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本ページでは、ルジャンドルの微分方程式
\begin{align*}(1-x^{2})\frac{d^{2}}{dx^{2}}P_{l}(x)-2x\frac{d}{dx}P_{l}(x)+ l(l+1)P_{l}( x)=0\end{align*}
において、\(l\)が\(0\)以上の整数\(\{l\in\mathbb{Z}\mid l≧0\}\)のときの解であるルジャンドル多項式
\begin{align*}P_{l}(x)=\sum ^{[\frac{l}{2}]}_{k=0}\frac{(-1)^{k}(2l-2k)!}{2^{l}k!(l-k)!(l-2k)!}x^{l-2k}\end{align*}
をべき級数解法で求める。
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以前のページでは、線形微分方程式
\begin{align*}\frac{d^{n}}{dx^{n}}y+p_{1}(x)\frac{d^{n-1}}{dx^{n-1}}y+p_{2}(x)\frac{d^{n-2}}{dx^{n-2}}y+\cdots+p_{n}(x)y=0\end{align*}
の解が次のような級数
\begin{align*}y&=c_{0}+c_{1}x+c_{2}x^{2}+c_{3}x^{3}+c_{4}x^{4}+\cdots\\&=\sum ^{\infty }_{k=0}c_{k}x^{k}\end{align*}
になると仮定して代入・係数比較を駆使して解き進めるべき級数解法を調べた。
内容
ルジャンドルの微分方程式とは
ルジャンドルの微分方程式とは二階の線形常微分方程式である
\begin{align*}(1-x^{2})\frac{d^{2}}{dx^{2}}P_{l}(x)-2x\frac{d}{dx}P_{l}(x)+ l(l+1)P_{l}( x)=0\tag{1}\end{align*}
のことを指し、この微分方程式の解をルジャンドル関数という。\(l\)が\(0\)以上の整数\(\{l\in\mathbb{Z}\mid l≧0\}\)のときのルジャンドル関数は多項式
\begin{align*}P_{l}(x)=\sum ^{[\frac{l}{2}]}_{k=0}\frac{(-1)^{k}(2l-2k)!}{2^{l}k!(l-k)!(l-2k)!}x^{l-2k}\tag{2}\end{align*}
となりルジャンドル多項式と呼ばれている。
量子力学において「角運動量の2乗における固有値方程式」や「水素原子におけるシュレーディンガー方程式」を変数分離した際に現れる角度座標\(\theta\)に関する微分方程式は、実はルジャンドルの微分方程式ではなくルジャンドルの陪微分方程式である。しかし、陪微分方程式は微分方程式と切っても切れない関係にあるため、はじめにルジャンドルの微分方程式を調べる必要がある。
べき級数解法
線形微分方程式を解く方法として、べき級数解法というものがある(以前のページを参照)。この方法は、線形微分方程式
\begin{align*}\frac{d^{n}}{dx^{n}}y+p_{1}(x)\frac{d^{n-1}}{dx^{n-1}}y+p_{2}(x)\frac{d^{n-2}}{dx^{n-2}}y+\cdots+p_{n}(x)y=0\tag{3}\end{align*}
において、係数関数の\(p_{1}(x)\),\(p_2(x)\),\(\cdots\),\(p_{n}(x)\)が\(x=0\)の周りでテイラー展開できるときに使うことができ、微分方程式の解\(y\)も\(x=0\)の周りでテイラー展開できて次のような級数
\begin{align*}y&=c_{0}+c_{1}x+c_{2}x^{2}+c_{3}x^{3}+c_{4}x^{4}+\cdots\\&=\sum ^{\infty }_{k=0}c_{k}x^{k}\tag{4}\end{align*}
になると仮定して、代入・係数比較を駆使して解き進める。
ルジャンドルの微分方程式(1)の形を式(3)に合わせるために両辺を\(1-x^2\)で割ると、
