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本ページでは、古典物理量の演算子\(\hat F\)がエルミート演算子の定義
\begin{align*}\int dv\ (\hat F\psi)^*\phi=\int dv\ \psi^*(\hat F\phi)\end{align*}
を満たすことをみて、エルミート演算子の固有値が実数になることを確かめる。
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前ページでは、二乗すると確率密度を表す波動関数に変換する操作の規格化について調べ、規格化定数\(C\)を求めた。また、位相因子\(e^{i\theta}\)が掛かっても確率密度が変わらないことを確かめた。
内容
エルミート演算子とは
ある固有関数\(\psi\)と\(\phi\)が与えられたとき、古典物理量の演算子\(\hat F\)が
\begin{align*}\int dv\ (\hat F\psi)^*\phi=\int dv\ \psi^*(\hat F\phi)\tag{1}\end{align*}
を満たすとき、演算子\(\hat F\)をエルミート演算子と呼ぶ。ここで、\({}^*\)は複素共役を表す。
これまで古典物理量の演算子として、エネルギー、ハミルトニアン、座標、運動量の演算子がでてきたが、古典物理量の演算子すべてエルミート演算子となる。
エルミート演算子の例
例として、運動量演算子\(\hat p_x=-i\hbar\frac{\partial }{\partial x}\)がエルミート演算子であることをみてみる。式(1)に運動量演算子\(\hat p_x\)を代入して左辺を変形すると
\begin{align*}\int dv\ (\hat p_x\psi)^*\phi&=\int dxdydz\ \left(-i\hbar\frac{\partial \psi}{\partial x} \right)^*\phi\\&=i\hbar\int dydz\left(\int dx\ \frac{\partial }{\partial x}(\psi^*\phi)-\int dx\ \psi^*\frac{\partial \phi}{\partial x}\right)\\&=i\hbar\int dydz\left([\psi^*\phi]-\int dx\ \psi^*\frac{\partial \phi}{\partial x}\right)\\&=\int dxdydz\ \psi^*\left(-i\hbar\frac{\partial \phi}{\partial x}\right)\\&=\int dv\ \psi ^*(\hat p_x\phi)\tag{2}\end{align*}
となり、運動量演算子\(\hat p_x\)がエルミート演算子であることがわかる。
※※※式(2)の4行目への変形では、無限遠または境界で波動関数が\(\psi^*\)と\(\phi\)がゼロになることを用いた。※※※
エルミート演算子の固有値
エルミート演算子\(\hat F\)の固有値\(f\)は実数となる。このことは、次の固有値方程式
\begin{align*}\hat F\psi=f\psi\tag{3}\end{align*}
から確かめられる。両辺の複素共役をとると
\begin{align*}(\hat F\psi)^*=f^*\psi^*\tag{4}\end{align*}
となり、式(3)の両辺の左から\(\psi^*\)を掛けて座標で積分すると、
\begin{align*}\int dv\ \psi^*(\hat F\psi)&=\int dv\ \psi^*f\psi\\&=f\int dv\ \psi^*\psi\\&=f\tag{5}\end{align*}
となる。また、式(4)の両辺に右から\(\psi\)を掛けて座標で積分すると、
\begin{align*}\int dv\ (\hat F\psi)^*\psi&=\int dv\ f^*\psi^*\psi\\&=f^*\int dv\ \psi^*\psi\\&=f^*\tag{6}\end{align*}
となり、エルミート演算子の定義より式(5)と式(6)は等しく
\begin{align*}f=f^*\tag{7}\end{align*}
となって、エルミート演算子の固有値は実数になることがわかる。
※※※式(5)と式(6)の3行目への変形では、波動関数\(\psi\)が規格化されていることを用いた。※※※
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次ページでは、異なる固有値\(f_i\),\(f_j\)に対応する固有関数\(\psi_i\),\(\psi_j\)は直交
\begin{align*}\int dv\ \psi_i\psi_j=0\end{align*}
することを確認する。また、縮重している固有関数は一般的には直交しないが、シュミットの直交化法により、縮重している固有関数を含むすべての固有関数を直交化できることをみる。
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