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世界線

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本ページでは…

 本ページでは、世界線を導く相対論的な作用\(S\)が

\begin{align*}S=-mc\int ds\end{align*}

となって、静止エネルギー\(mc^2\)に固有時\(\frac{\int ds}{c}\)を掛けて負号をつけた形、あるいは世界距離\(\int ds\)に\(mc\)を掛けて負号をつけた形になることを確認する。

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内容

 \(0\)次元である点粒子が時空上を動く時、粒子が辿った軌跡は世界線と呼ばれる1次元の線となる。世界線も作用\(S\)

\begin{align}S=\int\text{d}t\ L\tag{1}\end{align}

から導かれるが、世界線が相対論を満たすためには、作用\(S\)がローレンツ不変性を持たなければならない。

 非相対論的な自由粒子の運動方程式を導くラグランジアン\(L\)は

\begin{align}L= \frac{1}{2}m\boldsymbol v^2\tag{2}\end{align}

であるため、作用\(S\)は

\begin{align}S=\int\text{d}t\ \frac{1}{2}m\boldsymbol v^2\tag{3}\end{align}

となるが、この形ではローレンツ変換時に作用\(S\)が変わってしまう。そのため、非相対論的なラグランジアン\(L\)の式(2)を少し変形させて、相対論的なラグランジアン\(L\)と作用\(S\)を導く。ラグランジアン\(L\)に定数項を足しても導かれる運動方程式は変わらないため、\(-mc^2\)をラグランジアン\(L\)に足して変形すると

\begin{align}L&= -mc^2+\frac{1}{2}m\boldsymbol v^2\\&=-mc^2\left(1-\frac{1}{2}\frac{\boldsymbol v^2}{c^2}\right)\\&\simeq-mc^2\sqrt{1-\frac{\boldsymbol v^2}{c^2}}\tag{4}\end{align}

となって、相対論的ラグランジアン\(L\)が得られる。ここで、\(v\ll c\)なので3行目のように平方根に変形でき、\(v\ll c\)の条件で非相対論的なラグランジアン\(L\)に帰結する。このラグランジアン\(L\)は静止エネルギー\(mc^2\)に相対論因子\(\sqrt{1-\frac{\boldsymbol v^2}{c^2}}\)を掛けて負号をつけた形となっている。そして、相対論的な作用は

\begin{align}S=-mc^2\int\text{d}x^0\ \sqrt{1-\frac{\boldsymbol v^2}{c^2}}\tag{5}\end{align}

と求まる(\(x^0=t\)である)。ついでに、相対論的な運動量\(\boldsymbol p\)を求めると

\begin{align*}\boldsymbol p&=\frac{\partial L}{\partial \boldsymbol v}\\&=-mc^2\left(-\frac{\boldsymbol v}{c^2}\right)\frac{1}{\sqrt{1-\frac{\boldsymbol v^2}{c^2}}}\\&=\frac{m\boldsymbol v}{\sqrt{1-\frac{\boldsymbol v^2}{c^2}}}\tag{6}\end{align*}

となり、ハミルトニアン\(H\)は

\begin{align*}H&=\boldsymbol p\cdot\boldsymbol v-L\\&=\frac{m\boldsymbol v^2}{\sqrt{1-\frac{\boldsymbol v^2}{c^2}}}+mc^2\sqrt{1-\frac{\boldsymbol v^2}{c^2}}\\&=\frac{mc^2}{\sqrt{1-\frac{\boldsymbol v^2}{c^2}}}\tag{7}\end{align*}

と求まる。ハミルトニアン\(H\)はエネルギー\(E\)に等しく、運動量\(\boldsymbol p\)と共に相対論的エネルギーの関係式

\begin{align*}E^2=m^2c^4+\boldsymbol p^2c^2\tag{8}\end{align*}

をもちろん満たす。

 式(5)の作用\(S\)はローレンツ変換において不変だが、一目で分かりにくい。そこで、ローレンツ不変な世界距離(世界間隔)\(ds\)を用いて作用\(S\)を表してみる。世界距離\(ds\)を求めると

\begin{align*}(ds)^2&=(cdx^0)^2-(dx^1)^2-(dx^2)^2-(dx^3)^2\\&=(cdx^0)^2\left(1-\frac{\boldsymbol v^2}{c^2}\right)\\\rightarrow ds&=cdx^0\sqrt{1-\frac{\boldsymbol v^2}{c^2}}\tag{9}\end{align*}

となり、作用\(S\)は

\begin{align*}S=-mc\int ds\tag{10}\end{align*}

と静止エネルギー\(mc^2\)に固有時\(\frac{\int ds}{c}\)を掛けて負号をつけた形、あるいは世界距離\(\int ds\)に\(mc\)を掛けて負号をつけた形になる。世界距離\(ds\)、質量\(m\)、光速\(c\)全てローレンツ不変であるため、式(10)は一目でローレンツ不変であることが分かる。

最後に補足だが、今回、粒子は光速\(c\)を超えて運動できないため、世界線上の世界距離の二乗\((ds)^2\)は常に正であり、世界距離\(ds\)は実数である。もし世界距離の二乗\((ds)^2\)の定義が式(9)ではなく、符号が逆の

\begin{align*}-(ds)^2&=(cdx^0)^2-(dx^1)^2-(dx^2)^2-(dx^3)^2\tag{11}\end{align*}

だった場合は、世界距離\(ds\)は虚数となる。しかし、どちらもローレンツ不変性は保たれ、導かれる式は同じであるため、どちらの定義を選ぶかは好みの問題である。


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