\begin{align*}\frac{d^{2}}{dx^{2}}P_{l}(x)-\frac{2x}{1-x^2}\frac{d}{dx}P_{l}(x)+ \frac{l(l+1)}{1-x^2}P_{l}( x)=0\tag{5}\end{align*}
となり、係数関数全ては\(x=0\)の周りでテイラー展開できるため、べき級数解法を使うことができる。ただし、それぞれの係数関数は\(\vert x\vert=1\)の点で発散してしまうため、テイラー展開の際の収束半径は\(1\)であり、級数解法で求めた解は\(-1\text<x\text<1\)の範囲でしか成立は保証できない。後で分かるが、\(l\)が\(0\)以上の整数であればどのような\(x\)でも成立する。
ルジャンドル多項式の導出
べき級数解法を用いて\(l\)が\(0\)以上の整数\(\{l\in\mathbb{Z}\mid l≧0\}\)のときのルジャンドルの微分方程式を解き、ルジャンドル多項式を導出してみる。べき級数解法として、次の仮定式
\begin{align*}P_{l}(x)&=c_{0}+c_{1}x+c_{2}x^{2}+c_{3}x^{3}+c_{4}x^{4}+\cdots\\&=\sum ^{\infty }_{k=0}c_{k}x^{k}\tag{6}\end{align*}
をルジャンドルの微分方程式(1)に代入すると
\begin{align*}(1-x^{2})\frac{d^{2}}{dx^{2}}\left(\sum ^{\infty }_{k=0}c_{k}x^{k}\right)-2x\frac{d}{dx}\left(\sum ^{\infty }_{k=0}c_{k}x^{k}\right)+ l(l+1)\left(\sum ^{\infty }_{k=0}c_{k}x^{k}\right)=0 \tag{7}\end{align*}
となり、仮定した式(6)を一階微分・二階微分した項が表れる。まず、式(6)の一階微分を計算すると
\begin{align*}\frac{d}{dx}\left(\sum ^{\infty }_{k=0}c_{k}x^{k}\right)&=c_{1}+2c_{2}x+3c_{3}x^{2}+4c_{4}x^{3}+\cdots\\&=\sum ^{\infty }_{k=1}kc_{k}x^{k-1}\\&=\sum ^{\infty }_{k=0}kc_{k}x^{k-1}\tag{8}\end{align*}
が得られる。二行目から三行目への変換において、和記号を\(k=1\)から\(k=0\)に変えても三行目の和記号の初項は\(0\)となるためこのような変換を行なった。式(6)の二階微分も同様に行うと、
\begin{align*}\frac{d^{2}}{dx^{2}}\left(\sum ^{\infty }_{k=0}c_{k}x^{k}\right)&=2c_{2}+2\cdot 3c_{3}x+3\cdot 4c_{4}x^{2}+\cdots\\&=\sum ^{\infty }_{k=2}k(k-1)c_{k}x^{k-2}\\&=\sum ^{\infty }_{k=0}k(k-1)c_{k}x^{k-2}\tag{9}\end{align*}
となる。先ほどと同様、二行目から三行目への変換において、和記号を\(k=2\)から\(k=0\)に変えても三行目の和記号の初項と第二項は\(0\)となるためこのような変換を行なった。
式(8),(9)を式(7)に代入すると
\begin{align*}(1-x^{2})\left(\sum ^{\infty }_{k=0}k(k-1)c_{k}x^{k-2}\right)-2x\left(\sum ^{\infty }_{k=0}kc_{k}x^{k-1}\right)+ l(l+1)\left(\sum ^{\infty }_{k=0}c_{k}x^{k}\right)=0 \tag{10}\end{align*}
となり、かっこを外して展開すると
