラゲール多項式(2)から具体的な形を求めると次のようになる。

\begin{align*}L_{n}( x )&=\sum ^{n }_{k=0}\frac{(-1)^{k}(n!)^{2}}{(k!)^{2}(n-k)!}x^{k}\tag{2}\\L_{0}( x )&=\sum ^{0 }_{k=0}\frac{(-1)^{k}(0!)^{2}}{(k!)^{2}(0-k)!}x^{k}=1\\L_{1}( x )&=\sum ^{1 }_{k=0}\frac{(-1)^{k}(1!)^{2}}{(k!)^{2}(1-k)!}x^{k}=-x+1\\L_{2}( x )&=\sum ^{2 }_{k=0}\frac{(-1)^{k}(2!)^{2}}{(k!)^{2}(2-k)!}x^{k}=x^{2}-4x+2\\L_{3}( x )&=\sum ^{3 }_{k=0}\frac{(-1)^{k}(3!)^{2}}{(k!)^{2}(3-k)!}x^{k}=-x^{3}+9x^{2}-18x+6\\L_{4}( x )&=\sum ^{4 }_{k=0}\frac{(-1)^{k}(4!)^{2}}{(k!)^{2}(4-k)!}x^{k}=x^{4}-16x^{3}+72x^{2}-96x+24\end{align*}

次ページから…

 ラゲールの陪微分方程式がすぐにでも気になる人はそちらのページに行っても良いが、実はもう一つ準備しといたほうが後々ラクになることがある。それはラゲールの多項式を母関数で表す方法であり、ラゲールの陪微分方程式の解であるラゲールの陪多項式の直交性を調べるときに必要になる。そこで、次ページではラゲールの多項式を母関数で表してみる。


前ページ】           【次ページ

HOME物理数学微分方程式ラゲールの微分方程式