規格化

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本ページでは…

 本ページでは、二乗すると確率密度を表す波動関数に変換する操作の規格化について調べ、規格化定数\(C\)を求める。また、位相因子\(e^{i\theta}\)が掛かっても確率密度が変わらないことを確かめる。

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前ページでは、シュレーディンガー方程式の解である波動関数\(\varPsi’\)を絶対値2乗すると確率密度に比例し、調整した定数\(C\)を波動関数\(\varPsi’\)に掛けた波動関数\(\varPsi\)

\begin{align*}\varPsi=C\varPsi’\tag{1}\end{align*}

の絶対値2乗は確率密度になること(ボルンの規則)を、二重スリットの実験結果から考察した。

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内容

規格化とは

 ある波動関数\(\varPsi’\)が与えられたとき、波動関数\(\varPsi’\)に定数\(C\)を掛けて得られた波動関数\(\varPsi\)

\begin{align*}\varPsi=C\varPsi’\tag{1}\end{align*}

の絶対値2乗が確率密度\(P\)に等しくなったとする。

\begin{align*}P=\vert\varPsi\vert^2\tag{2}\end{align*}

この時の定数\(C\)は次のように求められる。

 初めに、確率密度\(P\)に微小空間\(dv=dxdydz\)を掛けた値\(dv\ P\)は、微小空間\(dv\)に粒子が検出される確率を表し、全空間で確率を足し合わせると\(1\)になるため、次の方程式を立てることができる。

\begin{align*}1=\int dv\ P\tag{3}\end{align*}

この方程式を解くと、

\begin{align*}1&=\int dv\ P\\&=\int dv\ \vert\varPsi\vert^2\\&=\int dv\ \vert C\varPsi’\vert^2\\&=C^2\int dv\vert\varPsi’\vert^2\\C&=\frac{1}{\sqrt{\int dv\vert\varPsi’\vert^2}}\tag{4}\end{align*}

と定数\(C\)が求まり、波動関数\(\varPsi\)は

\begin{align*}\varPsi=\frac{1}{\sqrt{\int dv\vert\varPsi’\vert^2}}\varPsi’\end{align*}

となる。今回のように、与えられた波動関数\(\varPsi’\)に定数\(C\)をかけて、絶対値2乗が確率密度になる波動関数\(\varPsi\)を求めることを規格化といい、定数\(C\)を規格化定数という。

 今回、式(4)の変形において、規格化定数の2乗\(C^2\)から規格化定数\(C\)を求める際に、\(\pm C\)の2つの可能性があったが、\(+C\)のみを選択した。このことについては、後ほど述べる。

波動関数の位相

 絶対値2乗が確率密度になる波動関数\(\varPsi\)が与えられたとき、波動関数\(\varPsi\)に\(e^{i\theta}\)をかけた波動関数\(\varPsi’\)

\begin{align*}\varPsi’=e^{i\theta}\varPsi\end{align*}

も元の波動関数\(\varPsi\)と同じ確率密度を与える。同じ確率密度を与えるなら、2つの波動関数は同じ物理的状態を表すと考えられるため、波動関数\(\varPsi\)と波動関数\(e^{i\theta}\varPsi\)は同じ物理的状態を表すと考え、同一とみなす。このとき、波動関数\(\varPsi\)と波動関数\(e^{i\theta}\varPsi\)は位相が違うといい、\(e^{i\theta}\)を位相因子、\(\theta\)を位相という。

 先ほど規格化定数\(C\)を求める際に、規格化定数\(C\)の符号\(\pm\)は\(+\)のみを選択した。その理由は、符号が\(+\)の波動関数と符号が\(-\)の波動関数は位相が違うだけであり、どちらの波動関数も同じ物理的状態を表すからである。このとき、位相の差は

\begin{align*}\theta=\pi\end{align*}

であり、位相因子は

\begin{align*}e^{i\pi}=-1\end{align*}

となる。

波動関数の形の制限

 波動関数の2乗が確率密度を与えると考えると、波動関数の形にはいくつか制限がかかる。

 例えば、ある点での確率密度が一つに定まるように、波動関数は多価関数ではなく1価関数でなければならない。また、シュレーディンガー方程式は微分方程式であるため、微分が定義できるように波動関数は不連続ではなく連続してなければならず、全空間での確率の合計が\(1\)になるように波動関数は無限の値もとってはならない。以上をまとめると、波動関数は1価連続有限でなければならない。

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次ページでは、古典物理量の演算子\(\hat F\)がエルミート演算子の定義

\begin{align*}\int dv\ (\hat F\psi)^*\phi=\int dv\ \psi^*(\hat F\phi)\end{align*}

を満たすことをみて、エルミート演算子の固有値が実数になることを確かめる。


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