\begin{align*}\sum ^{\infty }_{k=0}k(k-1)c_{k}x^{k-2}-\sum ^{\infty }_{k=0}k(k-1)c_{k}x^{k}-2\sum ^{\infty }_{k=0}kc_{k}x^{k}+ l(l+1)\sum ^{\infty }_{k=0}c_{k}x^{k}&=0\\\sum ^{\infty }_{k=0}k(k-1)c_{k}x^{k-2}-\sum ^{\infty }_{k=0}\left\{k(k+1)-l(l+1)\right\}c_{k}x^{k}&=0 \tag{11}\end{align*}
を得る。次に、式(11)を整理するために、すべての項の\(x\)の指数を\(k\)に揃える。まずは、式(11)の左辺第1項を変形してみる。左辺第1項\(\sum\)の初項と第二項は\(0\)であるため和記号を\(k=0\)から\(k=2\)に変えても変わらず、\(k\Rightarrow k+2\)と\(k\)を二つずらすと式(12)が得られる。
\begin{align*}\sum ^{\infty }_{k=0}k(k-1)c_{k}x^{k-2}&=\sum ^{\infty }_{k=2}k(k-1)c_{k}x^{k-2}\\&=\sum ^{\infty }_{k=0}(k+1)(k+2)c_{k+2}x^{k}\tag{12}\end{align*}
そして、式(12)を式(11)に代入すると
\begin{align*}\sum ^{\infty }_{k=0}(k+1)(k+2)c_{k+2}x^{k}-\sum ^{\infty }_{k=0}\left\{k(k+1)-l(l+1)\right\}c_{k}x^{k}=0\tag{13}\end{align*}
となって、\(x^{k}\)でまとめると
\begin{align*}\sum ^{\infty }_{k=0}\left[(k+1)(k+2)c_{k+2}- \left\{k(k+1)-l(l+1)\right\}c_{k}\right]x^{k}=0 \tag{14}\end{align*}
が得られる。この関係式(14)がどのような\(x\)でも恒等的に成立するためには各項の係数が\(0\)でなければならないため、次の漸化式
\begin{align*}c_{k+2}&=\frac{k(k+1)-l(l+1)}{(k+1)(k+2)}c_{k} \\&=-\frac{(l-k)(l+k+1)}{(k+1)(k+2)}c_{k}\tag{15}\end{align*}
が求められる。
この漸化式(15)を見て分かることは、一つ飛ばしで展開係数が決まるので、ルジャンドル多項式(6)の偶数項と奇数項はそれぞれ独立しているということである。
\begin{align*}P_{l}(x)&=\sum ^{\infty }_{k=0}c_{k}x^{k}\\&=\sum ^{\infty }_{k=0}c_{2k}x^{2k}+\sum ^{\infty }_{k=0}c_{2k+1}x^{2k+1}\tag{16}\end{align*}
式(16)の第一項は偶数項、第二項は奇数項であり、それぞれの漸化式は次のようになる。
\begin{align*}c_{2k+2}&=-\frac{(l-2k)(l+2k+1)}{(2k+1)(2k+2)}c_{2k}\tag{17}\\c_{(2k+1)+2}&=-\frac{(l-2k-1)(l+2k+2)}{(2k+2)(2k+3)}c_{2k+1}\tag{18}\end{align*}
そのため、漸化式(17),(18)を用いてルジャンドル多項式(16)を決定する際には、偶数項と奇数項それぞれの最低次数項である\(c_{0}\)と\(c_{1}\)を決定する必要がある。
では、偶数項と奇数項は無限に続くのか?というと、\(l\)が\(0\)以上の整数のとき、両方は無限に続かない。\(l=2k\)なら漸化式(17)に、\(l=2k+1\)なら漸化式(18)に代入すると\(c_{l+2}=0\)となって、それ以降の展開係数も\(0\)となるため、\(l\)が偶数ならルジャンドル多項式(16)の偶数項は\(l\)次の多項式となり、\(l\)が奇数なら奇数項は\(l\)次の多項式となる。つまり、偶数項と奇数項どちらかは途中で止まるが、一方は永遠に続くことになる。ただ、もう一方の最低次数項\(c_{0}\)または\(c_{1}\)を\(0\)にすれば、もう一方の偶数項または奇数項は\(0\)となるため、ルジャンドル多項式(16)全体を有限項で止めることができる。そして、有限項で多項式を止めることができれば、ルジャンドル多項式はどのような\(x\)でも値は収束し、ルジャンドルの微分方程式の解となる。
