クライン-ゴルドン方程式のポアンカレ変換

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本ページでは…

 本ページでは、クライン-ゴルドン方程式がポアンカレ変換(ローレンツ変換と時空座標の並進)の下で不変であることをみる。

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前ページでは、相対論的なハミルトニアンに正準量子化を行ない、相対論的なシュレーディンガー方程式であるクライン-ゴルドン方程式を求めた。

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内容

ポアンカレ変換の下での不変性

 クライン-ゴルドン方程式

\begin{align*}\left(\partial_\mu\partial^\mu+\frac{m^2c^2}{\hbar^2}\right)\phi(x)=0\tag{1}\end{align*}

は、相対性理論の要請を満たすアインシュタインの関係式

\begin{align*}E^2=m^2c^4+\boldsymbol p^2c^2\tag{2}\end{align*}

から導いたため、ローレンツ変換と時空座標の並進(合わせてポアンカレ変換である)において不変である。言い換えると、時空座標が\(x\)である慣性系\(S\)から時空座標が\(x’\)の別の慣性系\(S’\)への変換が次の式

\begin{align*}x’^\mu=\varLambda^\mu{}_\nu x^\nu+a^\mu\tag{3}\end{align*}

で表されるとき、変換後のクライン-ゴルドン方程式の形

\begin{align*}\left(\partial’_\mu\partial’^\mu+\frac{m^2c^2}{\hbar^2}\right)\phi'(x’)=0\tag{4}\end{align*}

が元のクライン-ゴルドン方程式と変わらないということである。

 このことは、次のように確かめられる。ローレンツ変換と時空座標の並進によって時空座標が式(3)のように変換されるとき、微分ベクトルは

\begin{align*}\partial’^\mu&=\varLambda^\mu{}_\nu\partial^\nu\tag{5}\\\partial’_\mu&=\partial_\nu(\varLambda^{-1})^\nu{}_\mu\tag{6}\end{align*}

と変換するため(以前のページ参照)、クライン-ゴルドン方程式(4)に代入すると

\begin{align*}\left(\partial_\nu(\varLambda^{-1})^\nu{}_\mu\varLambda^\mu{}_\rho\partial^\rho+\frac{m^2c^2}{\hbar^2}\right)\phi'(x’)&=0\\\rightarrow\left(\partial_\nu\delta^\nu{}_\rho\partial^\rho+\frac{m^2c^2}{\hbar^2}\right)\phi'(x’)&=0\\\rightarrow\left(\partial_\nu\partial^\nu+\frac{m^2c^2}{\hbar^2}\right)\phi'(x’)&=0\tag{7}\end{align*}

となる。ここで、関数\(\phi'(x’)\)はスカラーであるため時空座標が変わっても元の関数\(\phi(x)\)から値は変わらず、次の等式

\begin{align*}\phi(x)=\phi'(x’)\tag{8}\end{align*}

が成り立つはずである。この式(8)を用いると式(7)は

\begin{align*}\left(\partial_\mu\partial^\mu+\frac{m^2c^2}{\hbar^2}\right)\phi(x)=0\tag{1}\end{align*}

と表すことができ、ポアンカレ変換の下で元の方程式と変わらないことが分かる。

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次ページでは、4元確率流密度\(j^\mu\)を用いたクライン-ゴルドン方程式における流れの保存の関係式

\begin{align*}\partial_\mu j^\mu=0\end{align*}

を確認し、「流れの保存」と「どの時刻においても、空間の無限遠で波動関数\(\phi\)がゼロに収束すること」を満たせば、確率密度\(\rho\)の全空間積分は保存する(つまり、どの時刻においても確率密度\(\rho\)の全空間積分は一定となる)ことを確認する。


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