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コーリー-ハウス-ポスナー-ホワイトサイズ反応とは
コーリー-ハウス-ポスナー-ホワイトサイズ反応とはリチウムジアルキルクプラートR2CuLiとハロゲン化アルキルR’-XからアルカンR-R’を得るクロスカップリング反応であり、1960年代後半に、イライアス・コーリー、ゲーリー・ポスナーらの研究グループと、ハーバート・ハウス、ジョージ・ホワイトサイズらの研究グループによってそれぞれ独立に開発された(i)(ii)(iii)。
「コーリー-ハウス-ポスナー-ホワイトサイズ反応の反応式」「corey–house-synthesis」
原理的には、有機リチウムやグリニャール試薬などのカルボアニオン等価体R-Mは、直接ハロゲン化アルキルR’-Xへの求核置換反応で新しい炭素-炭素結合を形成できる。しかし、実際に行なってみると、カルボアニオン等価体R-Mとハロゲン化アルキルR‘-Xとの金属ハロゲン交換や、大量の還元体&脱離体副生成物が生じ、高収率&高選択性で目的の化合物を得ることは難しい。
反応機構
「コーリー-ハウス-ポスナー-ホワイトサイズ反応の反応機構」「corey–house-synthesis-mechanism」
R’-Xが臭化アルキルやトシラートの場合、立体配置的なクプラートを用いると、立体反転が見られ、SN2反応のような機構で進行していると考えられる。ヨウ化アルキルの場合は、反転するものと反転しないものの混合物となり、オレフィン結合をもつヨウ化物を用いると環化生成物が形成されることから、ラジカルの関与が示される。
①1電子移動(SET)
初めに、金属リチウムによってハロゲン化アルキルR-Xの結合がラジカル開裂し、アルキルラジカルR・が生成する。
②1電子移動(SET)
アルキルラジカルR・と金属リチウムとが反応して有機リチウム中間体R-Liが生成し、ハロゲン・金属交換反応が完了する。
③金属交換反応
一分子の有機リチウム中間体が銅イオンと金属交換する。
④クプラートの生成
もう一分子の有機リチウム化合物が銅イオンに配位して、リチウムジアルキルクプラートが生成する。
⑤酸化的付加
ハロゲン化アルキルがリチウムジアルキルクプラートに酸化的付加する。
⑥還元的脱離
アルカンR-R’が還元的脱離しながら、炭素-炭素共有結合が形成され、クロスカップリング反応が完了する。
適用範囲
ハロゲン化アルキルR-X
出発物質R-Xのハロゲンとしてはヨウ化物、臭化物、塩化物が使え、一級、二級、三級ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アリール、ハロゲン化アルケニルを用いることができる。
もし、アルキルリチウム試薬と反応する官能基が含まれる場合は、他の金属試薬(Mg、Zn、Al、B)が用いられる。
クプラートの使用では、R基が一当量無駄になってしまう。もし貴重な基質の場合は、犠牲試薬を用いることができる。犠牲試薬としては、シアノ基やアルキニル基、2-エチニル基が使われる。
ハロゲン化アルキルR‘-X
R’-Xのハロゲンとしては、臭化物、ヨウ化物、トリフラート、トシラートが使え、一級アルキル、二級環状アルキル、アリール、アルケニルが使用できるが、二級や三級アルキルでは収率が低下する。また、アルキニル化合物では反応は進行せず、アリール-アリール結合の形成も低収率となる。
溶媒
通常はエーテル溶媒中で行なわれる。
反応条件
通常は室温以下の温度で脱気・脱水環境で行なう。
実験手順
副生成物の銅塩はアンモニア水溶液を加えて水溶性にする。
応用例
触媒的反応
触媒量のテトラクロロ銅(II)酸リチウムを用いると、グリニャール試薬と臭化アルキルをカップリングさせることができる(iv)(v)。この反応は高知によって1971年に発見され、その後、シュロッサーおよびフーケらによってトシル酸アルキルにまで使用できるようになった(vi)。
反応機構は、グリニャール試薬が銅錯体と金属交換反応を起こして有機銅化合物が生じ、この有機銅化合物がハロゲン化物と反応して、カップリング生成物が生じる。このとき、銅錯体は再生する。
関連反応
参考文献
(i) Corey, E. J.; Posner, G. H. J. Am. Chem. Soc. 1967, 89, 3911–3912.
(ii) Corey, E. J.; Posner, G. H. J. Am. Chem. Soc. 1968, 90, 5615–5616.
(iii) Whitesides, G. M.; Fischer Jr. W. F.;, San Filippo Jr. J.; Bashe, R. W.; House, H. O. J. Am. Chem. Soc. 1969, 91, 4871–4882.
(iv) Tamura, M.; Kochi, J. Synthesis 1971, 6, 303–305.
(v) Kochi, J. K. Organometallic Mechanisms and Catalysis. New York 1978, 381–386.
(vi) Fouquet, G.; Schlosser, M. Angew. Chem. Int. 1974, 13, 82–83.
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