一方、有限項で止めることができず、解として項が無限に続く無限級数が得られても、そのような解は物理的に意味を持つ解ではない。漸化式(15)において極限\(k\rightarrow \infty\)をとると
\begin{align*}c_{k+2}&\simeq c_{k}\tag{19}\end{align*}
となり、十分大きな項の係数は一定になることが分かる。このときの係数を\(c\)と置くと、項が無限に続く無限級数は
\begin{align*}P_{l}(x)&=\sum ^{\infty }_{k=0}c_{k}x^{k}\\&\simeq c\sum ^{\infty }_{k=0}x^{k}\tag{20}\end{align*}
と近似することができ、この無限級数は\(-1\text<x\text<1\)の範囲でしか収束しない。そのため、\(x=\cos\theta\)としたときのルジャンドルの陪微分方程式が現れる「角運動量の2乗における固有値方程式」や「水素原子におけるシュレーディンガー方程式」の解としては、\(\vert x\vert=1\)の点で発散するため不適当である。
\(l\)が偶数のとき
\(l\)が偶数のとき、つまり、\(l=2m\)(\(m\)が\(0\)以上の整数\(\{m\in\mathbb{Z}\mid m≧0\}\))の時、漸化式(17)を用いて、ルジャンドル多項式(16)を求めてみる。先ほど述べたように、\(l\)が偶数ならルジャンドル多項式(16)の偶数項は\(l\)次の多項式となる。そして、奇数項は無限に続くが、最低次数項\(c_{1}\)を\(0\)にすれば奇数項は\(0\)となり、ルジャンドル多項式(16)全体を有限項で止めることができる。今回は、この条件で、\(l\)が偶数の時のルジャンドル多項式を導出してみる。
\(l=2m\)(\(\{l\in\mathbb{Z}\mid l≧0\}\))の条件のもと、漸化式(17)を繰り返してみると、
\begin{align*}c_{2k}&=-\frac{(2m-2k+2)(2m+2k-1)}{2k(2k-1)}c_{2(k-1)}\\&=(-1)^{2}\frac{(2m-2k+2)(2m+2k-1)}{2k(2k-1)}\frac{(2m-2k+4)(2m+2k-3)}{(2k-2)(2k-3)}c_{2(k-2)}\\&=(-1)^{2}\frac{(2m-2k+2)(2m-2k+4)(2m+2k-1)(2m+2k-3)}{2k(2k-1)(2k-2)(2k-3)}c_{2(k-2)}\\&=\cdots\\&=(-1)^{k}\frac{(2m-2k+2)(2m-2k+4)\cdots 2m\cdot(2m+2k-1)(2m+2k-3)\cdots (2m+1)}{2k(2k-1)(2k-2)(2k-3)\cdots1}c_{0}\\&=(-1)^{k}\frac{2^{k}(m-k+1)(m-k+2)\cdots m\cdot(2m+2k)(2m+2k-1)\cdots (2m+1)}{2k(2k-1)(2k-2)(2k-3)\cdots1\cdot(2m+2k)(2m+2k-2)\cdots (2m+2)}c_{0}\\&=\frac{(-1)^{k}}{(2k)!}\frac{2^{k}m!}{(m-k)!}\frac{(2m+2k)!}{(2m)!}\frac{m!}{2^{k}(m+k)!}c_{0}\\&=\frac{(-1)^{k}(m!)^{2}(2m+2k)!}{(2k)!(2m)!(m-k)!(m+k)!}c_{0}\tag{21}\end{align*}
となって、展開係数\(c_{2k}\)の\(k\)が\(1\)以上のときの一般項が得られる。ただ、一般項(21)に\(k=0\)を代入しても成立するため、一般項(21)は常に成り立つ。一般項(21)を式(16)に代入して、ルジャンドル多項式が\(2m\)次であることを考慮すると
\begin{align*}P_{2m}(x)=\sum ^{m }_{k=0}\frac{(-1)^{k}(m!)^{2}(2m+2k)!}{(2k)!(2m)!(m-k)!(m+k)!}c_{0}x^{2k}\tag{22}\end{align*}
