Dブレーン

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本ページでは…

 本ページでは、開弦が描く世界面の境界条件としてディリクレ境界条件とノイマン境界条件があることを見る。また、ディリクレ境界条件によって端点を固定する物体として、Dブレーンが考えられることを見る。

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前ページまで⋯

 前ページでは、世界面を描く弦の相対論的作用である南部-後藤作用\(S\)

\begin{align}S&=-\frac{T_{\scriptsize 0}}{c}\int d\tau d\sigma\sqrt{(\dot{ X}\cdot X’)^2-(\dot{ X})^2( X’)^2}\tag{1}\end{align}

から、相対論的な運動方程式

\begin{align*}\frac{\partial \mathcal P^\tau_\mu}{\partial \tau}+\frac{\partial \mathcal P^\sigma_\mu}{\partial \sigma}=0\tag{2}\end{align*}

と境界条件

\begin{align*}\int d\sigma\big[\delta X^\mu \mathcal P^\tau_\mu\big]^{\tau_f}_{\tau_i}&=0\tag{3}\\\int d\tau\big[\delta X^\mu \mathcal P^\sigma_\mu\big]^{\sigma_f}_{\sigma_i}&=0\tag{4}\end{align*}

を導いた。

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内容

 初めに、時空に存在している世界面の形を考えてみる。開弦が描く世界面は布状の平面であり、空間方向の平面端は端点の軌跡、時間方向の平面端は始状態と終状態の弦となる。一方、閉弦が描く世界面は管状の平面であり、空間方向に平面端は無く、時間方向の平面端は始状態と終状態の弦となる。

世界面に対するパラメーターの付け方は自由であり、時間方向と空間方向を交えたパラメーターの付け方もある。しかし、話をシンプルにするため、時間方向にパラメーター\(\tau\)を付け、空間方向にパラメーター\(\sigma\)を付けるとする。

 上記のパラメーターの付け方で境界条件(3)を考えると、始状態と終状態の弦は固定されているため

\begin{align*}\delta X^\mu(\tau_f,\sigma)=\delta X^\mu(\tau_i,\sigma)=0\tag{5}\end{align*}

となり、境界条件(3)は常に満たされることが分かる。

 次に、境界条件(4)について考える。閉弦に関しては、\(\sigma_f=\sigma_i\)であり境界がないため、境界条件(4)は常に満たされる。一方、開弦に関しては境界条件を課さなければならない。境界条件(4)を詳細に書くと

\begin{align*}\int d\tau\big(&\delta X^0(\tau,\sigma_f) \mathcal P^\sigma_0(\tau,\sigma_f)-\delta X^0(\tau,\sigma_i) \mathcal P^\sigma_0(\tau,\sigma_i)\\+&\delta X^1(\tau,\sigma_f) \mathcal P^\sigma_1(\tau,\sigma_f)-\delta X^1(\tau,\sigma_i) \mathcal P^\sigma_1(\tau,\sigma_i)\\+&\cdots\\+&\delta X^d(\tau,\sigma_f) \mathcal P^\sigma_d(\tau,\sigma_f)-\delta X^d(\tau,\sigma_i) \mathcal P^\sigma_d(\tau,\sigma_i)\end{align*}

となり、\(D\)次元の時空(時間が\(1\)次元で、空間が\(d\)次元)では、\(2D=2(d+1)\)個の境界条件が存在する。境界条件としては、端点\(\sigma_f\)では

\begin{align*}\delta X^\mu(\tau,\sigma_f) =0\end{align*}

または

\begin{align*}\mathcal P^\sigma_\mu(\tau,\sigma_f)=0\end{align*}

が考えられ、端点\(\sigma_i\)においても

\begin{align*}\delta X^\mu(\tau,\sigma_i) =0\end{align*}

または

\begin{align*}\mathcal P^\sigma_\mu(\tau,\sigma_i)=0\end{align*}

が考えられる。それぞれ前者の条件は弦の端点が常に固定されている状態に相当し、次のディリクレ境界条件

\begin{align*}\frac{\partial }{\partial \tau}X^\mu(\tau,\sigma_f)=0\ \ \ \mu\neq 0\end{align*}

または

\begin{align*}\frac{\partial }{\partial \tau}X^\mu(\tau,\sigma_i)=0\ \ \ \mu\neq 0\end{align*}

から導かれる。この条件は端点の座標\(X^\mu(\tau,\sigma_i)\)または\(X^\mu(\tau,\sigma_f)\)が定数であることと等価である。ディリクレ境界条件は空間方向だけにしか課せず、\(\mu=0\)だけ省いている。

一方、それぞれ後者の条件はノイマン境界条件

\begin{align*}\frac{\partial }{\partial \tau}X^\mu(\tau_f,\sigma)=0\end{align*}

または

\begin{align*}\frac{\partial }{\partial \tau}X^\mu(\tau_i,\sigma)=0\end{align*}

から導かれ(後のページで確認する)、端点の変分\(\delta X^\mu(\tau,\sigma_f)\)または\(\delta X^\mu(\tau,\sigma_i)\)に制限が課されていないため、自由な端点となっている状態に相当する。

各々の空間次元\(\mu\neq 0\)においてそれぞれの端点にはディリクレ境界条件またはノイマン境界条件のどちらかを課すことができるが、時間次元\(\mu=0\)の端点にはディリクレ境界条件は課せられないため、必然的にノイマン境界条件が課せられる。

 ここで、\(3\)次元空間における端点\(\sigma_i\)について考える(端点\(\sigma_f\)でもよい)。もし、空間\(x^1\)方向のみにディリクレ境界条件(\(X^1=\)定数)が課せられていると、端点\(\sigma_i\)はノイマン境界条件が課せられている空間\(x^2\)方向と\(x^3\)方向のみに動くことができる。この状態は、空間\(x^2\)方向と\(x^3\)方向に広がる物体に端点が繋がっていると捉えられる。このように、ディリクレ境界条件において、端点を固定している物体をDブレーンと呼ぶ。Dはディリクレ(Dirichlet)の頭文字である。

この例ではDブレーンは2次元であったが、様々な次元を取りうる。例えば、空間\(x^1\)方向と\(x^2\)方向にディリクレ境界条件(\(X^1=\)定数、\(X^2=\)定数)が課せられていると、端点\(\sigma_i\)はノイマン境界条件が課せられている空間\(x^3\)方向のみに動くことができ、Dブレーンは1次元である。また、空間\(x^1\)方向と\(x^2\)方向、そして\(x^3\)の方向にディリクレ境界条件(\(X^1=\)定数、\(X^2=\)定数、\(X^3=\)定数)が課せられていると、端点\(\sigma_i\)は動くことができず、Dブレーンは\(0\)次元である。そして、ディリクレ境界条件が全く課されていないとき、端点は固定されていないが、端点は3次元空間を自由に動くことができ、\(3\)次元のDブレーンに固定されていると捉えることもできる。


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