が得られる。
\(l\)が奇数のとき
\(l\)が奇数のとき、つまり、\(l=2m+1\)(\(m\)が\(0\)以上の整数\(\{m\in\mathbb{Z}\mid m≧0\}\))の時、漸化式(18)を用いて、ルジャンドル多項式(16)を求めてみる。先ほど述べたように、\(l\)が奇数ならルジャンドル多項式(16)の奇数項は\(l\)次の多項式となる。そして、偶数項は無限に続くが、最低次数項\(c_{0}\)を\(0\)にすれば偶数項は\(0\)となり、ルジャンドル多項式(16)全体を有限項で止めることができる。今回は、この条件で、\(l\)が奇数の時のルジャンドル多項式を導出してみよう。
\(l=2m+1\)(\(\{l\in\mathbb{Z}\mid l≧0\}\))の条件のもと、漸化式(18)を繰り返してみると、
\begin{align*}c_{2k+1}&=-\frac{(2m-2k+2)(2m+2k+1)}{2k(2k+1)}c_{2(k-1)+1}\\&=(-1)^{2}\frac{(2m-2k+2)(2m+2k+1)}{(2k+1)2k}\frac{(2m-2k+4)(2m+2k-1)}{(2k-2)(2k-1)}c_{2(k-2)+1}\\&=(-1)^{2}\frac{(2m-2k+2)(2m-2k+4)(2m+2k+1)(2m+2k-1)}{(2k+1)2k(2k-1)(2k-2)}c_{2(k-2)+1}\\&=\cdots\\&=(-1)^{k}\frac{(2m-2k+2)(2m-2k+4)\cdots 2m\cdot(2m+2k+1)(2m+2k-1)\cdots (2m+3)}{(2k+1)2k(2k-1)(2k-2)\cdots2}c_{1}\\&=(-1)^{k}\frac{2^{k}(m-k+1)(m-k+2)\cdots m\cdot(2m+2k+2)(2m+2k+1)\cdots (2m+3)}{(2k+1)2k(2k-1)(2k-2)\cdots2\cdot(2m+2k+2)(2m+2k)\cdots (2m+4)}c_{1}\\&=\frac{(-1)^{k}}{(2k+1)!}\frac{2^{k}m!}{(m-k)!}\frac{(2m+2k+2)!}{(2m+2)!}\frac{m+1!}{2^{k}(m+k+1)!}c_{1}\\&=\frac{(-1)^{k}m!(m+1)!(2m+2k+2)!}{(2k+1)!(2m+2)!(m-k)!(m+k+1)!}c_{1}\tag{23}\end{align*}
となって、展開係数\(c_{2k+1}\)の\(k\)が\(1\)以上のときの一般項が得られる。ただ、一般項(23)に\(k=0\)を代入しても成立するため、一般項(23)は常に成り立つ。一般項(23)を式(16)に代入して、ルジャンドル多項式が\(2m+1\)次であることを考慮すると
\begin{align*}P_{2m+1}(x)=\sum ^{m }_{k=0}\frac{(-1)^{k}m!(m+1)!(2m+2k+2)!}{(2k+1)!(2m+2)!(m-k)!(m+k+1)!}c_{1}x^{2k+1}\tag{24}\end{align*}
が得られる。
二式の統一
\(l\)が偶数のときの多項式(22)と\(l\)が奇数のときの多項式(24)を統一してみよう。
まず、偶数のときの多項式(22)を変形する。式(22)の和記号は\(k=0\)から\(k=m\)であり、\(2\)ずつ\(x\)の次数が上がる多項式だが、表記を分かりやすくするため\(2\)ずつ\(x\)の次数が下がる多項式にする。これは和記号は\(k=0\)から\(k=m\)のままで、和記号内の\(k\)を\(m-k\)に置き換えればいいので
\begin{align*}P_{2m}(x)&=\sum ^{m }_{k=0}\frac{(-1)^{k}(m!)^{2}(2m+2k)!}{(2k)!(2m)!(m-k)!(m+k)!}c_{0}x^{2k}\\&=\sum ^{m }_{k=0}\frac{(-1)^{m-k}(m!)^{2}(4m-2k)!}{(2m-2k)!(2m)!k!(2m-k)!}c_{0}x^{2m-2k}\tag{25}\end{align*}
と表せる。同様に、奇数のときの多項式(24)も\(2\)ずつ\(x\)の次数が下がる多項式にするために、和記号内の\(k\)を\(m-k\)に置き換えると
\begin{align*}P_{2m+1}(x)&=\sum ^{m }_{k=0}\frac{(-1)^{k}m!(m+1)!(2m+2k+2)!}{(2k+1)!(2m+2)!(m-k)!(m+k+1)!}c_{1}x^{2k+1}\\&=\sum ^{m }_{k=0}\frac{(-1)^{m-k}m!(m+1)!(4m-2k+2)!}{(2m-2k+1)!(2m+2)!k!(2m-k+1)!}c_{1}x^{2m-2k+1}\tag{23}\end{align*}
となる。式(25)と式(26)を見比べても全く統一できそうには見えないが、式(25)に\(2m=l\)、式(26)に\(2m+1=l\)を代入してみると
\begin{align*}P_{2m}(x)&=P_{l}(x)=\sum ^{\frac{l}{2}}_{k=0}\frac{(-1)^{\frac{l}{2}-k}\left(\frac{l}{2}!\right)^{2}(2l-2k)!}{(l-2k)!l!k!(l-k)!}c_{0}x^{l-2k}\tag{27}\\P_{2m+1}(x)&=P_{l}(x)=\sum ^{\frac{l-1}{2} }_{k=0}\frac{(-1)^{\frac{l-1}{2}-k}\left(\frac{l-1}{2}\right)!(\frac{l-1}{2}+1)!(2l-2k)!}{(l-2k)!(l+1)!k!(l-k)!}c_{1}x^{l-2k}\tag{28}\end{align*}
となって、一気にすごく近い式となる。二式の共有箇所をまとめてみると
\begin{align*}P_{2m}(x)=P_{l}(x)&=\sum ^{\frac{l}{2} }_{k=0}\frac{(-1)^{k}(2l-2k)!}{2^{l}k!(l-k)!(l-2k)!}\frac{(-1)^{\frac{l}{2}-2k}2^{l}\left(\frac{l}{2}!\right)^{2}}{l!}c_{0}x^{l-2k}\\&=\sum ^{\frac{l}{2}}_{k=0}\frac{(-1)^{k}(2l-2k)!}{2^{l}k!(n-k)!(l-2k)!}\frac{(-1)^{\frac{l}{2}}2^{l}\left(\frac{l}{2}!\right)^{2}}{l!}c_{0}x^{l-2k}\tag{29}\\P_{2m+1}(x)=P_{l}(x)&=\sum ^{\frac{l-1}{2}}_{k=0}\frac{(-1)^{k}(2l-2k)!}{2^{l}k!(l-k)!(l-2k)!}\frac{(-1)^{\frac{l-1}{2}-2k}2^{l}\left(\frac{l-1}{2}\right)!\left(\frac{l-1}{2}+1\right)!}{(l+1)!}c_{1}x^{l-2k}\\&=\sum ^{\frac{l-1}{2}}_{k=0}\frac{(-1)^{k}(2l-2k)!}{2^{l}k!(l-k)!(l-2k)!}\frac{(-1)^{\frac{l-1}{2}}2^{l}\left(\frac{l-1}{2}\right)!\left(\frac{l-1}{2}+1\right)!}{(l+1)!}c_{1}x^{l-2k}\tag{30}\end{align*}
となる。分子分母に急に出てきた\(2^{l}\)は後ほどのページで母関数表示やロドリゲスの公式がシンプルになるように組み込んだ。そして、共通でない箇所を消すために次のように最低次数項\(c_{0}\),\(c_{1}\)
\begin{align*}c_{0}=\frac{l!}{(-1)^{\frac{l}{2}}2^{l}\left(\frac{l}{2}!\right)^{2}}\tag{31}\\c_{1}=\frac{(l+1)!}{(-1)^{\frac{l-1}{2}}2^{l}\left(\frac{l-1}{2}\right)!\left(\frac{l-1}{2}+1\right)!}\tag{32}\end{align*}
を決めると、式(29)と式(30)は
\begin{align*}P_{2m}(x)=P_{l}(x)=\sum ^{\frac{l}{2}}_{k=0}\frac{(-1)^{k}(2l-2k)!}{2^{l}k!(l-k)!(l-2k)!}x^{l-2k}\tag{33}\\P_{2m+1}(x)=P_{l}(x)=\sum ^{\frac{l-1}{2}}_{k=0}\frac{(-1)^{k}(2l-2k)!}{2^{l}k!(l-k)!(l-2k)!}x^{l-2k}\tag{34}\end{align*}
となって、統一できる!最後の仕上げとしてガウス記号\([]\)(\([a]\)は\(a\)の小数部を切り捨てた整数を表す)を用いた関係\([\frac{l}{2}]=[\frac{l-1}{2}]\)を使い、偶数項の式(33)と奇数項の式(34)を統一すると
\begin{align*}P_{l}(x)=\sum ^{[\frac{l}{2}]}_{k=0}\frac{(-1)^{k}(2l-2k)!}{2^{l}k!(l-k)!(l-2k)!}x^{l-2k}\tag{2}\end{align*}
ときれいにまとまる。
余談だが、式(25)と式(26)で\(2\)ずつ\(x\)の次数が下がる多項式にしたのは、ガウス記号が\(x\)の次数に含まれて煩雑になることを防ぐためであった。
\(l\)が\(0\)以上の整数でないとき
\(l\)が負の整数のときは、\(0\)以上の整数\(-l-1\)のときと同じ式となる。
\(l\)が整数でないとき、最低次数項\(c_{0}\)と\(c_{1}\)がゼロでない限り漸化式(15)はゼロにならず、無限級数となる。先程も述べたが、無限級数は物理的に意味のある解とはならない。最低次数項\(c_{0}\)と\(c_{1}\)がゼロのときは\(P_l(x)=0\)となり、こちらも物理的に意味のある解とはならない。
ルジャンドル多項式の具体例
求めたルジャンドル多項式(2)から具体的な形を求めると次のようになる。
\begin{align*}P_{l}(x)&=\sum ^{[\frac{l}{2}]}_{k=0}\frac{(-1)^{k}(2l-2k)!}{2^{l}k!(l-k)!(l-2k)!}x^{l-2k}\tag{2}\\P_{0}(x)&=\sum ^{[\frac{0}{2}]}_{k=0}\frac{(-1)^{k}(2\cdot 0-2k)!}{2^{0}k!(0-k)!(0-2k)!}x^{0-2k}=1\\P_{1}(x)&=\sum ^{[\frac{1}{2}]}_{k=0}\frac{(-1)^{k}(2\cdot 1-2k)!}{2^{1}k!(1-k)!(1-2k)!}x^{1-2k}=x\\P_{2}(x)&=\sum ^{[\frac{2}{2}]}_{k=0}\frac{(-1)^{k}(2\cdot 2-2k)!}{2^{2}k!(2-k)!(2-2k)!}x^{2-2k}=\frac{1}{2}(3x^{2}-1)\\P_{3}(x)&=\sum ^{[\frac{3}{2}]}_{k=0}\frac{(-1)^{k}(2\cdot 3-2k)!}{2^{3}k!(3-k)!(3-2k)!}x^{3-2k}=\frac{1}{2}(5x^{3}-3x)\\P_{4}(x)&=\sum ^{[\frac{4}{2}]}_{k=0}\frac{(-1)^{k}(2\cdot 4-2k)!}{2^{4}k!(4-k)!(4-2k)!}x^{4-2k}=\frac{1}{8}(35x^{4}-30x^{2}+3)\end{align*}
次ページから…
ルジャンドルの陪微分方程式がすぐにでも気になる人はそちらのページに行っても良いが、実はもう一つ準備しといたほうが後々ラクになることがある。それはルジャンドル多項式を母関数で表す方法であり、ルジャンドルの陪微分方程式の解であるルジャンドルの陪多項式の直交性を調べるときに必要になる。そこで、次ページではルジャンドル多項式の母関数表示と、ルジャンドル多項式を生成するロドリゲスの公式を求める。
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